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【書評】死因究明などの推進及び全国の死因究明等推進協議会の状況について

「死因究明などの推進及び全国の死因究明等推進協議会の状況について」
内閣府死因究明等施策推進室,平成31(2018)年3月
担当:弘法大師

1.概要
 平成24年度に策定された「死因究明の推進等に関する法律」(時限立法)に基づいて、二年後の平成26年に決定された死因究明等推進計画(閣議決定)のもと、全国に死因究明等協議会が設置され、同協議会で行われた37都道府県を対象とした調査の内容とあらためて浮き彫りになった課題等をまとめたものである。

2.内容
 地方協議会に参加した都道府県ならびに協議会の構成員は次のとおりである。(画像省略)以上の通り、協議会においても参加した組織は地域差があり、各地方の実情を反映した一次データは記載されていなかった。なお、協議会で特に指摘されたものはつぎに挙げるものである。

[死亡時画像診断など]
○ 死体のCT撮影画像を適切に「読影」できる力量のある医師が不足している(施行する放射線技師が読影するのは医師法17条に抵触するため、放射線科医いいない場合読影はできない)。
○ 撮影・読影の「費用負担」が不明確で、病院や遺族負担になっていることも多い(診療放射線技師会が2017年度に出した報告書でも記載のこと)。
○ 解剖結果との照合など大学との連携方策について検討していきたい。
○ CTを遺体に用いることに病院現場で理解を得にくい場合の対応をどうするか(上記報告書にもアンケート調査の記載あり)。

[医師の検案]
○ 死因究明を担う人材の育成、研修について、効果的な取組を進める必要がある(検案書の質の問題、解剖結果との照合(検案医へのフィードバック)、県独自の臨床医などに対する研修など)。
○ 検案医のなり手が不足している地域が生じている(医師不足、検案医の高齢化。監察医制度がない地域はより顕著)。
○ 特定の医師に警察からの検案依頼が集中していることがある。
○ 検案の現場では深夜・休日対応など様々な課題がある。
[解剖・検査など(大学などによる)]
○ 解剖医や薬毒物検査の人員などが不足している。限られた解剖予算の下では、 解剖率が上げられない。
○ CTなどの検査機器のランニングコストが大きい。
○ 現状、公衆衛生の観点からの解剖が行いにくい状況にある。
→二つ目三つ目に関しては疑問の余地が残る…?

[大規模災害対策]
○ 多数の死者への対応を適切に行う体制づくり、事後、安全対策の検証ができる体制づくりが望ましい。
○ 歯科情報の様式の標準化、データベース化が大切だ。
→東日本大震災の教訓をいまだ生かせていない。

[死因究明で得られた情報の活用、遺族への説明]
○ 死因究明で得た情報をどう地域住民に還元していくか、再発防止をどうするか。
○ 遺族の相談に応じ、情報提供を行う窓口が必要ではないか(アクセス権の保証)。
→イギリスのコロナー制度では、上記に挙げた再発予防システムは稼働している。
 以上が協議会で議題に挙げられた主なものである。なお、平成31年度に予算計上された死
因究明制度の充実に向けた支援として次のようなものがあげられる。(画像省略) 個々の充実は一定程度みとめられるが、総合としての制作のレベルは著しく低い。

3.批評その他
 現場の意見などを内閣府が調査したという意味では、かなり画期的な資料といえる。しかしながら、依然として各省庁の縦割りが否めない政策が展開され続けているのは事実である。異状死死因究明支援事業要綱においても次のように示されているが、極めて愚かと言わざるを得ない。以下抜粋である。
都道府県知事が必要であると認めているものの、解剖体制が整っていないことにより解剖が極めて低い実施率にとどまっている現状にかんがみ、都道府県における死因 究明の取組に対して財政的支援を実施することにより、死因究明の体制づくりを推進することを目的とする。
研究でもすでに指摘している通り、解剖率の低さはマンパワーの不足と予算不足も大きな要因ではあるが、根本課題として体系的なシステムが存在しないことにある。この支援事業は各都道府県が行うべきとしているが、結局のところは都道府県と自治体警察・医師会に責任を丸投げしたに過ぎない。


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