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トランプ大統領返り咲きで民主主義の危機?:今こそ日英が民主主義を牽引する時

米大統領選挙が投開票された。共和党のドナルド・トランプ元大統領が、民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、大統領に返り咲くことになった。

開票の模様は、英国出張へ向かう飛行機の中で、観ることになった。BBCニュースをずっと観ていた。

BBCは、共和党側と民主党側、双方の知事、国会議員、元議員、選挙運動関係者、大学教授、政治評論家、コメンテーター、など一流の政治の現場の人たちや専門家を次々とゲストに呼んで討論、独占インタビューを延々とやっていた。

これは、非常にすばらしいと思いましたね。

やれ、トランプだ、ハリスだというと、感情的になり、罵声を浴びせ合いになる。そこから一歩引いて、共和党・民主党、それぞれの立場から論理的な議論を延々と続けていた。

トランプ・ハリスは確かに両党の「顔」だが、現場ではさまざまな人材がいる。アメリカはどうあるべきか、民主主義はどうあるべきかの闘いが、これからも続いていくのだと感じた。

民主主義は危機にあるのだという。

だが、危機だからと、右往左往するばかりでは芸がない。トランプ氏が大統領になるのは「二度目」なのだから。我々もトランプ氏について、学習できるはずだ。

今年の2月に、こんなん書いてました。

要するに、トランプ次期大統領の「MAGA(Make America Great Again=再び米国を偉大にする)」とは、どういうことかというと、私なりの言葉で解釈すれば、以下の通りである。

「東西冷戦期から今日まで、米国が「世界の警察官」「世界の市場」として、多大な負担をすることで、恩恵を受けてきた世界中の国々よ、それを米国に返せ」

ということだ。そうすれば、米国は再び偉大になるということだ。

言い方を変えれば、多くの国に対して、「米国に頼るな。自分でやれ。偉大な米国のために負担せよ(米国のものを買え)」ということであろうか。

だから、私はトランプ次期大統領がどうだとかいう前に大事なことは、米国が「世界の警察官」「世界の市場」になる前の状態に、世界中の国が戻らないことだと思うのだ。

それは例えば、近隣の国々同士が「コミュ障」に陥らず、いざこざを起こさないこと。領土や資源を屁理屈つけて奪い合わないこと。

米国が、「世界の警察官」をやめ始めた頃から、いろいろ起こってるじゃないですか。

例えば、「ウクライナ戦争」も「イスラエル・ハマス紛争」もそうじゃないですか。今の時代、近隣で力の差が大きい時に、力の大きなものが小さなものを屁理屈つけて攻撃するようになっている。

ロシア・ウクライナは言うまでもない。イスラエル・ハマスも先制攻撃はハマスだったが、その後の虐殺といっても過言ではないイスラエルの猛反撃をみると、まさに近隣で力の差が大きい時に、紛争が起こる典型事例だ。

次にその可能性があるところとして、「台湾有事」も含まれるだろうね。

でも、「近隣で力の差が大きい時に、力の大きなものが小さなものを屁理屈つけて攻撃する」こそ、「米国が世界の警察官だった時代」の前に、世界中で頻発していたことなのだ。

それ以前に、近隣の国々同士でまともな会話もできない「コミュ障」状態をなんとかしないといけない。日韓、日中関係なんて明らかでしょ。

北大西洋条約機構(NATO)の主力国でありながら、EUを離脱した英国や、EUの中にいて、好き勝手なことをいうハンガリーなどいる。

こういうことを、米国になんとかしてもらうんじゃなくて、自分たちである程度はやっていく。それより前に、自分の国がどれだけ米国に軍事的・経済的に依存していたかを認識することは大事かもしれない。

日本の奇跡の高度経済成長は、その年代の人たちが偉大だったわけではなく、単に米国に守られ、食わせてもらっただけだと強く認識することだよ。

そうでないと、いつまでも高齢者の勘違いが続き、自分たちの価値観を自民党を通して押し付けて、若者を苦しめることになるんじゃないの?

また、いかに米国に守られ、食わせてもらっていたかがわかれば、トランプ次期大統領の要求をどこまで受け入れ、何を守らないといけないかがわかる。

要するに、トランプ次期大統領の就任で我々がやらなければならないことは、まず「自分のことは自分で考える」ということだよ。ただし、1つ言っておくのは、それは即、「自主防衛」とか「脱日米安保」とか言うことじゃない。知恵を使って、得るものは得なければならない。

今、英国にいて、こちらの学者・ジャーナリストと話をして、意を強くすることがある。

民主主義の危機だという。だが、日英が民主主義を守り、発展させる砦となっているのではないかと思うのだ。

米国のトランプ氏の復活に加えて、欧州諸国では、極右・極左のポピュリズムの台頭がある。いまや、ポピュリズム政党が主要政党の一角を占めるようになった国もある。

しかし、日本では衆議院で、極右の参政党・保守党が合計6議席、極左のれいわ新選組が9議席に過ぎない。465議席のわずか3%にすぎない。前より増加したというが、それこそ自民党一強だった頃は1%もなかった。

