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中居正広の「男性問題」から、女性が日本社会でキャリアを築くことの厳しさを思う
まず、最初に言っておきたいのだが、こういう問題が起こった時、メディアは「女性問題」「女性スキャンダル」という。これは、間違っていると思う。
メディアが「女性問題」という時、女性側が悪い、男性側が足元すくわれたみたいなニュアンス入っているように思うからだ。それは違うでしょう。
「男性問題」と呼ぶべきではないか。男性の悪い性癖によって女性の人権が蹂躙された問題である。女性には何も責任はない。正確に伝えるべきである。
だから、この論考のタイトルは、「男性問題」とさせていただく。これを読んだ方にまずご理解いただき、今後少しずつ「男性問題」という呼び方が広まってほしい。
「中居正広の男性問題」に関して、フジテレビが記者会見をやり直しているようだ。この件については、何が起こったのか、いまだによくわからないまま。中居は芸能界を引退し、フジは多くの企業が広告を撤退し、経営の危機にある。
だから、多くのことを論じることはできないが、私はこの件について2つだけ、言えることがある。
1つ目は、私は年に数回、テレビの報道番組に出演してきた。レギュラーを持っている人にはかなわないが、どの番組でもアナウンサーの方々と一緒にお仕事をした。その「学者」としての立場からみたアナウンサーの方々についてである。
2つ目は、私の教え子には、アナウンサーを目指した学生が何人かいる。ゼアナウンサーになった人はいないのだが、その登竜門されている、いわゆる「ミスコン」に挑んだ。そういう学生を指導し、社会に送り出す「大学教授」としての立場からである。
まず、1つ目だが、私はテレビ出演するたびに、女性アナウンサーは「パーフェクトヒューマン」だなと思ってきた。
女性アナウンサーの仕事は、主に私らコメンテーターにとっては休憩の時間に、ニュースを読むことだ。非常にクールは表情で、美しい発声で、一言一言、正確に言葉を発していく。時間も限られているが、ジャスト残り0秒でニュースを読み終える。
本当に「パーフェクトニューマン」だなと思うのだ。
番組の前後に、ご挨拶させていただき、少し談笑することもあるが、バラエティではじけた姿をみせることもある方でも、非常に礼儀正しく、謙虚で、丁寧に対応していただいた。
昨年11月に出演したBSフジ・プライムニュースでは、一緒に出演したアナウンサーの方が、週刊文春に性被害を2番目に匿名で告発した人だという噂が流れたので心配した。幸いなことにそれは、本人が完全否定したので、本当に安心した。
番組の進行や、ニュースは完ぺき。番組後に楽屋で、他の出演者の方々と共に少し談笑させていただいた。番組の延長で今後の政局の話をしたのだが、アナウンサーの方も会話に入った。短い時間ではあったが、政治について、よく勉強されており、高い見識を持った方とわかった。
2つ目の話に移る。いわゆる「ミスコン」はアナウンサーになる登竜門といわれることがある。そして、アナウンサーになるのは「ミスコンに出るような女性」という批判があると思う。
しかし、実際は逆だなと思う。超難関のアナウンサーを目指すような、志も能力も高い女性が、「ミスコン」に出ざるを得ない現実があるということだ。
かつて、私のゼミ生でも、アナウンサーを目指し、専門学校に通った人がいた。その専門学校では、アナウンサーになるための知識、スキルなど丁寧な指導を受けていた。
また、進路指導もしっかりしていた。学生は決して派手なタイプではなかったが、各局が採用するアナウンサーはバラエティ番組に多数出る派手なトップアナだけではない。ナレーションなどいろんな仕事があり、いろいろなタイプが採用されている。
テレビ局は在京のキー局だけではない。関西などの準キー局を狙ったらどうかとか、具体的な就活の戦略もさずかっていた。
ただ、その進路指導の時、学生は言われた。「ミスコン」に出た方がいいと。
それで、いくつかのミスコンに応募した。決してミスコン向けの派手なタイプではないと思っていたが、頑張って、どれも地区大会の決勝までは進んだ。
その1つ、いわゆる「日本三大ミスコン」と呼ばれる大会でも、地区の決勝まで進んだ。その時、学生から、会場に来てほしいと言われたので、生まれて初めて、ミスコンの会場に出かけた。
審査員の席を見ると、和装の男性、派手なドレスの女性と、いい悪いではないが、私とは生きている世界が違うと思った(笑)。
コンテストが始まると、いろいろな審査があった。さすがに水着はなかったが、ビデオだけど、「ゴルフ接待」の審査があった。
コンテスト前に、決勝大会出場者がゴルフ場に行って、スポンサーの企業が提供した綺麗なゴルフウェアを着て、審査員や大会関係者とゴルフをする。
その映像を会場で見せられたのだ。別に、スコアでその部分の一位を競うわけじゃない。じゃあなんで競うのよって話。大変失礼な話だけど、「ゴルフ接待」の能力を競っているとしか思えなかった。教え子のゴルフ接待の映像など、みちゃいられない。
他に、特技を披露するという審査があった。多くの出場者がカラオケボックスレベルの歌を披露する程度だった。だが、さすが上久保ゼミ(笑)。アナウンス専門学校で身に着けたらしいが、落語を披露した。場の空気を支配した(笑)。
あと、現代社会を意識してか「SDGsの活動」を披露するという審査があった。これはプレゼンテーションをしたのだが、上久保ゼミでやってる研究をガチで披露して、これも、場の空気を支配した(笑)。
何の先入観もなく、フェアにみれば、さまざまな部門で場を支配したので、3位までには入るだろうし、少なくともSDGsの部門は1位だろうと思った。だが、1つも部門賞は取れず、3位以内にも入れず敗退した。
本人、SDGsの部門賞が取れなかったのがよほど悔しかったらしく、その場で号泣した。その部門の1位は優勝した子で、その子はほぼ部門賞を独占した。
結局、場の空気を支配したように見えたのは、場の空気をぶち壊したということだ(笑)。上久保ゼミ生らしい蛮行だったのだが、主催者側からすれば、困っただろうねえ。
優勝は、最初から決まっていたと思う。部門賞も、全国大会に向けて、その優勝の子に箔をつけるため、独占させたのだと思う。カネも動いたという。ゼミ生は、本人もご両親も1円も出してないのだから、端から無理だ。それで決勝まで残るのは大したもんだと思ったが。
本人は、次の日から、大学院進学に進路をスッパリと変えた。今では、いい人生経験だと言っている。
繰り返すが、ミスコンに出ていたのは、うちのゼミ生だけでなく、他の出場者も含めて、志のある、高い能力と見識を持つ、才色兼備のとても優れた若者だと思った。それが、キャリアを開くために、「ミスコン」に出ざるを得ないというのがこの社会なんだなというのが、私が抱いた思いだった。
上久保ゼミは、歴代ゼミ長14人中11人が女子です。特に女性をひいきしたわけではない。フェアに能力を評価した結果、こうなっている。
男子と女子をフェアに指導してきた私の立場からすれば、就職活動も、その後の仕事も、完全にフェアにキャリアを形成する機会を与えてほしい。それは、大学教授として強く主張しておきたい。