HAMLET 2 #015 つかの間の日常
■ロシア エリゾヴォ地方
ペトロパブロフスク・カムチャツキー空港、近接施設
●検査装置の中で、生体検査を受けているメデューサのシルエット。
●白髪というか、長い銀髪が体のラインを隠していて、詳細が分からない。
●その背後で、ロシア本国との通信の内容が流れる。
「こちらヒグマ。コウノトリへ連絡。クラゲの様子はどうだ?」
「クラゲ本体は落ち着いている。移植部位への拒絶反応も無い。
但し、揺り籠に乗せると、感情が悪化する。それは変わらない」
「例の施設での情報は、取れそうにないか?」
「今は無理だ。だが、明らかに揺り籠は、緩衝地帯に反応している」
「異邦人か。我々が直接手を下すのは避けたいのだが」
「そのために、私たちをここまで送ったのでしょう?」
「察しのいい部下は、嫌いではない」
●検査終了を知らせる機械アナウンス。
「定期検査は終了しました。新たな異常は見つかりませんでした」
●目を開くメデューサ。顔はマリアだが、瞳の色が明らかに違う。
●諦めと恨みの籠った感じで、吐き捨てる。声も別人だ。
「こんな検査に、なんの意味がある?
異常がないなら、早く出撃させてほしいものだ。傷が疼く」
--場面転換
■北海道のどこか
●UNロゴの入ったコンテナを、家に改造しているジム。
●コンテナの開口部を改造し、テラスのように広げてある。
●そこにワイヤーを張り、洗濯物を干しているフランシス。
●接続された別コンテナは、開口部を下げ、そこからドラム缶風呂に入れる
●ドラム缶風呂から抜き取った薪を燃やし、脇で料理をしているメアリー。
※以下、ジムのモノローグ。
俺たちは、国連からの支援物資を追って、北海道の奥まで進んでいた。
驚いたことに、たどり着いた日本は、自然の楽園だった。
居なくなって100年も経たないのに、自然は、人間の痕跡を消していた。
まるで、手つかずのような自然。
釣りと採集だけで、3人なら充分に暮らしていける。
そう、本当に、ここは楽園だった。
俺たちは、英国での悲しい思い出を、自然の中で癒していった。
■コンテナの上部に、銃を設置しているジム
●コンテナの天井に上がり、銃を設置。あたりを双眼鏡で見渡す。
●今のところ、敵の侵入も、天気の急変もなさそうだ。
※以下、ジムのモノローグ。
ここは平和だ。
最初の時こそ、何処かの観測気球かドローンのようなものが飛んできたが、こちらが攻撃もしないでいると、そのまま彼方に飛んで行った。
今の俺たちは、戦いなんか望んでいない。
どうか、このままの幸せが、ずっと続いて欲しい。
●階下から、食事の用意が出来たと知らせるメアリー。
「ジム~!お姉ちゃん!……ご飯できたよ~!」
■コンテナでの3人の生活
●3人揃っての食事。地場のキノコと野菜の水炊きのようなもの。
「ねぇ、ジム。お味はどう??」
「うん、悪くない」
「何よ、それ~!」
「いや、もう、素材の旨味が活きてる」
「感想が、あっさりしすぎ!」
「味も、あっさりしてるんだよ」
●フランシスが、茶々を入れる
「うふふっ!……メアリーが胃袋を掴めるようになるまで、まだまだ努力が必要ね!」
「なんでなんで~!子供の頃は、男の子はみんな、お姉ちゃんなんかスッ飛ばして、あたしに夢中になったのに、今は、なんで、こうなるの??」
「さあ、なんでかしらね」(余裕)
●ジムが、分かりやすくメアリーを乗せる
「メアリーは、そばに居てくれるだけで充分だよ!