明らかに、ポピュリズムの台頭は抑えられている。それは、自民党の存在が大きい。

要するに、自民党は「包括政党(キャッチ・オール・パーティ)」だ。まず、保守・極右を抑え込む。旧統一教会、日本会議に首相、幹部からバックベンチャーまでもはひたすらリップサービスを繰り返す。だが、保守の政策はさっぱり実現しない。だが、保守・極右はまさか野党に投票するわけにはいかないので、自民党の支持母体という「格」を得てがまんする。

一方、自民党の政策は「なんでもあり」で、基本的には左派野党と違いを見せるのではなく、左派野党の政策を奪うことで政権を維持してきた。

国内政策においては、左傾化を繰り返し、全世代社会保障、女性の社会進出、外国人単純労働者の受け入れ開始、教育無償化、LGBTQなど人権政策などを進めてきた。それは元々左派野党の政策だが、自民党がカネをつけて実行することで、中道から左派野党の支持者までを奪い、左派野党を「極左」まで追いやった。それが、かつてのいわゆる「立憲共産党」。立憲民主党と共産党の「野党共闘」だった。

その結果、左右のポピュリズムが極めて小さく抑えられたのが、日本政治だった。自民党の「なんだもあり」のフレキシビリティが有効だった。

では、なんでもありとは、どういう意味か?それは、海外に例えれば「自民党」とは「労働党」と「保守党」を合わせたようなものだ。あるいは、ドイツの「キリスト教民主同盟・連合(CDU・CSU)」と「社会民主党(SPD)」の「大連立」のようなものでもある。

これは、21年の外国人特派員協会での記者会見でも説明して、世界のメディアに紹介された。

つまり、ポピュリズム台頭に対抗する1つの策は「自民党を創ること」ということだ。それは、世界的に見れば「保守政党」と「労働党・社会民主党」の合同だといえる。

荒唐無稽な話ではない。これまでもよくあったことだ。例えば5-70年代中盤までの英国の「コンセンサス政治」。保守党が「貧しきものに分け与えよ」労働党が「労働者の権利拡大」で、言っていることは真逆なのだが、実は政策はほぼ同じような「福祉政策の拡大」。欧州全体、そんな感じだった時代。

英国では、トニー・ブレアが長期政権を築いた「第3の道」も、労働党が保守までウイングを伸ばしたものであり、ボリス・ジョンソンが労働党の安定的な支持基盤とされた選挙区を切り崩して大勝したこともある。

ドイツでは「大連立」がよく形成される。記憶に新しいアンゲラ・メルケルの長期政権も、多くの期間「大連立」だった。

だから、私は自由民主主義社会で最長の政権を築いてきた自民党を「世界最強のキャッチオールパーティ」と呼ぶ。そして、それこそが、ポピュリズムを抑えるモデルでもあると思うのだ。

そして、それは政党だけの問題ではない。政党と選挙制度を同時に考える必要がある。よく、政党の問題と選挙制度の問題は、分けられて考えられる。そこが問題ではないかと思うのだ。

例えば、ドイツでは、選挙制度が比例代表制を中心とする制度(小選挙区比例代表併用制)のため、小政党が乱立する傾向がある。

一方、英国では今年総選挙が行われた。保守党の支持が、極右政党に切り崩されている言われた。だが、政権は、やや党首が不人気だったにもかかわらず、安定多数を獲得した労働党に移った。

極右政党らは、10%以上の得票があったが、小選挙区制のため、ほとんど議席を獲得できなかった。

つまり、ポピュリズムは、欧州大陸諸国よりも、相対的に抑えられているといえる。

要するに、小選挙区比例代表並立制で、自民党という「労働党」「保守党」を合わせた「世界最強のキャッチオールパーティ」が長期政権を築いてきた日本と、小選挙制で「労働党」「保守党」が政権交代ある民主主義を築き、極右・極左の台頭が抑えられてきた英国。

この2つの国が、トランプ氏の米大統領復帰で、最大級に高まったポピュリズム台頭の危機から自由民主主義を守る砦となりえるということだ。

もちろん、日本では自民党が「少数与党化」し、石破・野田・玉木などを中心とするコンセンサス政治が始まる。それが不人気になると「政治の外」に新しい勢力が誕生する可能性がある。

このような時代が始まるのが早まるということだ。既存政党側からみれば、政治は不安定化することになる。

そして、英国でもスコットランドなど地域政党の台頭などがあり、政党自体は多様化してきている。

両国とも、さまざまな問題がある。だが、現時点で自由民主主義を守る砦となっているのは、日本と英国であるのは明らかだ。そして、この二か国が、大西洋と太平洋で、米国の最大の同盟国ではないか。

私は、権威主義に対抗するには、日米英の政治・経済における同盟の構築だと思っている。特に、中国と断絶する必要はないが、うまくやって儲ければいいのだが、一方で、「中国なしでもやっていける」経済を形成することは大事だと思う。それが日米英である。

トランプ次期大統領は、二国間の交渉を好む。日米、日英がそれぞれ交渉し、結果日米英のブロックができればいい。今までよりやりやすい面がないわけではない。

私は今回の英国出張で、この考えを学者・ジャーナリスト・ビジネスマンに話したが、ほとんど賛同。英国人の誇りに響くものであるだろう。日本人もそうだと思う。

日英でトランプ新政権を囲い込んでポピュリズムを抑え込むくらいの勢いで自信と誇りをもってやってほしい。必要以上にトランプ次期大統領に対して委縮しなければ、やれんことはないはずだ。




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