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NHKドラマ「宙わたる教室」の第一話を観ました

 10月8日(火)に放送されたNHKドラマ10「宙わたる教室」を、遅ればせながらNHK+で今観ました。

 実はリアルタイムでドラマの後半から観たのですが、前評判通りに良かったのでNHK+で観ようと思っていたところ、下記の記事があったので早速観たのです。

初回から号泣必至…NHKドラマ『宙わたる教室』が他の学園ものと一線を画すワケ。第1話考察レビュー
10/12(土) 8:10配信
映画チャンネル

窪田正孝主演のNHKドラマ『宙わたる教室』が10月8日(火)より放送開始した。実話に着想を得て生まれた小説を実写化した本作は、さまざまな事情を抱えた生徒たちが集まる定時制高校に、謎めいた理科教師の藤竹が赴任してくる。今回は、第1話のレビューをお届け。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

これまでの学園ものとは一線を画する『宙わたる教室』
 定時制高校は、何らかの理由によって全日制の高校に通えなかった人たちのための場所であるという程度の知識しかなく、正直言ってそれ以上のイメージを抱けるほどの情報を持ち合わせていなかった。

 NHKで毎週火曜日にはじまった『宙わたる教室』は、大阪府にある定時制高校の科学部から着想を得た同名小説を原作としたドラマだ。通っている生徒たちは不良だったりフィリピン人だったり起立性障害を抱えていたりと、年齢も境遇も様々。

 本作は、彼らと、将来を嘱望されていた惑星科学の研究者でありながら「やりたい実験がある」と、突如定時制高校に赴任してきた藤竹との交流を描く。

 第1話でフォーカスされたのは、2年生の柳田岳人(小林虎之介)。読み書きが苦手だった岳人は中学から不登校になったが、負のスパイラルから抜け出すべく東新宿定時制高校へ。1年生のときは真面目に通っていたものの、2年生になりやる気を失い、退学を考えるようになっていた。

 藤竹(窪田正孝)は、岳人の答案用紙を見て興味を示す。計算問題は複雑な連立方程式であっても全問正解。しかも途中式すら書かず、いきなり答えを書いてある。なのに、文章問題になるとすべて白紙。

 このことについて問われた岳人は、「文章を読むのが疲れる」「意味が入ってこない」とこぼした。提出しようとした退学届も、どこに自分の名前を書くのかわからない。一方で、藤竹が口頭で出した食塩水の濃度を問う問題にはすらすらと答えられる。

 この様子を見ていた藤竹は、彼がディスレクシアという学習障害である可能性を伝える。つまり、文字の読み書きに限定した困難が生じているということ。この障害の存在が明らかになったのは最近で、親や教師、本人も気付かずに大人になるケースが多かった、と藤竹は続ける。

岳人の涙の意味
 岳人は、この話を聞いて涙を流した。最初は自分が怠けていたわけでも努力が足りなかったわけでもないことに安堵した涙なのかと思った。

 だが、違った。岳人は悔しがっていた。なんでいままで誰も気づいてくれなかったのか。原因がわかっていたら、もっと対処できていたかもしれない。

 親から「努力が足りない」と言われることも、「不良品だ」と捨てられたおもちゃに自分を重ねることもなく、横目で眺めていたグループで歩く大学生たちのような生活を、自分だって送れていたかもしれないのだ。

 病名がつくと安心する、という話を聞いたことがあるが、そうとは限らないのだということに気付かされる。これまで犠牲にしてきてしまったものがあまりにも大きすぎて、安堵になんて全然至っていない。

 岳人はなくしたものは取り戻せない、知らないままのほうがよかった、とふさぎ込み、いよいよ学校に来なくなってしまう。でも、果たして本当にそうなのだろうか? 藤竹はしつこいくらいに岳人に電話をし、授業に来るように促す。まるで、岳人の本当の気持ちを見透かしているかのように。

 自分を麻薬の売人に誘う孔太(仲野温)がしびれを切らし、「学校に行くから」と留守電を残しているのを聞いた岳人は、しぶしぶ登校。すると、校庭をバイクで走り回り、ちょっとした騒ぎを起こしていた孔太の前に、藤竹が立ちはだかっていた。

