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【アカペラで歌ってみた】村下孝蔵「初恋」

村下孝蔵さんの「初恋」をアカペラで歌ってみました。

 この歌を元に書いた短編「思い出のグラウンド」は【切ない恋愛短編集 4】の38話になります。

 少しだけ作品を紹介します。

「ねえ、倉田さんはどうだったんですか?」
「えっ?」

 平日の昼時、既に大勢の客で賑わうファミリーレストランの店内。窓際の奥のテーブル席で、胡椒こしょうがかかり過ぎて辛いシーザーサラダを食べながら、篠崎美優しのざきみゆが話しかける。おしゃべりな彼女の話を聞き流していた倉田徹くらたとおるは戸惑ってしまう。

 確か、初恋の話だったような気がするんだけど……。

 時間をさかのぼって考えた結果、彼女が聞きたいのは僕の初恋だと、徹は結論づけた。

「ああ、僕はね、確か……」

 手にしていた箸を置き、腕組みをして上を向きながら考えてみる。恋に奥手の彼は、女性と話をする事すら得意ではない。美優のように気軽に話しかけてくれれば良いのだが、自分から女性に話しかける事はあまりない。

 身長が高く整った顔立ちで、頭も良くて運動神経も良い彼。モテないわけではない。今まで異性から告白される事も何度かあった。しかし、人間関係を築くのに時間がかかるため誤解される事も多く、来月には三十歳になるのに恋人すらいない。

 告白してくる相手が好みのタイプではないため仕方がないのだが、好きな相手に告白する勇気はない。そんな彼が、初恋と言われてすぐに思いつく人がいた。その人の姿を映像化するために、徹の意識は遠い過去に遡っていく。

 小学校時代から足に自信があった徹。中学では陸上部に入った。百、二百メートルの短距離走の他に、走り幅跳びの選手だった。同じグラウンドを使う野球部に比べ、個人競技のためか練習の内容は自分で決められた。

 全体練習を終え、百メートルを数本走った後、幅跳びの練習に向かう。と言っても、大体は仲の良い先輩や同級生と話をして過ごす事が多い。

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