金子雄太という人生
俺は死んだのか?
俺、金子雄太は死んでしまったらしい。いつもの休日に子供らとショッピングモールへ出かけたとき背後から誰かに押されて乗ろうとしていたエスカレーターを踏み外し、そのまま頭を強打したようだ。
なんで俺なんだ!
俺はどんなやつよりも生きるに値する!
俺ほど人に愛されているやつなんかいやしない!
みんな俺が居なくなって悲しんでいる...
娘も息子も、妻も...
あああああああああ!!
なんで俺が死ななきゃいけないんだよ!
なんでだ!
なんで!!
なんでだよ!!
父さんや母さん、姉さんたちもみんな...
俺という存在が居なくなって悲しみに暮れてる!
なんてこった!
くそぉ!誰なんだ!?俺を殺したのは!?
「死を受け入れられない気持ちは分かるが、ここでは静かにしてもらいたいものだね」
なんだ?このおっさん...
「何でもない。強いていうなら、僕は裁判官さ」
え?俺いま喋って!?
「言葉を発せずとも分かるさ。さて、早速裁判を始めようか?金子雄太」
え!?裁判!?
「そうだ。君が今まで犯してきた罪をここで裁く。それがこの場所だよ」
え?ちょっ!待って!俺何も!
「小学生の頃、酷いイジメを行った。それも最初は言われるまま従っていたが次第に自分が主導権を持ってイジメを繰り返した。結果、被害者は精神崩壊」
俺イジメなんて...
「加害者はだいたいそう言う。次だ。
中学生の頃、知的障害のある同級生を肩に触れたという理由でテニスのラケットで撲殺。何食わぬ顔をしてその後も平穏な日々を過ごした」
...あれはアイツが.....
「高校生になると色欲が強くなり、手当たり次第に女性をレイプ。これは恐れ入ったよ。表向きは良い子の仮面をつけているから誰も疑わない。望まぬ妊娠を何人の女性に負わせた?」
同意...同意..
「往生際の悪い男だね?同意でどうして恨まれる?それにそれだけじゃないね?自分はモテる、愛されてるという根拠のない自信で周りの友人知人の女性にも手を出した。君を恨んでいるのは女性だけではない」
なんで...どうして...みんなやってんじゃん...
「みんなやってないよ?少なくとも君みたいなイかれた人種だけだよ。さて、ここからが本番」
は?まだ何かあんのかよ!?
「あるさ。
その後も遊び呆けて、ようやく介護士に合格し仕事に就くが入所者に度重なる暴力を振るう。さらにそれはご婦人にも...」
あ、あれは言うことを聞かないから...
「暴力はご婦人や入所者だけでなく家族にまで及んだ。生後間もない娘の鼻と口を塞いで殺しかけ、息子の右足を折ろうとした。だから殺されたんだよ君は」
え?...それってどういう...
「金子雄太、君は哀れな男だな。これが君の評価だ」
あいつ死んでくれてせいせいした
仕事もろくに出来ないくせに威張ってさ
気に食わないと暴力の最低な男さ
パパが居なくなって本当に良かった
パパはゴミだからいらなーい!
あなた。死んでくれてありがとう
金子雄太っていう男が死んでみんなが幸せですよ
.........
あああああああああああああああああああ!!
うそだ!嘘だ!
「嘘じゃないさ。金子雄太。君もまたやり過ぎた。まともに生きていくべきだった。それであれば一人くらいは君を好意的に観てくれたかもしてないね」
さあ、逝きたまえ。
終わりのない無限地獄へ。