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(総選挙総括3)「政権交代」よりも重要な、日本政治の本質的変化:「ラウドエクストリーム(自共連立)」から「サイレントマジョリティ(保守中道大合同)」へ

「国民民主党は、議席数以上に国会で存在感を示しつつある。自民、公明の与党が過半数を割り、他党との協力なしには国会運営が進まないためだ。一方で、政権奪取を目指す立憲も、国民民主との連携は避けて通ることができず、国民民主が永田町の大勢を左右する状況が生まれつつある。」

ということになりました(笑)。

海外メディアの取材をいくつか受けたのだが、石破茂首相の持論「アジア版NATO」がどうなるのか?という、国内ではほとんど話題にならないことへの質問が多かったが、それとともに聞かれたのが、

「日本政治は不安定化するのか?」
「日本の首相の国際社会におけるプレゼンスは低下するのか?」

ということだった。私の答えは「いや、そんなことはない」というもので、それはすでにこちらに書いた。

この論考の要点は、まず、石破内閣が岸田文雄政権の安全保障政策を基本的に継続することになること。野田佳彦立憲民主党代表も、すでに岸田政権の政策を基本的に継続する旨を表明している。つまり、安全保障政策は、財源の「防衛増税」の是非を除けば、今後の論点にならない。

要は、財源が「増税」か「国債」かだけが論点だ。だが今、増税を言い出せるタイミングにはなく、「防衛国債」は元々、安倍元首相の持論でもあり、自民党も受け入れるだろう。ちなみに、玉木代表は「教育国債」を打ち出すなど、「国債」にはあまり抵抗がないように思える(笑)。

一方、石破首相の側近には、安全保障担当補佐官の長嶋昭久氏、それと細野豪志氏と、「旧民主党の保守系」がいる。自民と野党は、安全保障で話し合いを密にできる環境がある。

旧民主党系には、世襲ではない保守、いわば「一代保守」とでも呼ぶべき政治家がいる。かつて、安倍元首相に「世襲でないのは、本物の保守じゃない」とばかりに、理不尽に議論から排除されて感情的に反発した人たちだ。彼らが、安全保障の議論に戻ってくるのだ。

それは、日本にとって悪いことだとは、私は思わない。

安全保障政策は、争点化すべきではないと言ってきた。「政権交代ある民主主義」がいいとずっと言ってきたが、どの政党が政権を握っても、安全保障政策は継続性をもち、決して政争化せず、国土を守り、国民の生命と安全を保障することのみで実行されるべきだ。

これは、諸外国では当たり前のことだ。例えば、英国で保守党、労働党、どちらが政権を担い、国内政策では激しく競おうとも、安全保障政策に関しては変わることはない。与党が決めたことは、野党もスタンディングオベーションで応えるものだ。

その当たり前の状況が、日本では戦後初めて生じるといえるのかもしれない。

それは、憲法・安全保障を争点として激しく激突する政治が戻ってきたと主張する「ネオ・55年体制」など存在しなくなるということだ(私は、元々そんなものはないと思っているが)。

「ネオ・55年体制」というのは、「自共連立」と同じことだと思うのだが、自民・共産(立憲共産)が激しく罵声を浴びせあいながら「一党支配」「万年野党」で利害が一致する一方で、政策論争がまともに行われず、国民生活はそっちのけの政治がようやく終わるということだ。

私は、保守派の主張を聞いていると、日本を衰退させたいとしか思えない。いったい、何を保守したいのかと以前から言ってきた。

これは2016年に書いたもので、最初の皇室のことは今となっては間違っているので、そこは読まず、4ページ目からみてください(笑)。

私は、伝統というものを否定する気はない。しかし、伝統が現実の社会に合わなくなっているのに、それにこだわって社会を衰退させて、なんの意味があるのだろうか。

例えば、「伝統的な家族を守れ」という。しかし、日本の家族形態が多様化したのは、発展途上の段階から、高度成長に入る過程で、産業化・都市化が進み、価値観が多様化するというどこの国にも起こる、普通の変化が起こったに過ぎない。祖父母・夫婦・子どもが同居する「標準家族」が多数を占める社会に、国家が「価値観」を押し付けて戻すことなど、絶対に無理である。

こんなんも書いてましたね。これも2016年。

むしろ、家族形態・価値観の多様化という現実を積極的に認めたほうが、日本の「少子化」の克服、経済成長、社会の発展につながるのは、当たり前の話だ。

総選挙で、旧安倍派の「裏金議員」は壊滅した。うるさい保守の声、それを感情的に批判する共産主義者の金切り声、罵声を浴びせあう政治は終わりだ。

玉木代表の「手取りを増やす!」。野田代表の「選択的夫婦別姓、当たり前じゃないですか!」。こういう意見を石破首相は取り入れざるを得なくなる。

「若い奴は苦労しろ。わたしらは苦労した」というじいさん、ばあさんたちの声は、リスペクトはしますが、ちょっと下がっていただき、特に現役世代、子育て世代、若者というサイレントマジョリティが切に望み、楽に暮らせるような政策が、実現していくといい。

玉木さん、「手取りを増やす」もいいですが、現在の旦那が働いて、妻が非正規を前提として手取りを増やしても、効果はたかがしれてます。

「手取りを増やす」はすぐにやるとして、より構造的な問題解決のために、「生涯共働き」で「ダブルインカム・ツーキッズ」はどうですか?(笑)

私は、これをサイレントマジョリティを基盤とする「穏健な保守中道勢力の大合同」による政治の始まりと考える。感情的な「自共連立」からの完全な脱却という意味で、「政権交代」よりも、より本質的な政治の変化が起こるのだと考える。

そして、その「穏健な保守中道勢力」を結びつけるキーワードは

「細川護熙」

ということは指摘しておきたい。石破茂、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、枝野幸男、茂木敏光、野田聖子、そして高市早苗。

ざっと、思いつくところを挙げてみた。意外な人もいますね(笑)。彼らの共通点は「政治改革」を機に政界の表舞台に出てきた政治家。そして、細川護熙元首相の薫陶を受けていることだ。

細川元首相の政治信条は「一内閣一仕事」。政治家は1つの仕事に政治生命をかける。権力にしがみつくことはしない。その教えを一番忠実に守ったのが、税と社会保障の一体改革という「一仕事」の達成とともに首相から退陣した野田氏である(消費増税の是非は、別の話です)。

これは、「一党支配」「万年野党」の「自共連立」と対極にあるのは言うまでもない。






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