でも、お姉さんから盗めるところは、しっかり盗んでね!」
「ほんとっ!?……えへへっ……ふふふっ♪」
●喜ぶメアリーの裏で、目くばせするジムとフランシス。
--場面転換
●ジムが風呂が沸いたことを知らせ、一番風呂を取るメアリー
「お二人さん!お風呂の用意が出来ましたよ~!」
「じゃあ、今日は、あたしが一番~♪」
●お風呂にダイブする効果音
■ドラム缶風呂に入るメアリー
●お風呂でご機嫌のメアリー
「ふんふんふ~ん♪……」
--場面転換
■ペトロパブロフスク・カムチャツキー空港
●滑走路へ入っていく大型輸送機
●滑走路を滑るように走り、離陸する輸送機。
●その背後で、ロシア本国との通信の内容が流れる。
「ヒグマからコウノトリへ。クラゲを泳がせよう」
「決断に感謝する。我々は、その後、何処まで干渉する?」
「愚問だ。事故で、貨物が干渉地域に落ちただけだ」
「承知した。クラゲには単独行動と伝える」
「龍(中国)を刺激しないように、航路は慎重に進め」
「了解」
--場面転換
■ドラム缶風呂に入るフランシス。
●お風呂でリラックスするフランシス。大人のしっとり感
■その裏でジムと過ごすメアリー。
●ジムの腕枕で横になったメアリー、二人で月を眺めている。
●美しいオーロラと、不気味な空振。そして大きな月
「毎晩、星空がとっても綺麗だね」
「うん。でも、この地響きみたいな音だけが、不気味で邪魔ね」
「なんにでも、邪魔者は付き物さ」
「ジムには、あたしは邪魔じゃない??」
「なんで、メアリーが邪魔なのさ」
「それは……」
●言ってる意味わかるでしょ?と、拗ねた感じの顔をするメアリー。
「バカだなぁ……考えすぎだって」
「だって、あたし、バカだもん……」
「そんな顔してると、月のお姫様が台無しだぞ」
「うん。でも……」
「ご覧よ。今夜は特に、月が綺麗だ」
●二人で、しばらく月を眺める。
「あたし、あそこに居たんだ」
「そうだね」
「あそこから、ここまで降りて来たんだ」
「うん。俺と一緒に、ね」
「かぐや姫なんだ、あたし」
「そんなお話も、あったね」
「あたしね、ナカモトさんのライブラリで日本のアニメをいっぱい観たの。
そのなかで、かぐや姫のお話が、一番好き」
「そうなんだ。メアリーの立場に似ているから、かな??」
「とっても絵が綺麗で、でも、最初はお話の意味がぜんぜん分からなくて。
そしたら、KIDが解説動画を見つけて、一緒に観てくれたんだ」
「そっか。KIDは俺より紳士だな、AIのくせに」
「でも、KIDには触れないから……」
●そういって、ジムのことを愛おしそうに見るメアリー。
「こうやって、ジムに腕枕してもらうの。あたし、大好き」
「そんなふうに言われたら、二度と断れないじゃないか」
「うふふふふっ♪」
■近づいていた、ロシアの大型輸送機
●大型輸送機の音。ステルスモードでも、接近してきて音が分かる
●ジムが、近づいてくる大型輸送機の機影に気づく。
「ん??……なんだ、あれは!?」
■12面ダイスのような巨大ブロックが、ジム達に迫る
●大型輸送機、彼方でハッチを開き、12面ダイス状のブロックを落とす。
●大型輸送機、ジム達の上を、そのまま静穏モードで通過。
●12面ダイスのようなブロック、転がって、ジム達のほうへ。
●ブロックが転がるごとに、地震のように地面が揺れる。
●12面ダイスの中、歯を食いしばって耐えている、コクピットのメデューサ
●ドラム缶風呂に入ったままのフランシス、揺れに慌てる。
●ドラム缶風呂、揺れで倒れる。フランシス、裸のまま投げ出される。
■AIが危機を察知。グリフォンのジェネレータが起動する
●AIが、ジムに搭乗を呼びかける。
「熱源を検知!危機が進行中!パイロットは直ちに搭乗してください!」
「わかった!…メアリー、コンテナに避難して!」
「うんっ!」
■グリフォンに乗り込むジム。コンバットモードに自動変形。
●AIからの動作制限通知。緊急起動の為、ジェネレータが定格を出せない。
「緊急モードで起動中。最初の15分の出力は、定格の37%に制限されます」
「とはいえ、ここで戦闘を長引かせるのも……んっ??」
■12面ダイスが展開していく。
●ドラム缶風呂から投げ出されたフランシスを気遣うジム。
「フランシスさん、早くコンテナへ!戦闘になりそうです!」
●全裸でコンテナへ向かうフランシスを、グリフォンのカメラが捉える
●ちゃっかり、カメラをズームしちゃうジム
■12面ダイスの展開完了。中の大型VF風メカ「揺り籠」が登場
●揺り籠、手足が展開して戦闘スタイルに。グリフォンと対峙
●コクピット内のメデューサ、ジムに宣戦布告
「自分はメデューサ。ジム・ビリントン!故あって、貴様を倒す!!」
■揺り籠の中のメデューサのアップ。
※顔と髪型は前作のマリア・ハンスフィールドのままだが、髪色は銀髪になり、瞳の色が違う。声も別人のものに。
(この時点では、ジムは彼女の顔を見ていないので、分かるのは視聴者だけ)
#015 つかの間の日常、了。
■新規登場人物紹介
●メデューサ
もちろん前作のマリアなんですが、人格と声、髪色が異なっています。
(髪は前作でも染めている設定です。銀髪は地か、ロシアでの影響か?不明)
ロシア語の〈Медуза〉[ミドゥーザ]はクラゲを意味するのだそうで。マリア同様、想定年齢は26歳(前作+1歳)です。 実は、フランシスの1つ下です。
※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。