![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157198071/rectangle_large_type_2_fb1b4174c947ba53b3b8144ec5b5af9b.png?width=1200)
HAMLET 2 #023 認めたくなかった姿
■コンテナのバルコニー部分
●洗濯物を干しているフランシスと鉢合わせするジム
「ジムくん!……今度は、マリアのところ?」
「はい。マリアさんに、メデューサの背中のこと、聞きたくて」
「あなたも、あの傷痕を見たのね」
「はい……」
「あまりマリアを刺激しないように、気を付けて」
「ありがとう、フランシスさん!!……それと、いつも家事をしてくれて、感謝しています」
「ウフフッ……こんなの、ただの年の功よ」
「フランシスさんは、なんでも、そつなくできて、素敵だなって思います」
「エッ……あ、ありがと。。
そっか。ジムくん、そんなふうに思ってくれてたんだ……」
「それって、意外ですか??」
「どうしたの??……今日のジムくんは、饒舌ね!」
「地球に来てから、いろいろあったから……だから心配していたんです。
フランシスさんのこと」
「いいのよ。私は、HAMLETで一度死んだ女だもの。
忙しくしていないと、生きているって感じが、しないの」
「でも、フランシスさんは、いろいろしてくれているのに、俺は、フランシスさんに、何も出来てない……」
「あ……もしかして、また、お母さんの胸が恋しくなった?」
「そっ、そんなつもりじゃ……」
●と言いつつ、フランシスの胸元を見ちゃうジム
「……ほら、行くんなら、早くマリアのところに行きなさい!」
「は、はいっ!……」
●揺り籠のほうへ向かうジム
●ジムを見送ったフランシス、意地の悪い自分を反省する。
「ハァッ……今の私、言い方キツかったかな?」
●ぽこっ、と、自分の頭を叩くフランシス。
「……ああ、もう、しっかりしろ、私!
うぅん……やっぱり私に、年下は無理か」
●揺り籠のほうを見て、少し恨み節
「どっちみち、相手がマリアじゃ、分が悪すぎね」
■揺り籠の中、マリアとコンタクトするジム
●イメージの世界で、マリアと対峙する
「マリアさん!!……マリアさん!!」
「KID!!……どうしたの??なんだか、凄く焦っているみたいね」
「マリアさん、背中見せてください!!」
●ちょっと乱暴に、マリアに向こうを向かせる。
●強引に、パイロットスーツのファスナーを降ろすジム
「あっ、もうっ……ヤダ、どうしちゃったの!?
●マリアの背中に、メデューサと同じ痕は見当たらない。怪しむジム。
「えっ……」
「イヤッ!?……なにすんのよっ!!」(ピシャッ)
●振り向きざまに、ジムにビンタを食らわせるマリア。
●吹っ飛びそうなビンタなのに、視線を外さず、マリアを見つめるジム
「な、なによ、なんなのよ、KID!!」
「マリアさん、隠してますね??」
「なんのことよ」
「メデューサと同じ傷痕が、マリアさんにも、あるはずです」
「あたしに、そんなものがあるわけ……」
「……」
「そっか……見ちゃったのね、あの子の傷痕を。
ええ、あるわよ。それも……もっと、もっと、生々しいのが、ね」
「やっぱり、そうだったんですね。メデューサに、それを伝えないと!!
彼女は、それで苦しんでいるんですよ!!」
「わかってる!!……わかってるわよ、そんなこと!!……でも、でも」
「!!」
●マリアの泣き顔に、ハッとするジム
「もうちょっと……もうちょっとだけ、ジムの憧れの、カッコイイお姉さんで、居たかったな」
「マリアさん……やっと、名前で呼んでくれた」
「あたしさ、最初にジムと繋がった時、メデューサに邪魔された時、ホントは全部思い出してた。自分の最期も、ちゃんと見ちゃったんだ」
「そうだったんですね……」
「でもさ、あんたが、最初にあたしと会った時のこと、覚えててくれて。
それで、その時から、あたしを気にいってくれてるのが、凄く嬉しくて。
だから、つい、あんたに甘えちゃった……」
●A-MAX CLEANER入隊前からの、マリアの記憶がジムに流れ込む。
「あたしはさ、女の群れから逃げてきたんだ。
顔採用とか、カラダで釣ったとか、さんざん言われてさ。
男に贔屓されてるって、同性から、やっかまれて、ばかりで。
すっごく、いやんなっちゃって!」
●A-MAX CLEANER入隊直後、ボロボロになりながら隊員になっていくマリア
●髪の色は、今のメデューサと同じ。
●目の色はマリアと同じで、メデューサとは別。
「男ばかりのCLEANERに入って、ズタズタになって、ボロボロになって。
何日もシャワーも浴びれなくて、下着も替えられなくて。
自分が女だってことを忘れるまで、必死で作戦に打ち込んで。
そしたら、周りがやっと、自分を仲間だって認めてくれた」
●JAM MAKERの隊員として、打ち解けた感じのマリア達
「何度もマシンを壊したけど、それじゃあダメだと思って、自前でカスタムして、修理も出来るようになって、やっと少し、自信がついた」
●髪を赤く染め、ジムの知るマリアの姿になった。
「暫くして、初めて『女』を出したまま、戦いに出れるようになったんだ。
まぁ、ガサツなあたしの、出来上がりだね。それまでに3年掛かったの」
