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2023年(あるいは、死後の世界に光る稲妻)

【一月】
神聖かまってちゃんのNGフェスを配信で聴いて、楽曲をひとつひとつメモしていく。短歌研究からの以来に作った短歌のひとつは、このときの経験をモチーフにしている。

・レシートの裏にセトリや猫の手や聖書を書いて 本気だからね

一月に読んだ北山あさひ『崖にて』に「カタカナで採血管に名前を書くみんなミッシェル・ガン・エレファント」という歌があった。このときはまだチバユウスケが死ぬなんて思ってもいなかった。坂本龍一が死んで、高橋幸宏が死んで、チバユウスケが死んで、andymoriがInstagramのアカウントを作って、山田亮一が活動を再開して。本当にたくさんのことがある。日記によると一月五日にはもう憂鬱が来ていたらしい。早いね。国立映画アーカイブ「恐怖映画ポスター展」を見に行った。二ヶ月に一度京都に行っているのだけど、もう夜行バスに乗る体力が残っていないらしい。三十過ぎると、途端に体力が落ちる、というのは本当みたいだ。京都タワーの地下の銭湯や「雫」が閉まってから京都に朝着いたときのお風呂に困っていたのだけど、「梅湯」が選択に加わった。「BBCの選ぶ21世紀の偉大な映画100」を見ていく、という目標を立てて早速『マルホランド・ドライブ』を見た。僕がぼくになったのは、笹井宏之の影響がかなり大きい。『日本文学盛衰史』を見に吉祥寺シアターへ行った。団結の言葉を奪う政府、という構図がどんどん現実のものになっている。短歌の友達と火鍋をつついたのも一月。もう一年経っている、というのは陰謀ですか?VTuberをしっかり見るようになったのも今年からで、甲賀流忍者ぽんぽこピーナッツくんを一年かけてずっと見ていた。百均や町中華を紹介している庶民感がとてもいい。

○良かった本
荒木あかね『此の世の果ての殺人』
村上春樹『国境の南、太陽の西』
三島由紀夫『金閣寺』

【二月】
こんなもの食べたくないのに食べている。こんなもの読みたくないのに読んでいる。そういう鬱が一月から続いていた。黒い塊にのしかかられていて可哀想だ。MONO NO AWARE挫・人間ドレスコーズをよく聴いていた。『ハイパーインフレーション』も読んだ。今年は漫画は、紙で買うのではなくウェブで読むかネカフェで読むかがほとんどだった。嵩張る、というのが一番の理由だ。本が多すぎる、と家に帰るたびに思う。本当は一冊一冊、読み終えるたびに焚き火にするのがいいのだろう。そうすれば、もっと一冊の隅々までを検討するだろうから。塚本邦雄の歌集もこの辺りから読み始めた。序数歌集二十四冊、その他の歌集がいくつか。だいたい一万首強。長い長い旅路だった。エゴン・シーレ展を見に上野の東京都美術館へ行く。ゴルゴダの丘の絵が好きだった。自らを抱きしめる、壊れて折れてしまいそうな自意識の形象である肉体。二月十日には雪が降った。きっと雪国の出身だから、雪が降ると無条件に嬉しくなる。新大久保にもはじめて行った。『イニシェリン島の精霊』は今年観た映画のなかでもっともよかったもののひとつ。ごめんな友よ、俺はもう行くよ。新宿の「たかはし」というあご出汁ラーメンがおいしかった。去年から参加している『まいだーん』の同人である上澄眠さんの短歌がとてもいい。「プリンでもたべるしかない体内がさびしいさびしいばかりになって」。PK shampooを聴きながらジムで運動をした。たぶん二月は音楽をたくさん聴いた。山田航さん『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』の書評を書いた。ぼくは山田さんがとても好きなので、文字数的に不完全燃焼だったこの書評はもう一度しっかり書きたい。「ぼくら」への注目はセカイ系やネオテニーな文化論とも接続できるはずだ。マロッシュというグミがおいしいのにも気づいた。ちょっと先取りになるのだけど、最近の永井均に関する論争はカミュ=サルトル論争を思い出す。「猥雑だけが愛の証拠と言うことになってしまう」と言い放ったカミュの態度をぼくは支持してしまう。少なくともカミュとサルトルのそれにおいては。

