鶴の恩返し(眠れなくなる読み聞かせ 日本昔話)
ねえ、眠れないの? 心配事でもあるのかな。困ったね。じゃあさ、眠くなるように昔話してあげるね。
むかしむかし、貧しいけれど心の優しい、おじいさんとおばあさんがいました。へー、貧しいけれど心の優しいって、すごいね。普通さ、貧しかったら、心も荒んでくるよね。「同情するなら金をくれ!」って、ドラマ「家なき子」で安達祐実さんが言ってたもんね。
ところで、このおじいさんとおばあさんの夫婦仲はどうなんだろう? 「貧しいけれど心の優しい」という情報しかないからわからないけど、貧乏ってのは辛いよね。おばあさんにしてみれば、おじいさんの稼ぎが少ないって不満があるだろうし、おじいさんにしてみれば、パートにでも行って働いてくれと思っていたかも知れないよね。
でも、この時代のパートって何だろう? コンビニとかスーパーがあるわけじゃないしね。よその畑の手伝いに行くのかなあ。あるいは、庄屋さんところの孫の子守りとかかも知れない。実はその庄屋さんが、おばあさんの事を昔から好きだったなんて事も考えられるんじゃない?
庄屋さんはきっと、親の決めた結婚をしたんだろうね。だってさ、貧しい農家の娘さんとじゃ、親が許してくれないだろうからね。このおばあさん、なんとか小町って言われるくらい、綺麗な人だったんじゃないかな。だからきっと、庄屋さんにとっては初恋の人だったんだよ。
でも、庄屋さんの親は、隣村のお金持ちの家からお嫁さんをもらうって決めてたんだろうね。だから泣く泣く、おばあさんを諦めた……。もしかしたら、おばあさんの初恋の相手も、実は庄屋さんだったとしたらどうする? 二人は泣く泣く、別れたんだよ、きっと。
明日は結婚式って時に、庄屋さんはおばあさんを呼び出したんじゃないかな? ちょっと離れた裏山に。そこで、大きな木にもたれかかるおばあさんに壁ドンをして、まあ、この場合は木ドンになるけど。夕暮れ時、綺麗な夕焼けが二人を染めるんだよね。なんかロマンチックじゃない?
そして、しばらく見つめ合った後、おばあさんが目をつむると、庄屋さんはおばあさんに、優しくキスをしてあげたんじゃないかな。まあ、この時代の人は、濃厚なキスじゃないよね。遠慮がちにそっとしてあげたんだと思うよ。この時代と言っても、いつの時代なのかはよくわかんないけど。
それで、その二人の様子を離れたところから見ていた人がいたわけ。それが誰だと思う? そう、正解! それがおじいさんだったんだよね。おじいさんはおばあさんに片想いしていたんだよ。実らぬ恋だと諦めていたんだけど、庄屋さんに許嫁がいたって知って、がぜんやる気が出てきたってわけ。
庄屋さんと別れて、傷心のおばあさんに近づくおじいさん。この頃は、洒落たバーなんかないだろうから、どっか行きつけの、お酒を飲ませてくれるお店に行ったんだろうね。そこでおばあさんに優しく寄り添いながら、少しずつ距離を縮めていったんだよ。
この辺は、ただの優しい男って感じじゃないと思うんだよね。計算高いって言うか、顔はニコニコしながら、心の中ではドロドロしたものが渦巻いていたんじゃないかな。でもさ、そう言う方が人間らしくて良いと思わない? 「実は私、下衆な人間なんです」って言う方が、正直で好感持てるよね。
まあ、そんなおじいさんが山で鶴を助けて、その鶴が恩返しに来るって話なんだけど。どう? 眠くなった? それは良かった。じゃあ、おやすみなさい。