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見える子

ミクさん(仮名)の話。
彼女には、特定の恋人はいないが性行為を同意しあった「エッチの練習相手」がいるという。その相手と関係を持つようになってからのミクさんの話である。

「セフレとは違うんですよ?なんて言うかな〜お互いに年齢差もあるけど、ほっとけないし、なんか自然にそういうことしちゃうんですよね」

至って明るくミクさんは語る。
その噂の彼というAさんは近所に住むサラリーマンで、彼と出会ったのはミクさんがまだ中学生の頃であったという。毎朝、同じ時間、同じバスに乗り合わせる若い男性という認識しかなかったそうだ。お互いになぜか目が合うことが多かったという。
そして関係が進んだのはミクさんが高校へ上がった直後、休みの日にたまたま彼と外で会ったことから関係を持つことになった。そしてその時から彼女の周囲で不慣れな出来事が度々見えるようになったそうだ。

「最初は死んだおばあちゃんが見えるようになって、そのあと戦争の時代の人とかお侍さん?みたいな人とかが見えるようになっちゃって」

彼女曰く、肉体関係を持った日から死んだ人が見えるようになったという。

「で、回数重ねて私も慣れて来たーって思った頃からかな?今度は声とか聞こえるようになっちゃって。彼に言うと!?みたいな顔されるんですけどね。でも何でなんだろ〜」

二人の関係が始まって既に2年が経ったと言う。今では霊が見えるのは当たり前になったというミクさん。彼女はあっけらかんと笑顔を見せて言う。

「まあ害はないですね。夜中に音とか見えちゃってドキッとするんだけど、それくらいかな。お化け?霊っていろいろな所にいるんですね。だって家の中だって知らない人とか普通にいますもん。この前なんかゲゲゲの鬼太郎に出てくるような妖怪?までいましたよ」

なんだか話を聞いていて少々、嘘臭く感じて来た時だった。

「お兄さんの後ろにもいるじゃないですか!なに?大きな白いシバ犬?...狼?...なんか凄いのいますよ?さっきから私のことジッと見てますよ。目逸らさないから怖い怖い」

彼女は明るく笑いながらそう言った。もしかしたらこの子は本当に見えているのかもしれないと思った。
ミクさんに本当に怖い思いはしたことないのか?と聞いてみると

「テレビみたいな事はなかったけど、彼の亡くなったお母さんかな?たまに彼の家の物陰とかで見るんですよ。あの人だけは苦手かな...子離れ出来ない人で凄く困ってたってボヤいてたなぁ。たぶん成仏とか出来てないんじゃないかな?まだ付き纏ってるんだ...って思うもん」

そう言うと彼女はお腹をさすり出したので、もしかしてと思い聞いてみると

「へへっ〜出来ちゃってます。もう半年くらいかな〜だからもう練習相手というか旦那さんなんです」

さすがにビックリした。

「親には凄い怒られたけど、産まなきゃ〜って思って。彼と必死に説得して、来年卒業したら籍入れます」

そしてミクさんは明るい笑顔を残して帰っていった。ちなみに彼女を紹介してきたのは、ミクさんの叔母で僕の恩師である。
彼女と彼と生まれてくる命が幸せに過ごせるよう祈るばかりである。

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