○良かった本
エドモン・ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』
国木田独歩『武蔵野』
ミラン・クンデラ『邂逅』『小説の技法』
安堂ホセ『ジャクソンひとり』

【三月】
春先になると毎年体調が悪くなっている。花粉症もあるのだけど、やっぱり急に気温が高くなるのを、強制で行事に参加させられる学校のメタファーとして捉えてしまうからだろう。精神も悪すぎて日記の数が少ない。ゴールデン街からの帰りに、酩酊した視界の中でニーチェ『偶像の黄昏』を読んだら、驚くほど抵抗なく頭に入ってきた。酩酊して読むべき本、というのもある。鍵を職場に忘れてネットカフェに泊まったのだけど、そこで読んだ藤本タツキ『ファイアパンチ』がすごくよかった。セカイ系の、というのか旧劇エヴァを見たときの衝撃に近いものを体験する。最後に遠いところへ行ってしまう作品が好きなのだ、と改めて思わされる。吉田隼人『霊体の蝶』の読書会をした。ぼくは短歌の友達がかなり少ないので、新しく人と話せる機会があるのはとてもうれしい。身体に宿る自我の消失への希求。「天使の知性とひとの知性は明確に区別されつつ萱草にほふ」。リルケは天使に、内部から外部へ向かう純粋なエネルギーを見出した。コード進行のことを真面目に勉強し始めたのも三月だった。4561進行だ、とかぶつぶつ言いながらいろいろな曲を弾き語っていた。感情が数学に還元できる、ということに畏怖を覚える。下旬はまったく日記を書けていなかったので、そうとう精神がよくなかったのだと思う。

○良かった本
ニーチェ『偶像の黄昏』
ボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』

【四月】
sympathyを聴きつつ、日記を書いている。古くからの知己のツイートがバズっていて、それがsympathyについてのものだったからびっくりした。そのツイート自体はもっと後だけれど。下北沢のライブハウスで聴いた「ドロップキック・ミッドタウン」が、ライブに行くことの熱を思い出させてくれた。コロナ禍に入ってから、ライブは拍手だけになった。声はマスクによってせきとめられて、化石になった。この日のコールアンドレスポンスに、その現象がまた光の中にやってきたことに泣きそうになる。「山ねこ」という芋焼酎がおいしい。『ベイビーわるきゅーれ2』は1より日常系っぽさは薄まっていたけれど、相変わらず好きな空気感だ。ちょっと遠くまで散歩したら小川があって、白旗桜が散っていくのを小一時間眺めた。調子がよくなったと思ったのに、睡眠導入剤でへろへろになっている。助けて、助けてばかり書いている。何時になったら助かるのだろうか。白い黴が生えているみたいだ。相米慎二『ションベン・ライダー』をU-NEXTで見る。挑戦的な題だけど、和製『スタンド・バイ・ミー』だ。今では考えられないようなスタントマンなしのアクションも迫力がある。

○良かった本
川上未映子『黄色い家』
ジッド『地の糧』
イバン・レピラ『深い穴に落ちてしまった』

【五月】
小田原観光PR動画に、短歌を五首寄稿した。この取材で小田原に行ってから、小田原のことが好きになった。小田原は個人的な事情から、怖さの根源みたいな町だった。歌集でも新宿のことしか書いていない。だから、よかった。

