「なぜ」を問い続けて見えてきたこと
「think globally act locally」
キレッキレの発音で、そう答えてくれたのは、書くを楽しむコミュニティ「sentence」のインタビュー企画でペアとなった、宮坂千尋さん(みやさかちひろ)。
住んでる場所も、歩んできた道も正反対のインタビュアーとインタビュイー。でもどこか、親しみやすい雰囲気や物事に対して哲学的に考えるのは似ていたり、はじめましてというより、どこか昔に会ったことがあるような、懐かしさを感じながら、インタビューさせていただきました。
ちひろさんのこれまでの足跡
獨協大学言語文化学科に所属し、スペイン語を学ぶ。新卒で建設機械メーカーに入社。就職を機に、石川県に移住。
現在は、二児の母。育児とともにに、石川県にある無農薬・減農薬のお米を作る農家さんにて、販売・事務のパートをしている。その合間に、「エッセイスト、書評家になりたい!」と思い、noteやInstagramに投稿している。
ちひろさんの足跡を振り返ると、「海外」「スペイン語」「開発」など…難しいテーマに向き合ってきたように感じます。
今回は、ちひろさんが歩んできた足跡を、一緒に見に行くような感覚で読んでいただけたらと思います。
この記事は「書く」とともに生きる人たちのコミュニティsentenceのペアインタビュー企画に参加して書いたものです。
ー苦手な英語が楽しいに方向転換したきっかけは、意外な出来事だった
「 最初から海外とか英語がすごい好きだったわけではなくて、もう私中学生のとき、英語は超嫌いで…(笑)」
ローマ字とのギャップから英語に対して苦手意識が先行していたそう。苦手をワクワクに変えたのは、ある出来事がきっかけだったようです。そのきっかけについてちょっぴり恥ずかしそうに話してくれました。
「 中学2年生の時に、姉妹都市提携で学校に外国人が来る機会があって、単純な理由だけど、体育館の壇上で外国の男の子があいさつしているのを見て、めっちゃかっこいい!同い年にこんなかっこいい子がいるんや!と思って。英語を頑張ったら、かっこいい男の子と話せると思って、そこから英語に対してやる気が湧いてきた。(笑)」
そんなピュアすぎる理由が隠されていたとは…!!ここから、英語や海外が、ちひろさんの「なぜ」の種になっていきます。
ーコスタリカという国との出会い
「 高校生になっても、相変わらず海外が好きだった。そんなとき、コスタリカという国に興味を持った。」
コスタリカは、私たちにとって、あまり馴染みがない国のように思います。コスタリカに興味をもったきっかけは何だったのでしょうか。
「 そのとき世間では、『日本は憲法第9条で戦力不保持を掲げているのに、自衛隊を保持しているのは矛盾しているのでは』というような論争が巻き起こっていた。論争を耳にしているうち、漠然と平和について考えるようになって。そんなとき、コスタリカという国が、軍隊のない国と言われていると聞いて、どんな国なのだろうと興味を抱いた。」
ー特別ってなんだろう?
「 高校生のときから、外側の視点でコスタリカを軍隊のない国として見ていたけど、大学2年生のときに、コスタリカに訪れる機会があって、はじめて内側からコスタリカを見た。
そうすると、特別視をしているのは外側にいる人で、何も特別なことは存在していなかったことに気づいた。特別って自分が持っていなかったり、考えていなかったことだから感じるだけで、コスタリカの人たちは、ないものを認識していないだけだったなと。あと、コスタリカって中南米で一番教育水準も高くて、中米のスイスとも言われているぐらい治安が良くて、優等生のような国なんだけど、そういう国でもやっぱり、もちろん犯罪はあるし、貧富の差とかもある。
日本だとちょっと見えづらい部分があるんですけど、海外行くと結構それが、顕著に出てて。コスタリカに足を踏み入れたことによって、改めて、貧困とか人種について考えるきっかけになった。」
特別という感情を抱くのは、自分に持っていないものを相手が持っていたとき。そう考えると、特別ってそこまで特別ではないのかも。
ー自分にとって心地よいと思う距離感
「 新卒では、インフラ整備に関係している建設機械のメーカーに。その建設機械の会社は、大きい会社ですごくいい会社だった。だけど、働いてるうちに、同期と自分を比較して、劣等感にすごいさいなむみたいな時期が出てきて。『私いなくても別にいいよねとか、鬱々と何のために働いてんだっけ』と思うようになって、”自分は小さな小さな歯車だな”と。
海外で働きたいという気持ちをモチベーションにしていたけど、その時は結構しぼんでしまって。この会社で海外に行けても、多分私がやりたい感じじゃない、私がやりたい感じってなんだろうと考えるようになった。」
「 考えてみると、多分、単純に海外が好きで、海外に住みたかっただけなのかもしれない。そう考え出すと、働くモチベーションがすごい下がっていって…。
そんなときに、よく通っていた、石川県にあるフェアトレードのお店の風景が頭がよぎった。そのお店は、お客さんとの距離がすごく近くて、ステキなお店だった。ステキと感じたのは、私の中で、距離の近さが大事だからなのかなと。距離的な近さが、やっぱり心の近さみたいなので感じる。大きい会社で、大きい目標を達成するのもすごいと思うけど、私はどちらかというと、成し遂げたい目標の距離を近くしたい。取り組んでいる理由が視覚的に、体感的に見えた方が、自分がすごく納得するタイプで、私は心地がいいことに気づいた。それで、フェアトレードのお店で、8年間働きました。」
海外や社会問題に目を向けて「なぜ」を考えたり、時には、自分の心地さを求めて「なぜ」を問いてみたり、何事にも真正面から向き合ってきた、ちひろさん。今後、ちひろさんの中で、考えていきたいテーマが、何なのか気になります。
ー考え方はグローバルに、でも行動はローカルに
「 今は、いろんな人と簡単につながれるから、視点は広く持った方がいいなって思う。けど私っていうカードは、一つしかないし、動ける範囲は限られてるので、行動としてはローカルにする方が好ましいかなっていうふうには思っていて。今でもすごい海外が好きだけど、今はちょっと手元の方にも、目を向けていきたいなって思った。それで、今は農業法人で働いている。あとは、やっぱり書くのはすごい面白いなって思ってるので、インタビューは個人的にも趣味としてでもいいから、誰かにしていきたいな。いわゆるライターになるのか、日常のことを書き綴るエッセイストになりたいのか、自分の中でもまだ曖昧な段階ですが、試行錯誤しつつ、もう一つの軸足を作っていけたらなって考えています。」
「~らしい」
私の母の最近の口癖である。どこの情報源かわからないものを、「らしいよ」と伝えてくることが多くなった。自分も含め、目の前の情報に対してすぐ飲み込んじゃう癖があるなと思う。「なぜ」を問うのは、真相が見えてしまう怖さとそれなりの体力がいる。だが、ちひろさんへのインタビューを通して、「なぜ」と問うのは自分の心地よい場所を見つけるための手段なのかもしれないと思った。どんなに歳をとっても、「なぜ」と向き合える大人になりたい。