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なぜベストパフォーマンスは続かないのか

楽しく走るだけじゃなく結果を出そうと思うと考えるようになるのがシーズン計画。狙った大会でベストな状態で臨めるように逆算してトレーニングの内容やボリュームを時期によって変えたりする。最近はトレーニングを管理するアプリもたくさんあり、今のコンディション、ピークの持って行きかたを示唆してくれる。だが、ふと思うのはベストな練習メニューを一年中繰り返すことで右肩上がりにずっと成長を続けることはできないのだろうか。なぜベストコンディションは続かないのか。なぜオフシーズンを設ける必要があるのか。単にオーバートレーニングを予防する以外にもっと理由があるはず。

ベストコンディションとは

ベストパフォーマンスを発揮できる心身の状態。体の状態というのは複数の能力が合わさって総合的にパフォーマンスが決定する。スピード、スタミナ、筋力、疲労耐性、もちろん技術も。これらの要素を大会当日に高いレベルに持っていくことでベストコンディションとなる。ただ、問題なのがこれらは同時に満遍なく強化するのが非常に難しい。その理由は・・・

過負荷の原則

体力維持のためならずっと同じメニューをこなしていてもよい。しかし、今の自分よりも成長しようと思ったら、以前よりも強い負荷を与えなければならない。これを過負荷の原則と呼ぶ。負荷を与えると筋肉が損傷したりエネルギーが枯渇したりして、身体は一時的に疲労する。この疲労状態から回復する過程で以前よりも強くなるわけだが、負荷をかけ続けると回復が追いつかず、慢性的な疲労状態に陥る。数日休めば回復するうちはよいが、長期間にわたり慢性的な疲労状態が続くと、その後何ヶ月休んでも謎の不調やコンディション低下に悩まされることがある。これがオーバートレーニング症候群である。1週間のトレーニングサイクルで休息日を設けることも大事だが、1年を通じたサイクルでも休息期間をしっかり設けることで、疲労をしっかり抜ききることが大事である。

トレーニングの特異性

これも当たり前だが大事なトレーニングの法則。特定のトレーニングは特定の適応のみ引き起こすというもの。腕立てしたら腕が強くなるし、スクワットしたら足が強くなる。ランニングでも同じでペースや時間によって得られる効果が異なる。ゆっくりのジョギングをたくさんしたらスタミナがついて、ダッシュをしたらスピードが強化される。つまりスピードとスタミナを同時に強化できる万能のトレーニングは存在しないとも言える。毎日のトレーニングでは何を強化するのか選択して行わないといけない。ではシーズンを通して満遍なく全ての能力を伸ばすのがいいのか。ビギナーはその方法である程度までパフォーマンスの向上が狙えるだろう。これまでのトレーニング負荷が少ないので満遍なく異なるトレーニングを行っても全ての要素に対して十分な負荷がかけられる。しかし中上級者は、それでは中々成長しないだろう。ここで過負荷の原則を思い出したい。成長するには以前よりも大きな負荷を与えないといけない。満遍ないトレーニングだと全体としてのトレーニングボリュームはある程度あったとしてもスタミナ、スピード、筋力、それぞれを強化するにはどれも現状以下の刺激となってしまい何も強化されないという状態になってしまう。

トレーニング毎に異なる特性

例えばHIITなどの高強度のトレーニングは効果が現れるのが早い分、効果が頭打ちになるのも早い。頭打ちになった状態でも無理に続けたり、さらに負荷や頻度を増やせば疲労のみ溜まっていきこれまたオーバートレーニングになってしまう。この場合は他の体力要素を伸ばすことに目を向けてやる必要がある。それぞれの体力要素は相互に関係し合っているので他の要素を鍛えることでまた高強度トレーニングの効果を得られるキャパを増やすことができる。例えば、強度を落として時間を増やすことで筋肉の遅筋化や毛細血管の密度を増やすことで高強度トレーニング中に発生した乳酸をより効率よくエネルギーとして再利用できるようになるかもしれない。
一方で有酸素系の持久トレーニングは効果を感じられるまでに長い期間を要するが継続して強化し続けることができる。オフシーズンや序盤に有酸素トレーニングをしっかり積んでレース前の狙った期間で高強度トレーニングを行うというサイクルが主流になっているわけである。

トレーニング効果の相殺

また、ある種のトレーニング効果は別のトレーニング効果を抑制してしまうという報告もある。例えば筋トレにおいて、最大筋力と筋持久力は同時に強化することは難しい。ランニングでも同じで、同時期にスピード強化とスタミナ強化を行おうとするとうまく適応が起こらずせっかくのトレーニング効果が半減してしまうかもしれない。

これら以上のことを踏まえるとやはりピリオダイゼーションが大事になってくる。限られたエネルギーと時間をどう分配していくか考えるのが難しいけど楽しみでもある。

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