・音楽に付箋はないさコーダから先は無限の余白 いこうよ

日比谷公園ネモフィラを見に行った。ネモフィラは、ぼくにとっては天使みたいなもので、あるいはアイドルみたいなもので、架空の青い花だった。見に行けてよかった。こんなものか、と思えたから。職場の近くでいきものがかりがライブをしていて、これまで見たことないくらいに混雑していた。中学生のときのことを思い出す。いきものがかりはガラケーの記憶に結びついている。町田の図書館で今日マチ子展をしていた。身近でこのような展示をしていてくれると助かる。入場が無料だった。ちょっとサービスがよすぎる。公園で飲んでいたら友達がたまたまいて、飲んだら酩酊した。添い遂げるなら一緒に死んでくれる人か、死にたい、と言うと笑い飛ばしてくれる人か。Switchをもっているのだけど、ほとんど『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』の専用機になっている。前作も相当はまったけれど、今回も同じことになりそうだ。京橋の画廊に中村宏の絵を見に行った。なかなか小さなギャラリーに入るのは足が竦むけれど、飛び込んでみるととてもいい時間が過ごせる。新橋の「送水口博物館」もよかった。トマソン的な、これまで気にしたことのなかったものが途端に視界に入ってくる。『胎動短歌』に短歌を寄稿するようになったのも今年からだ。GOMESSのライブでたまたまikomaさんに出会って、あの時声をかけていて本当によかった。歯医者にも久しぶりに行った。銀歯がひとつ増えました。文学フリマで水野しずさんやマンスーンさんの出展物を買う。マンスーンさんが『エモーショナルきりん大全』を知ってくれていてびっくりした。コンポが家に増えた。Bluetoothばかりになってから気にしていなかったのだけど、やっぱりCDは音がいい。レコードなら尚更なのだと思う。町田の「鴨to葱」というラーメン屋がおいしくて、今年だけで四回くらい行っているかもしれない。鴨に独特の旨味はなんなんだろう。そういえば発砲事件があった。塚本邦雄全集を読んでいたベンチの近くだ。物騒すぎる。toron*さんとのトークイベントのために、京都の緑の館へ行く。藤原龍一郎さんの講演もよかったし、とにかく人が多くて緊張した。前日の飲み会のまま、ネットカフェで過ごしたので髪の毛もぼさぼさのまま壇上に立った。何をやっているんですか。そのまま京都シネマで見た『EO』もいい映画だった。馬と比較されてしまうロバの目に宿る感情。泥書房も、ぼくが京都にあるうちに出入りできれば、と惜しく思う。蔵書が魅力的だ。平和園にもはじめていった。名古屋に泊まって一人で白川公園に行き、プラネタリウムを見た。星が好きだ。親に家に入れてもらえずに見た冬の、ペガサス座の平行四辺形が今でも脳に張り付いている。有給だったので、ゆっくりと旅行ができた。長野では平出遺跡を訪れた。土器などにはあまり興味がないのだけど、「緑釉」という言葉を知れたのがよかった。

○良かった本
大江健三郎『性的人間』
『塚本邦雄全集』
川端康成『乙女の港』

【六月】
雀魂をインストールしてから、麻雀ばかりやっている。大学生のときにやってはいたのだけど断幺九と七対子以外は何もわからないまま打っていたので、役やルールを覚えてから楽しくて仕方がない。いつかは雀荘にも行きたいのだけど一人では行けないし、行く友人がいない。物凄い雨があって、くるぶしまで水に浸かることがあった。Sundea may clubをよく聴いた。暑くなってくると、涼やかなバンドを聴きたくなってくる。そういうわけでヨルシカも聴いていた。梅崎春生「蜆」はたいへんよい短篇だった。一時期アンソロジーにはまっていろいろと買ったのだけど、ようやく読み始めた岩波文庫の近代小説短篇選の中のひとつだ。鎌倉に行ったときに立ち寄った食事処「しゃもじ」の海鮮丼がおいしかった。卓上に青唐辛子の醤油があり、これを持ち帰りたいくらいだった。でかい江ノ島電鉄マグネットを買って冷蔵庫に貼っている。ART-SCHOOL『luminous』を手に入れてからはそればかり聴いている。「Bug」。新代田のライブハウスで行われたライブでは耳が破壊された。久しぶりに聴く「FADE TO BLACK」「シャーロット」「スカーレット」。生きてきて本当によかったと思えた。直前に食べたグリーンカレーラーメンの「バサノヴァ」もおいしかった。青山霊園で飲み会をする前に観た『aftersun/アフターサン』もひどくよかった。ぼくは取り返しのつかない何ものかを描いた作品が好きだ。「モンスナック」のカレーが具が大きくておいしかった。最近職場の人が釣りにはまっているようで、イサキやタイなどいろいろな魚をくれるのでうれしい。買ってから一度も使ったことのなかったグリルを使った。太ったおばさんの『出会って4光年で合体』はなかなか凄まじい漫画だった。コマにおける情報の詰め方。その間隙に、計り知れない叙情が流れ込む。インターネットのノイズに嫌気が差してきていたので、限りなく不必要な情報を目にしないための方策として新聞をとり始めた。

