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月下美人屋敷狂⑧

その声は確かに若い女性の声に聞こえた。薄暗い廊下の真ん中で私が恐る恐る振り返ると、そこにいたのは老婆と見間違えるほどの女性であった。その顔は、おそらく度重なる整形手術と何か不純物を取り込んだのか?顔の形が崩れた女性が、笑顔を浮かべて私の前に立っていた。手には何かが握られている。よく見えないが棍棒のようだ。

「あなた...静江さん..ですか?」

私は震え声で彼女に問う。すると彼女は少し顔を傾げながら

「お父さんのお知り合い?変ね...見た事ないけど?」

静江は、さも父親の知り合いでも見るような口ぶりだった。

「中臣はるかさんと白畑杏子さんはどこです!?他にも拉致監禁している子供たちがいるはずだ!」

私がそう声を張り上げると静江は静かな声で

「はるかちゃんとは今致してきたところなの...。言わなくても分かるでしょ? 杏子...あら、そんな子は知らないわね〜」

既に正気でないことは明白であった。私は身構えると静江は目を見開いて

「ああ、ひょっとしてさっき粉砕の機械に押し込んだあの子かしら!」

白畑杏子は既に殺害されていた。私は身の危険を感じ、咄嗟に走り出した。それを笑い声を発しながら静江が追いかけてくる。迷路のような地下道を私はパニックになりながら走った。そして少し空いているドアに気がつき、その部屋へ駆け込んだ。その部屋の中は蒸せ返るような熱気と異臭に包まれていた。よく見ると部屋の隅に何者かがいた。小さな蛍光灯だけが、その何者かを薄ら照らしていた。私は目を凝らして見ると中学生くらいの女子が全裸の状態で蹲っているではないか。片方だけおさげ髪が解けており、虚な目で私を見て爪を噛んでいる。もしやと思い

「中臣...はるかさん..かな?」

その問いにその子は一度だけ頷いた。そして小さな声で何かを言っている。上手く聞き取れない...しかし耳を澄ませたとき私は中臣はるかの悲しみが痛いほど伝わってきた。

「...ごめんなさいごめんなさい...私汚されちゃった...ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい.........」

おそらく精神が崩壊していたのだと思う。私は着ているジャケットを彼女にかけようとした。そのとき中臣はるかは突然

「うじろぉ!!うしr.....!」

振り返ると静江が邪悪な微笑みを浮かべて棍棒を振り上げていた。次の瞬間、静江は棍棒を振り下ろし私の意識は飛んだ。

その頃、機動捜査隊の浅井の指揮の元、多くの警察官が屋敷を取り囲んでいた。

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