見出し画像

カミシモ人生芸夢編観劇

「安定感ある中堅・ベテランがなおも新しいことをしようとする攻めの心を失わない」
同行してくれた妻の評伝が日本青年館ホールに秋を告げた――
演者の長所を存分に発揮する筋書きに、彼らが作ってきた作品への愛が垣間見えた名作でした。
(初日と11/17昼公演の2回参戦、漫才パートのネタは後述、ストーリーのネタバレは注意です!)


キャラクターの最終進化

演者のスケジュール抑えづらいことはさておき、いや、よく抑えたな
今回は、時浦可偉(荒牧 慶彦)、島 世紀(和田 雅成)のエクソダス、岬 一碧(和田 琢磨)、高砂真夜(染谷 俊之)のラストワルツ、湾野 岳(橋本 祥平)、犬飼 佑(田中 涼星)のロングリードの3組で構成。
舞台カミシモ1,2は4組8人だったことによるスラップスティックさは少し隠れて、すでにドラマを超えて成長してきたキャラクターたちが、残された伏線とともに最終化する感じで、ポケモンカードで言うとようやくベンチにサーナイトを出せましたというところまで、感情を丁寧に書き込んでいる。

短い上演時間的に、運命的な出会いを発生させなければならないとしても、脇を締める島 日紀(本多新也)、佐伯タモツ(池村匡紀)、沖田阿久里(沢田冬樹)の最適な節回しもあり、楽しみながら事件→感情→事件の展開に集中できるストーリーとなっている。
(ちなみに、タモツって、司会者になって、またタモツになったよね…?あとよく客席おいてけぼりの遊戯王アドリブ拾ったな…)

大道具を移動させる意図だけが読み取れなかったが、全体的にメリハリが効いて飽きのない2時間20分であり、カミシモもとい、演者のファンであれば、満足度の高い作品であると思う。(決戦前夜編は、未来人設定が
「笑い」を通して、また「笑い」に向き合って、そして実際に面白い漫才で締める粋な構成は今回特にはまっていたように感じた。
そして何より、それぞれ漫才がうまくなっているので、本当にパチファンに出て現実とフィクションの垣根を超えt――


エクソダス

荒牧さんをこれまで斜に見て申し訳ございませんでした!!
ホスピタリティにアドリブ力、コールアンドレスポンスなど、歩くエンターテイメント施設のようなその引き出しの多さを目の当たりにし、荒牧先生のPasture所作をぜひとも義務教育に取り入れるべきなのではないかと。
これは推測に過ぎないのですが、初日のダンスパートでは客降りが1階のみだったため、ロングリードが1階客席で何か踊っているっぽい部分が、2階は若干、何が起きているのか分からない状態のところ、島が「見えてるで~」と煽ってくる(マジックミラーですか!?)ので、いまいちダンスパートが盛り上がってなかったのですね。客降りせよ、というわけでなく、何かわからない感じで、ちょっと乗れない感じでした。
そして11/17昼公演いったら、ロングリードのところではないのですが、なんと2階に荒牧先生と和田雅が現れてました。ただ、めっちゃ逆光でご尊顔が見えにくく、最初二人か分からなかったのです。演出ミス?と思ったのですが、日本青年館ホール常連の妻曰く、「2階でも照明やっとけば見れる。これは決めたんだ、彼らが」と強い語気であり、おそらく、演出を変えている。前後で踊ったり煽ったりしてるので、かなり忙しいが承認した彼らに、熱いものを感じました。

てかこちとら古参だぞ!!なんで2回とも先行抽選2階席なんだ!!

ストーリーはもはや荒牧先生完全自家薬籠中の物といいますか、時浦はついに死んだとなっていた父の話が出てきて、メンタルにガツンと困惑がぶつけられた際のメンヘラ所作というのがかなり熱いです。ただ、そこに至るには、和田雅と沢田さんの「親子演技」があるから、「忘れたはずの父」という存在への憧憬が喚起されるわけで、この島親子のなんでもない掛け合いが素晴らしい。その後のシリアスを見越してある種明確に軽薄に作っておかなければならないところに、和田雅流石の振る舞いでした。
自信家・破天荒・軽率に見せて臆病な島と、内向的で孤独感・強い憧憬・そして笑いを信じる時浦の正反対な二人だからこそ「あいつが上手で、下手が僕で」が成り立っている。実際に、漫才では、時浦が下手にいるのだ。


ラストワルツ

「ハーッハッハッハ!皆の衆、見たかっただろう、私たちのコンビを!」
と言わんばかりの、和田琢・染谷の鉄板コンビである。いや、見てたよ、刀剣感謝祭も、ソッリエーヴォも、アッリエーヴォだよ、、、
掛け合いは阿吽の呼吸になっており、もはや俳優ドゥオと言われても「あれ、ピンだったんですか…?」というくらいのフィクションと現実が逆転しているような安定感。
しかし、安定感とはマンネリであり、慣れを生む――なんて、そんなことはなく、なぜならば二人は「勢いが半端ない」からである。