○良かった本
野間宏『顔の中の赤い月』
『ベルクソン思想の現在』
コンラッド『闇の奥』
『大江健三郎自選短篇』

【七月】
村上春樹の新刊をついに読み通せなかった。面白い、面白いのだけど、どうしてもジュブナイル小説である、というか、もうぼくはこの小説の対象ではない、と思ってしまった。また別のときに読めば違う感想を抱くかもしれないのだけど。また精神が悪くなっている。そういうバイオリズムらしい。『玲瓏』に塚本邦雄の短歌、特に第二歌集と第三歌集に顕著な水道についての短歌の評論を書く必要があるのでその資料集めに奔走していた。何人かはこの特徴に触れている。LIQUIDROOMでCRYAMYtacicaの対バンがあった。tacicaは大学生のころよく聴いていた。まさかこの二つのバンドが対バンをするとは。「人鳥哀歌」を今聴くことになるとは。ライブといえば「ツレ伝フェス」も凄まじかった。詳細はレポートに書いたのだけど、あらゆる過去の答え合わせみたいな一日だった。みなみ会館が閉館するというニュースを見る。書店も映画館も閉まっていく。文化が死んでいく。ポケモンスリープをはじめたのだけど、最近はやっていない。健康管理をしていきたいのは本心だ。七月は体調を崩し気味であった。

○良かった本
カプシチンスキ『黒檀』
國分功一郎『目的への抵抗』
市川沙央『ハンチバック』
乗代雄介『それは誠』

【八月】
梨本ういの楽曲がサブスクに来た。この便利なサービスに潜む、というより潜んですらいない危険を遠ざけることはもう無理かもしれない。下北沢のfuzukueにはじめていったのだけど、その日の気温は35℃あった。尋常じゃない暑さだ。スポーツドリンクや水が、毎秒毎秒消費されていく。最近は夏が暑すぎて洒落になっていない。買った野菜もすぐ腐る。いい加減にしてください。ついに白い日傘を購入してしまった。だいぶ暑さが違う。友人の展示を見に行った。やっていけるよ、ぼくたち、みたいなことを話しながらお酒を飲んだ。あまりに暑すぎて夏のコスプレのためにラムネを買ったりした。汗に濡れながら東京都美術館のマティス展に行った。顔のない芸術家の絵の前でしばらく呆然とする。文庫用の可愛いトートバッグを買えた。その足で神保町の「ボンディ」を食べる。美味しい美味しいとは聞いていたけれど、すごかった。『戦後短篇小説再発見』が投げ売りされていたのを見つけて、鞄を重くした。ジャック・ロジェの特集をしていたから渋谷に行った。古い映画の特集はうれしいので常に開かれていてほしい。六本木のサントリーホールで行われていたガムラン音楽の祭に行った。純粋な演奏会ではなかったのでちょっと肩透かしではあったのだけど、はじめてガムラン楽器の演奏を聴けたのは貴重な体験だった。そのように過ごしているうちに、莫大な死にたさが訪れてしまい日記を停止した。理由は明確なのだけど、それは書かないことにしておく。人間関係とかではなくて、実存的なものだ。

