紙野七

小説 / 詩 / 音楽など。YouTubeで本の紹介などもしております。Exotic Penguin主催。通販はこちら(http://inuikamina.booth.pm) ご依頼等はDM・メールにてご相談ください。 ご連絡→exopenkamina@gmail.com

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  • 平凡な少女のありふれた死に方

    【あらすじ】 ある日、主人公・西村景は部室で白坂奈衣が死んでいるのを発見した。 文芸部と演劇部が合併してできたという文演部では、『本作り』と呼ばれる特殊な作品作りが行われていた。 自分たちで書いたシナリオを、自分たちで演じる。しかし、それは文芸とも演劇とも違い、出来上がったシナリオを演じるのではなく、演じた結果生まれたシナリオこそが作品になるというものだった。 白坂はいつも自分が死ぬシナリオと作り、その死の物語を景たち他の部員に作らせていたが、ついに演技ではなく実際に命を絶ってしまった。 景たち文演部に残された部員たちは、彼女が最期に遺したシナリオを完成させるため、彼女の死の理由に迫っていく。

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【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第1話

【あらすじ】  ある日、主人公・西村景は部室で白坂奈衣が死んでいるのを発見した。  文芸部と演劇部が合併してできたという文演部では、『本作り』と呼ばれる特殊な作品作りが行われていた。  自分たちで書いたシナリオを、自分たちで演じる。しかし、それは文芸とも演劇とも違い、出来上がったシナリオを演じるのではなく、演じた結果生まれたシナリオこそが作品になるというものだった。  白坂はいつも自分が死ぬシナリオと作り、その死の物語を景たち他の部員に作らせていたが、ついに演技ではなく実際に

    • 拙作『平凡な少女のありふれた死に方』がnote創作大賞の中間選考を突破しました。自分の中での最高傑作なので、ぜひご一読いただけると嬉しいです。 https://note.com/kaminonana/n/n1818069dd6f9?sub_rt=share_b

      • 創作大賞2024応募作『平凡な少女のありふれた死に方』完結しました。

        こんばんは。 紙野七と申します。 この度、創作大賞2024に『平凡な少女のありふれた死に方』という作品を応募しました。 noteは数年前に作った後、ずいぶん放置してしまっていたのですが、改めて使ってみると、他の小説投稿サイトとは毛色が違って興味深く感じる部分も多かったです。 普段からあまりポップな物語を書くことができず、ネットの隅で細々と投稿を続けているのですが、noteは小説だけでなく、様々な文字媒体が存在していることもあって、普段感じている疎外感が少し薄れるような感覚

        • 【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第28話

          「景は大きな勘違いをしてるよ」 「勘違い?」 「そう。あるいは、幻想と言い換えてもいいかもしれないな」  和希はまるで痛々しいものを見るような憐みのこもった冷ややかな目をこちらに向ける。 「おかしいと思わなかった? 生徒が一人死んだっていうのに、警察がほとんど学校に来てない。目撃者であり、白坂先輩と近しい関係にあった僕たちですら、簡単な取り調べを数回受けただけだ」  確かに少し違和感があった。警察の姿を学校で見かけたのは最初の数日程度で、それ以降は僕たちへの取り調べもなくなっ

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        【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第1話

        • 拙作『平凡な少女のありふれた死に方』がnote創作大賞の中間選考を突破しました。自分の中での最高傑作なので、ぜひご一読いただけると嬉しいです。 https://note.com/kaminonana/n/n1818069dd6f9?sub_rt=share_b

        • 創作大賞2024応募作『平凡な少女のありふれた死に方』完結しました。

        • 【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第28話

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        • 平凡な少女のありふれた死に方
          28本

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          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第27話

           白坂先輩のシナリオを見てしまったのは偶然だった。  その日は部活が休みで、僕は前日に忘れた本を取りに部室を訪れた。 「あれ、先輩も来てるのか」  中には誰もいなかったが、机の上に白坂先輩のパソコンが開かれたまま置きっぱなしになっていた。普段は部活が休みだと誰もいないことが多いのだが、どうやら彼女は部室で作業をしていたようだった。  パソコンの画面が目に入ったのは、本当に無意識だった。棚に戻されていた本を回収し、彼女が戻ってきたら軽く挨拶をして帰ろうと、そんなことを考えながら

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第27話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第26話

          「僕は僕で色々と調べてたんだ」  今度は自分の番だというように、和希は語り始めた。 「最初に違和感を持ったのは、景に僕があの日彼女と会っていたことを看破されたあとだった。その場では気にならなかったけれど、あとになって、僕は一体どこで笹野さんに見られたのかと疑問に思った。部室に向かう途中では誰にも会わなかったし、それに……」  一呼吸置いて、彼は強調するように言った。 「あのとき部室のドアは閉めていたはずなんだ」  確かにあの日は蒸し暑く、空気のこもりがちな部室棟ではほとんどの

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第26話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第25話

           つらいことも悲しいこともない、ひどく平坦でつまらない人生だった。  両親とも健在で仲も良く、それなりに金銭的にも余裕のある中流家庭に生まれた。  僕自身も大きな病気や怪我をすることもなく、いたって健康に育った。幼い頃に階段から転げ落ちて、頭のてっぺんにぱっくりと割れるような傷ができたことがあったくらいだ。今も少しだけ傷跡が残っているが、時折頭を洗っているときに思い出す程度のものでしかない。  明るい性格ではなかったので社交的とは言えなかったが、それなりに友人はできた。ちょっ