 授業ができないから帰ってくれ、という藤竹に対し、すでに退学済の孔太は時間の無駄だと岳人を説得しようとする。藤竹は、「無駄にするかどうかは自分次第」「ここは諦めたものを取り戻す場所」と話す。この言葉が、岳人の心に届く。

 もともと、知識欲は旺盛だった岳人。だが、文字の読み書きが困難だったことで、自らその道を閉ざしてしまった。いまからでも、失ったものが取り戻せるかもしれない――これが、岳人にとってどれほどの希望になったことだろう。

小林虎之介の真摯な芝居
 その後、藤竹は岳人のかねてからの疑問だった「空はどうして青いのか?」を説明する実験を行う。教室につくられたささやかな青空を鼻で笑うが、岳人が興味を示しているのは明らかだった。

 たしかに、なくしたものを取り戻すことは難しい。岳人が10代の頃に過ごせていただろう学生生活は、もう戻ってこない。だけど、知りたかったことを学び直すチャンスはまだある。

 こぼれ落ちそうになっている生徒たちを、精神的にサポートしてすくい上げていく学園ものが多いなかで、『宙わたる教室』は一線を画しているように感じた。藤竹は、精神論を語らない。ただ、ここには学びたいと思う者が学べる場所があり、教師はそこで彼らを待っているのだと諭す。諦めたものを取り戻せるかどうかは、生徒自身の意志に委ねられている。

 主演を務める窪田ももちろんだが、岳人を演じる小林虎之介の、やや粗削りではあるが、だからこそ真摯さが伝わってくる芝居が印象的だった。同僚からひらがなだらけの文字を馬鹿にされたときの怒りと、ディスレクシアである可能性を伝えられたときの怒りが、まったく違う表現をしているようにも感じた。

 実年齢は26歳とのことだが、それよりもっとあどけなくも見えるのは、作中で彼が岳人として生きているからこそ。ひたむきで繊細な小林がつくる今後の岳人にも注目したい。

【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

あまのさき

https://news.yahoo.co.jp/articles/4fc09691efd23663f17214dd80ddce0102b4fe9c?page=1

「この様子を見ていた藤竹は、彼がディスレクシアという学習障害である可能性を伝える。つまり、文字の読み書きに限定した困難が生じているということ。この障害の存在が明らかになったのは最近で、親や教師、本人も気付かずに大人になるケースが多かった、と藤竹は続ける」

 小林虎之介さんが演じる柳田岳人が勉強が苦手だったのは、この学習障害によるものでした。以前、似たような症状で悩んでいる人をテレビで見ていたので何となくは知っていました。

 しかし、その時は「可哀想だな」と思っても、しばらくすれば忘れてしまいます。身近にそういう人がいない限り、そういう人の存在を忘れてしまうのです。

 おそらく、今こうしている時にもこの症状で悩んでいる人はいるのでしょう。そして身近に理解してくれる存在がいないとすれば、ただの「勉強が苦手な人」としてのレッテルを貼られるわけです。

 発達障害に関しては理解されるようになり、早期発見で対処する方法があるそうです。この症状が発達障害に分類されるのか、あるいは全く別の障害なのかはわかりませんが、広く周知されるきっかけになったこのドラマはすごいなと思いました。

「岳人は、この話を聞いて涙を流した。最初は自分が怠けていたわけでも努力が足りなかったわけでもないことに安堵した涙なのかと思った。だが、違った。岳人は悔しがっていた。なんでいままで誰も気づいてくれなかったのか。原因がわかっていたら、もっと対処できていたかもしれない。親から「努力が足りない」と言われることも、「不良品だ」と捨てられたおもちゃに自分を重ねることもなく、横目で眺めていたグループで歩く大学生たちのような生活を、自分だって送れていたかもしれないのだ」

 藤竹(窪田正孝)は、良かれと思い岳人に障害の事を話したのですが、彼の反応は意外なものでした。「知らない方が良かった」と言うのです。今日までの失われた時間を取り戻す事が出来ない現実が辛いからです。

 これを観ながら、自分もよく「良かれと思って」やっている言動が、その人にとっては良くない結果をもたらすかも知れないと思うと少し怖くなりました。

 でも、岳人にどんなに反発されても藤竹(窪田正孝)は動じる事なく、彼に関わろうとする姿を見て、自分も頑張ろうと勇気をもらいました。

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神野守
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