○良かった本
『井坂洋子詩集』
藤井大洋『ハロー・ワールド』
柳美里『JR上野駅公園口』
『鮎川信夫詩集』
児玉雨子『##NAME##』

【九月】
日記を非公開のものに移行した。一日辺りの文字数も固定するようにしたので、統制がとれる。ある程度まとまったら日記本として印刷しようかな、と考えている。エッセイや書評とかではなくただの日記なのであまり面白くはないと思う。U-NEXTで『ぼくのエリ』を見た。配信で見たものの中では、一番よかった。雪と血。東浩紀のシンポジウムのために『存在論的、郵便的』を読む。他の著作に比べるととても難解で、かつてないくらいにメモをしながら読んだ。友達が言っていたけれど、かなり工学的に作られた文章だから、その建築のつなぎ目を丁寧に読み取っていくことで論理が見えやすくなってくる。下北沢の「三日月ロック」ばかりに行っている。お通しでサラダバーが食べ放題というのがすこぶるよくて、一生野菜を食べている。下北沢といえば「お笑い短歌リーグ」も見に行った。AIとのバトルがシリアスでよかった。粘菌歌会の収録を、五年ぶりに対面でした。前に会ったときもサイゼリヤだったはずだ。聖地サイゼリヤ。アゼルバイジャンとアルメニアの戦争が始まる。この時間が戦争と戦争の間でしかない、という事実に暗澹となる。無料で公開されていた『pppppp』は続きがないのが信じられない。メロリとミーミンの関係性があまりに……。イオンモールで再上映されている『PERFECT BLUE』を見に行く。絶対好きな映画だろうな、と思っていたのにどこでも見られなかったのでよかった。そういえばスイカゲームの偽物みたいなゲームにもはまっていた。精神が終わっていると、こういう単純なゲームに時間をとられてしまう。

○良かった本
東浩紀『存在論的、郵便的』
コンラッド『ロード・ジム』
安部公房『カンガルー・ノート』
夏目漱石『硝子戸の中』『野分』
今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』

【十月】
よく澄んで何もかもを失う十月。神のいない一ヶ月。CRYAMYのシャツを着て下北沢を歩いていたら「いいシャツですね」と声をかけられて下北沢を感じた。まいばすけっとでそんなことあるんだ。『葬送のフリーレン』『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメを見ている。睡眠導入剤がなくなって、夜が手持ち無沙汰になってしまったからだ。はじめてサウンドトラックを聴いたときはそこまでピンと来ていなかったのだけど、アニメを見てから聴くと結束バンドのよさがわかってくる。イスラエルでも戦争がはじまる。木下理樹の生誕祭があったのも十月。syrup16g。tacicaだけでなく、大学時代にイヤホンで自閉しながら聴いていたアーティストが実際に目の前に現れると、その実在を飲み込めなくて靄がかかる。「ニーナの為に」をライブで聴けた。こんな光みたいなことがあっていいのか。Hue'sもたくさん聴いた。東海オンエアとかBADHOPとか山崎まさよしとかが毎日揉めていて、Twitterを見るのが相変わらず疲れる。初めて脱出ゲームに挑戦したのだけど、全く歯がたたなかった。これは頭を使うというより、コミュニケーションのゲームだと思う。小田原の「まねき屋」に行ったのもいい経験だった。おつまみのひとつひとつの味が濃くて、お酒が進む。月ノ美兎の『ウーマンコミュニケーション』の実況もよかった。シャニマスの映画を見に調布に行った。図書館にも立ち寄ったのだけど広くて充実している。雨宮雅子の文章を書くために、いろいろな本を借りる。

○良かった本
ハンス・ブルーメンベルク『真理のメタファーとしての光・コペルニクス的転回と宇宙における人間の位置づけ』
『雨宮雅子歌集』
日比野コレコ『ビューティフルからビューティフルへ』