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第25話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第24話

           ずいぶん長く居座っていた夏の残り香もいつの間にか霧散し、柔らかな秋草の香りに塗り潰されてしまっていた。乾いた風に吹かれる肌寒さが寂寥感を刺激し、つい感傷に浸りたくなるような気分にさせる。  閑散とした姿が目立つようになったこの文演部の部室に、今日も僕は一人で訪れていた。あの日以来、ノブを持つ手にかかる重さが日に日に増している気がしていた。埃と黴が混じった暗澹とした匂いを一層強く感じるのは、きっと単なる気のせいなのだと思う。  白坂先輩が死んでから、僕は色々なことを考えていた

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第24話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第23話

           その日もやはり友利先輩は僕よりも先に部室にやってきていた。そういえば、彼が集合時間に遅れているのを見たことがない。いつも洒脱な空気を漂わせていて、何かに追い立てられているような姿が想像できなかった。 「高野部長に会って、色々話を聞きました。白坂先輩のお姉さんについて」  僕がそう告げると、彼はわざとらしく身体をのけぞるようにして天井を仰いだ。 「そうですか。決して隠していたわけではないですが、あまり気持ちのいい話ではないですからね」  どうしても語りたくないのか、ここまで来

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第23話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第22話

           一年生の十一月頃だったか。まだ冬というには早かったけれど、時折通り過ぎる冷たい風が枯葉をどこかへ連れ去っていく。一大イベントである文化祭が終わり、騒がしかった校内がだいぶ落ち着きを取り戻して、年末に向けてどことなく虚無感のようなものが学校全体に充満していた。  文演部だけでは寂しかろうということで、お隣のオカ研も誘い、合同で文化祭の打ち上げをすることになった。打ち上げと言っても、会場は食べ放題が安いイタリアンチェーンの一角で、合わせて十人ほどでひっそりとそれぞれの健闘を称え

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第22話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第21話

           放課後の誰もいなくなった教室で、先輩の死にまつわることを整理していた。本当なら部室で作業をしたいところだったが、万が一にでも和希や友利先輩と鉢合わせたくなかったので、しばらく部室からは足が遠のいていた。  色々と調べていくうちにだいぶ情報が整ってきたが、まだ全体像はいまいち掴めない。おそらく重大なピースが抜けている。その欠けたピースを補完するために、僕は過去のことを調べようとしていた。  以前、部室から拝借してきた一冊のノートを開く。これは文演部の部費を管理している帳簿だっ

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第21話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第20話

           友利先輩はおそらく文演部の中で一番変わった人だった。  というよりも、変わった人なのかどうかすらわからない。  彼は自分というものを持たず、常に誰か別の人物を演じていた。  これは決して比喩ではなく、実際に会う度違う人物であるかのような印象を受けた。外見や表情、口調、性格まで、すべてを変化させて、あたかも最初からその人物であるかのように振る舞って過ごす。しばらくすると今度はまた全てを一新して、全く別の誰かになり替わっている。そんなことを繰り返している人だった。  僕が最初に

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第20話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第19話

           一体、彼女はどこまで想定してシナリオを組み立てていたのだろうと、ずっと疑問に思っていた。自分が死んだあと、どんな過程を経て、どんな物語へと帰着すると考えていたのだろうか。  ただ死んで終わりではなく、彼女はあえて僕たちにシナリオを遺した。それは彼女が自分の死を物語へと昇華するための手段だった。そこには彼女が想定していた正規ルートが存在しているはずだ。  そして、僕は今確信していた。ずっと疑問に思っていたけれど、そもそもその疑問自体がナンセンスだったのだ。  あの日以降、これ

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第19話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第18話

          「和希はあの日、白坂先輩と会っていた」  僕は和希と対峙していた。こうして部室に二人でいることは何度もあったけれど、大抵は彼が五月蠅いくらいに喋り続けていたから、沈黙に満たされたこの空間はすごく居心地が悪かった。  少しずつ冬が近づいてきて、日が沈むのがどんどん早くなっていた。電気をつけていない部室は薄暗い。まだ外は夕日が残って煌々と世界を照らしていたが、目の前にいる彼の顔はまるで乱雑に塗り潰されたように真っ黒く見える。  しばらく待ってみても、彼は口を開こうとしなかった。俯

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第18話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第17話

           和希は文演部で唯一、自分でシナリオを書くということをしなかった。  演者としては『本作り』に参加していたが、彼発信でそれがなされることはなかった。  もちろん演者も非常に重要な役割を担うわけだが、最終的に出来上がった物語が誰の作品かと問われれば、間違いなくシナリオを書いた発案者のものだろう。僕のように自分に割り当てられた役を通して内省を図るならば理解できるけれど、彼はむしろ器用に物語に合わせて役をこなす道化的な動きをしていることが多いように見えた。  それもあって、どうして

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第17話

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第16話

           友利先輩がいなくなったあと、ずっと彼に言われたことを考えていた。誰もいなくなった部室に居座る僕は、傍から見ればそれこそ亡霊と間違われてもおかしくない。きちんと喪に服す気持ちがある彼の方がよっぽど人間らしい。  何より、僕たちが白坂先輩の死を許容してしまったというのは言い得て妙だと思った。実際、僕が彼女の死体を見た瞬間に感じたのは、伏線が回収されたような納得感だった。僕ほどではないにせよ、他の三人も少なからず同じことを感じていたはずだ。  自分が死ぬシナリオを作ることで、彼女

          【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第16話