●シミュレーターから出て来るジムと、最初に会った時のシーン(振り返り)
「だから、ジムが見てくれたのは、あたしのピークの姿だってこと。
あんたは、そんなあたしに見惚れてくれた。一緒に戦った。一緒に勝った。
そして、あんたは今も、生き延びてる。それが、とっても嬉しい……」
「俺が生き延びていられるのは、マリアさんのおかげです……」
●殊勝なジムを覗き込んで、微笑むマリア
「ジムは、あたしが育てた!……そう言って、自慢していい??」
「いいですよ!……誇れる後輩かは、微妙ですけど」
「ウフフッ……BOSSが常勝コンビと言うほどだから、誇っていいんだよ!」
●ジムを見るマリアの目が、うるんでいる
「あんたを助けて良かった……フランシスたちのこと守ってくれたんだね」
「俺は、あの二人しか、助けられなかった。マリアさんだったら、もっと他の人も、守れたかもしれないのに」
「それは、買いかぶりすぎよ」
「俺がスマイリーと戦うべきだったんだ。
あの時、俺が勝負をしていたら……」
●ジムの前から、スマイリーとマリアの機体が姿を消すシーン
「それは違うよ。マークは、あたしが決着を付けなきゃダメだったんだ。
あいつ、お調子者で、ヒトを乗せるのが上手くて、からかうのが上手くて。
あたしのことも、さんざんイジりやがってさ。おしおきが必要だったんだ。
ゾンビになってまで襲ってくるなんて、見てらんなかったし……」
「……でも、それでマリアさんは、背中に」
「言わないでよ。思い出しちゃったじゃない。
……ずっと、見ないふり、してたのにさ。
HAMLETから助け出されて、機械に繋がれて。
自分が治療を受けるのを、ずっと見てた。
最初は、自分が助かると思って、嬉しかった。
……でも、背中の様子を見た瞬間、
『こんなの、あたしじゃない!!』って、全力で拒んだ。
……そしたら、あたしが見ている前で、あの子が目を開けた」
「それで、メデューサが生まれたんですね」
「あたしは、あの子に背中の傷痕を背負わせた。
それで、自分は過去に逃げ込んだ。
あたしは……あたしは、卑怯者なんだよ」
「違います!!違いますよ!!……マリアさんは、そんな人じゃない!!」
●ジムの言葉に、救われているマリア
「ジム……あんたって子は、どこまで優しいのよ。
その優しさは、毒よ。
あたしみたいな女には、麻痺どころか、致死性の毒だわ」
「えっ??」
「将来、年増女や訳アリ女に気を付けなさい。深入りされたら、厄介よ」
「……」
「あははっ!……今は、あたしが一番の訳アリ女だね。
あんたに、こんなに深入りさせてるし」
「ぁ……」
●マリアは自嘲気味に笑い、ジムを抱き寄せる。ジムが囁く。
「ねえ、マリアさん。その傷痕、見せて貰っても、いいですか??」
「しようがないね……気を失わないでよ」
●そっとパイロットスーツを脱ぐマリア。
●真新しい、焼けて腫れあがり皮膚がめくれ、無残な彼女の背中が露わに。
「あたしの機は、駆動系も燃料系も背負うからさ。それで、この有様よ」
「こんな……俺を守るために、こんな……」
「あたしもさ、こんなになるなんて、思ってもみなかったよ。
……とっても、痛くて、熱くて、辛くて、しんどくて。
覚悟を決めたはずなのに、やたらと後悔しちゃって」
「ごめんなさい、ごめんなさい、マリアさん……」
「あんたが謝ることじゃ、ないよ。
あたしは、最期まで、かっこいい先輩としてHAMLETで死にたかったのに。
どうして、すんなり死なせて貰えなかったんだろうね」
「そんな……マリアさんまで、死にたがらないでくださいよ。
俺、どうしていいか……」
●ジムの涙を、背中で感じるマリア
「ジム……あたしのために、泣いてくれてるの??」
「だって……俺は、無力です」
「違うよ。だって、あんたは、あたしもメデューサも癒してくれた。
今も、あたしの心から、離れないで居てくれる。無力なんかじゃ、ない。
……おかげで、やっと、やるべきことを思い出したよ」
「やるべきこと??」
「あたしの記憶は、この機械の記憶は、事件の記録として扱われる。
A-MAX FACTORIESの悪行は、あたしの記憶と共に、裁かれることになる」
「それじゃあ……」
「あんたの記憶も、証言も、全部まとめて、奴らを裁く材料になるのさ!!
……これで、あたしも、報われる」
「ああ……」
「ジム……あんたはさ、あたしを、最後に好きになってくれた男(ヒト)。
あたしに、最後に惚れてた男。だから、あんたは、あたしの最後の男……」
「マリアさんも、俺にとって、特別な女(ヒト)です。
マリアさんは、名前通りの、俺の……」
「バカね。そんなの、誰かさんが聞いたら、発狂して乗り込んでくるよ」
「……」
「でも、すっごく嬉しい。……愛してるよ、ジム」
--暗転。
#023 認めたくなかった姿、了。
![](https://assets.st-note.com/img/1728375065-S1e3AWvwZMLklN5FKXtucD7z.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1728374411-O0ZFkGdL7ioz4gf15avjM3JE.png?width=1200)
※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。