『絶滅危惧職、講談師を生きる』を読んで
先日放送されたTBSラジオ『伯山ラジオ寄席 太田光×神田伯山 この噺を聴け』がとてもおもしろかった。ゲストの爆笑問題・太田さんが選ぶ落語を伯山さんと掘り下げていく特番。今回は三代目古今亭志ん朝の『大工調べ』だった。ラップみたいにまくし立てる啖呵が愉快。太田さんの、こうなんじゃないかと「慮りながら聴く」という話に、落語の聴き方がストンとわかるような心地がした。落語は笑ってたのしむものという先入観があったけれど、もっと自由なんだな。(タイムフリーでぜひ!)
その流れで読みかけの神田松之丞『絶滅危惧職、講談師を生きる』も読み終える。前座修業や協会の仕組み、二ツ目と真打の差など、知らないことだらけだったけど、構成もよく丁寧で内容がスルスル入る。講談初心者の私にぴったりの入門書だった。
別の角度では、伯山(松之丞)さんがはやくにお父さんを亡くされたあと、談志師匠や松鯉師匠に父性を見出したり、今生きている名人の芸を生きてるうちに見なければと焦ったり、師匠が今生きていることに安堵したりするエピソードが印象的で、生死への生真面目さに胸を打たれた。目標を探している10代の頃に読むと感じ方が違っただろうなと想像した。本当は講談に全然向いてないかもしれないという不安を稽古にぶつけた、という語りには、みんな同じなんだなと感じる。
また別の角度では、講談を広めていくために検証を繰り返すこと、協会の仲間や師匠方とのコミュニケーション、自分のなかでの優先順位を明確に持つ……など仕事の局面で必要な工夫が詰まる一冊でもあった。それもこれも「講談がすき」だからこそ語られる内容だということが更に書籍の魅力を増している。すきって物凄いエネルギーだ。俯瞰する力は、あとがきで校閲や書籍営業へ感謝を述べる配慮にまで及んでいて説得力が増した。
半ばミーハーなきっかけではまりだした講談だったけれど、いろんな切り口で読むことができた。同世代の講談師は真打になっているというのは自分の立場と比べるとその差に驚くけれど、手放しに私自身の10年20年先がたのしみになる。趣味ってうれしい。
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