【十一月】
十一月にしては暑い。暖冬なのはいいけれど、ちゃんと来年は反動で涼しくなってくれよ、と思う。Web漫画の『アイドルマスターシャイニーカラーズ事務的光空記録』はとても出来がよくて、シャニマスの繊細な行間のことを思い出す。最近のシャニマスは、なんというか大雑把になっていて遠ざかっていたのだけど、こういうコンテンツが出てくるのはうれしい。知性には切る知性と叩き潰す知性、それから迷わす知性がある。古井由吉は三番目だと思ったけれど石牟礼道子もそうだ。ぼくはここに入ってくる作品群が好きだ。松屋のマッサマンカレーにはまってしまい、短期間で二回食べた。カレーとラーメンばかり食べている気がする。十一月の文フリは『胎動短歌』の手伝いとしてずっとブースに立っていた。接客していたら尾崎世界観が目の前を通っていって仰天した。どうなっているんだ。『おやすみ短歌』も手に入れることができた。一週間くらい喉が痛く、熱も出たので休んでいた。去年コロナにかかったときみたいな喉の痛さで、ついには声が出なくなったので面白くなって録音をした。ずいぶん長引いて、もう声が出なくなるのかとも思った。最終兵器俺達QuizKnockを見ながら、横になって過ごしたのがほとんどの十一月だった。PSYCHIC FESはとんでもなくよかった。今年は自主企画の、質のいい、というかぼくの趣味にはまったライブにたくさん行けてよかった。この頃はまだ東京初期衝動がこんなことになるとは思いもしなかった。持ち込みのできる居酒屋に誘ってもらった。「AKABU」「楽器」あたりの日本酒が飲みやすくて、非常においしかった。新宿で野宿をした。ネズミが大きくて怖かった。下旬は未来電波基地をよく聴いた。『鬱の本』が届く。こうして印字されたものを見ると、やっぱりいいな、と思う。もう少しはしゃいだ文章にしてもよかったかもしれない。

○良かった本
石牟礼道子『苦海浄土』
木澤佐登志『闇の精神史』
片岡一竹『ゼロから始めるジャック・ラカン』

【十二月】
蟹ブックスそぞろ書房に行くため高円寺へ向かう。個人経営の書店は大阪の葉ね文庫が近かったのでよく通っていたのだけど、東京に来てからはほとんど新宿や町田の紀伊国屋でことを済ませてしまっていた。たくさん行きたい。シネマジャック&ベティもそうだけど今年は小規模の文化施設が閉店、あるいはクラウドファンディングに訴えるというニュースを多く見た。ぼくにできることはそこに行くこと、そこで買うこと、そこで買ったと言うことくらいだ。『ゴーストワールド』はいい映画だった。北野武の『首』もよかった。北野武だから作れる、権威の対象化。そごう美術館中原淳一展も可愛くてよかった。長年通っていたけれど手に入らなかった山本本家「神聖」のお猪口が手に入った。これからは日本酒を飲むとき、聖なる光に包まれます。旅行のついでに神崎川へ行った。落書きが本当に落書きでよかった。南口の「白庵」のうどんはこれまで食べたうどんの中でもトップクラスにおいしかった。松本の時計博物館もよかった。ミジャグチ信仰の記録の残る洩矢史料館も迫力があった。鹿の首や脳みそと肉の和え物。どう見たって呪物だ。ネグリも死んでしまった。大江健三郎も死んでしまった。でも今年の十大ニュースに入っていなかった。腐ってもノーベル文学賞なのに。浜田到の読書会のためにリルケを読んだりしている。前に読んだときよりもよりわかるようになっている。神聖かまってちゃんの投票セトリフェスが今年のライブ納めだった。かまってちゃんにはじまって、かまってちゃんに終わる。

○良かった本
三島由紀夫『愛の渇き』
フォークナー『野生の棕櫚』
『リルケ詩集』

来年もよろしくお願いします。こちらはかみしのの今年の活動です。文章を書くのも好きなので、ご依頼お待ちしています。また龍の季節で。
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