見出し画像

【アカペラで歌ってみた】清水健太郎「失恋レストラン」

清水健太郎さんの「失恋レストラン」をアカペラで歌ってみました。

 この歌を元に書いた短編「魔法のカクテル」は【切ない恋愛短編集 8】の76話になります。

少しだけ作品を紹介します。

 とある土曜の夜。人との接触を避けるように、芳子よしこは路地裏を歩いていた。どこに行く当てがあるわけでもない。ただ歩きたい、ただ彷徨さまよいたい、そんな気持ちのまま、夢遊病者のように歩き続けていると、とある店に吸い寄せられるようにして入っていった。

「いらっしゃいませ」

 中年男性の声が店内に響く。芳子は彼に目もくれずにふらふらと歩き、窓際の奥のテーブル席に座る。店のマスターは水を注いだコップを届け、「ご注文が決まりましたらお呼びくださいませ」と言って立ち去った。

 それでも芳子は何の反応も見せず、窓の外の通行人を眺めている。生気のない顔はどこか青ざめていて、尋常ではない様子を物語っている。

「どうしたの?」

 隣のテーブルにいた田代たしろが声をかける。短髪で色黒、大きな団栗眼どんぐりまなこでニコニコと笑いかけている。突然の若い男の登場に戸惑いながらも、芳子は重い口を開く。

「彼氏に振られました……」

 大きな目を更に大きく開いたまま、田代の動きは固まってしまった。今まで片思いばかりで、恋愛経験がない彼には、彼女にかけるべき言葉が思いつかない。

 しばらく見つめ合っていると、彼女の心の奥底に閉じ込めていた感情が込み上げてきているのがわかった。それは大きな涙のかたまりとなって、彼女の切れ長の瞳から音を立てるかのようにボロンとこぼれ落ちた。

Amazon.co.jp: 切ない恋愛短編集 8 電子書籍: 神野守: Kindleストア


いいなと思ったら応援しよう!

神野守
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!