和田琢磨さんの、年齢を、知っていますか…? 調べないでいいですよ、関係ないんですよ。一気飲みはするし、小劇場ばりのシリアス演技もするし、ハリセンぶっぱなすし、ダンスパートの動作を演技中に入れてくるし、大声出せるし、漫才は複数の人格を切り替えまくるし、ダンスはちょっとカクカクしてるけど最後までスーツながらワクワクした顔で踊り切るし、「いやお前の体力どうなってんだよ!」と高砂ばりに突っ込みたくなるんですよ。
それを高砂が舞台上で全部突っ込んでるわけですね。染谷氏の間の破壊の仕方、そしてもはやキャラ造形側すら自分側に引き込んだような不器用でハートウォーミングな振る舞い、拙者、ありがとう以外の言葉はなし――
初日はダブルアンコールで「初日なのですが、染谷の声が心配」という座長のフリにいかれた大声で返しておりました。ありがとうございます。

今回特に、コンビ間の最後のわだかまりであった「お笑いをすること」について、岬は家族との因縁、高砂は空虚でエントロピー増大な法則な自分が、なぜ上手と下手にいるのかに気付く描き方があり、これはもうちょっとパチファン優勝です。
てかこの二人、本当に細かいところで色々し過ぎ!なのですが、初日こそやはり染谷氏、固い舞台をほぐすように、掃除のシーンで2階から島に埃を落とす等アドリブ的な動きを入れまくっていたのですが、11/17回ではかなり抑制的に。その分他者が出てくるような形で、舞台全体の温度感を引き上げるような天晴演技、なるほど、この業界はまだまだ全員全盛期なのである。

(てか、ワダックマ、アイコン…染谷は猫とのツーsy

ロングリード

私はカミシモ1を見ておらず初だったのと、芸人みが薄い感じがあったのと、上記化け物4人にどうやって絡んでいくのか、などと気にしていたが、自然体で演技でかつ、負けない声量と個性と、4人と観客席をつなぐような振る舞いにとても魅了されました。
発起人でネタ作りをする湾野と、湾野に追従する全肯定ボーイ犬飼というネーミングからカントリーで、ナードな感じが、徐々に殻を破っていくこと、また、漫才大会という大舞台と自分たちの間のギャップに苦しみ、また苦しみをきっかけに本音を言い合い、殻を破る様子は、爽快感があった。
ネタの中身は後述しているが、田中涼星が肉体的にがんばるネタがあるが、あるある感を出しながらもステージを駆け回る様子に感銘を受けた。台詞数が少ないかつストーリも与えられていない中で橋本祥平が二人のパートのトリガーを引く部分も一瞬の仕事人感は光った。ネタ作りにフォーカスするとか、もっと見たい。観たいぞ、どのコンビもマジでコンビ単独してくれや、マジで光ファイナンスばりに取り立てるど!!?

ちなみに、犬飼が自分の意見で、ボケとツッコミを入れ替えよう!というが、その前にチンピラのタモツに絡まれたシーンで、本来のボケとツッコミを逆で認知されていた絡まれがある。タモツ、お前…!!


ネタ

さて、キャラソンとかパンフがネットで手に入らずここまでです…買いに行くために平日の仕事を放り出せるのか、飼い犬になるのか、カミシモの…
キャラソンはまじで、ラストワルツが『ワルツを超えて』から『BigBang』になったところと、途中で三拍子入ってくるところ語りたいのですが、あれば次回――
一旦、二発行ったので5本ネタを見れたので共有です!特にネタのネタバレ注意です!

EXODAS・ネタ①駄菓子屋,②私が母ならば


①駄菓子屋
時浦が駄菓子屋店長が夢として、島が客のクソガキ役を行う。小学生の喜怒哀楽を表出する島の幼児擬態の完成度がかなり高い。無理難題で返したり、島本人?とかいってすり替える時浦にさく裂し続けるツッコミマシンガン!

②私が母ならば

時浦が息子大好き母だったら、という、コンプラ微妙なやり取りも出てきつつのシチュエーションネタで、息子を溺愛してストーキングする様子は、親子というテーマで進んできた本編との関わり的にもかなり複層的なネタになっている。時浦のメンヘラ素振りが存分なく発揮され、アドリブを挟む要素も存分にあるため、島は無事演技を通り抜けられるのか!(11/17は荒牧のドラゴンボールの技・魔閃光が飛び出し、和田雅笑いで停止あり)

ラストワルツ・ネタ①万引き更生,②洋食屋のメニュー

①万引き更生

高砂演じる万引き青年を更生させる岬というシチュエーションで、犯罪を煽るような悪魔的誘いや、唐突な自分語りなどのワダックマのサイコパス感が遺憾なく発揮される作品。振り回される染谷がテンポよくヒートアップしていく名作となっている。

②洋食屋のメニュー

こちらはなんと、しゃべくり漫才である。ええ、シチュエーションではなく、本気じゃん! 洋食屋のメニューの美味しく思えるキャッチコピーを考えるネタで、へたくそな岬に対して、早口で完璧な美味しそうなメニューを連呼する高砂の超絶技巧から目が離せない。染谷、すげぇよ…

ロングリード ①運動会

①運動会

小学生からの同級生ということで、「運動会」の「アナウンス」がテーマ。湾野の繰り出す謎運動会を、犬飼が完璧な運動会所作で応えていくところが秀逸である。ネタ中に同級生が一人バイネームで出てくるが、それもネタの中の伏線となっており、笑いの爆発具合もなかなかである。田中くんががんばっている。

②???
初日、11/17昼共に①だったため、分からず。(分からないままで、いいのか――?)


とにかく、ネタは面白く、シンプルで、あと、漫才さらにうまくなってるぞ、この人たち…!!!


いいなと思ったら応援しよう!