HAMLET 2 #027 不思議な木の実
※年末のご挨拶にかえて
皆さま、いつも本作をお読みくださり、大変にありがとうございます。
おかげさまで、書き続けるモチベーションを保ったまま年を越えそうです。
これもひとえに、お読みいただいた皆様、スキをしていただいた皆様、
コメントをお寄せいただいた方のおかげです。
皆さまが、本年を滞りなく、また新年を憂いなく過ごされますことを、衷心より念願する次第です。
年内の更新は、今話が最後となります。
新年は1月2日(木)より更新させていただきます。
今後とも、よろしくお願いいたします。m(__)m
■ベッドで眠ていたメアリー。目を開ける。
●3人がメアリーを囲むようにして見守っている。フランシスが口火を切る
「メアリー、あなた、大丈夫なの??」
「うん……心配かけて、ゴメンなさい……」
「あなた、2日も眠り続けていたのよ。その前は、3日も行方不明で……。
いったい、何処で何をしていたの!?」
「うん……あのね、ここのすぐ近くで、白いお馬さんを見つけたの。
それが、あたしを呼んでいるような気がして……。
近づいたら、背中に乗せてくれて。
それで、気付いたら、ビュンビュン遠くに走っていって……」
●白い馬など、他のメンバーは一度も見たことが無いようす。
「白い馬??」
「このへんで、そんなの見かけたかなぁ……」
「自分は、馬と言うものを見たことは無い」
「ホントだってば……」
「確かに、メアリーを見つけた場所は、ここからとても遠い。
三日間歩き続けたとしても、とても辿り着ける場所ではない」
「これは、メアリーのいうことを信じるしか無いようだね」
「それで、あなた食料も持たずに、よく三日も平気だったわね」
「うん。それは大丈夫だよ。鳥さんもリスさんも、お猿さんも、あたしの為に、食べ物を運んできてくれたの」
「へえっ……まるでメルヘンの世界みたいだ」
「ジム、信じてくれないの??」
「いや、疑っているわけじゃないけど……さっきから、まるで、おとぎ話のようだと思って」
「………」
●フランシス、メアリーの言葉に、終始思案げ。
●メアリーの話は、先程までの夢の中の、メイビル博士の話に合っている。
「メアリー、あなた、木に登ったのね?」
「えっ、な、なんで分かるの??」
「さっきまで、夢を見てたの。そこで知ったわ」
「うん。あたし、その木から落ちちゃったんだ……」
●フランシスは、メイビル博士から聞いたとは言わない。
「そういえばね、メイビル博士の声がしていたの。
あたしが独りでいた時、何度も励ましてくれたんだ」
「!!」
●メアリーの言葉に、あれがただの夢では無かったと確信するフランシス。
「博士ね、きっと天国から見守ってくれてると思うの」
「フフッ……」
●天国という言葉に、思わず苦笑してしまうフランシス。
「メイビル博士ってさぁ、意外と優しいんだよね。
お姉ちゃんが研究室に勤める前に、挨拶に来たよね。
あの時に話したのと、同じ感じがした」
「そうよ。人間でいた頃、あの人は、とっても優しい人だったわ」
●ちょっと遠い目をするフランシス。そんな彼女の顔を見ているジム。
(ぐるるるる)
「あ……」(照れ)
●メアリーの腹の虫が鳴る。メアリー、恥ずかしがる。
「お腹が空いているのは、元気な証拠ね」
「ねぇ。あたし、あの木の実が食べたい!
あれ、とっても美味しいんだよ!
ねぇ、メデューサさん。
あたしの周りに、いっぱい木の実が落ちていたでしょう?
あれ、取ってきてくれないかな?」
「わかった。取りに行ってくる。ジム、グリフォンを借りるぞ」
「ああ!」
●メデューサ、部屋を出ていく。
●メアリーとジムが話し始める。
「でも、助けに来てくれたのが、メデューサさんだったのは驚いたなぁ。
あたし、絶対にジムが来てくれると思ったのに……」
「俺も、ずっと探していたんだよ。
でも、グリフォンで飛び出したのは、メデューサのほうが先だった。
それだけ、彼女がメアリーのことを心配していたのさ」
●メアリーの様子に安心したフランシス。ジムを残し部屋を出ていく。
「メデューサさんは、お友達だもん」
「二人、仲良くしてたよね?」
「いろいろ、お話したんだ……それで、ジムにも迷惑かけちゃったよね」
「なんのことだい??」
「ジムに苗字をオネダリしたでしょう?あれ、あたしの入れ知恵なの」
「ああ……そんなことだろうと思ったよ」
「メデューサさん、ホントに何も知らないから……どうしたら苗字が手に入るかって聞いてきて、『男の人と家族になれば、その人の苗字が貰えるよ』って言ったら、あんなことに……」
「まあ、メアリーの説明は、ウソじゃないよな」
「ゴメンね。それで大変だったでしょう?
お姉ちゃんの怒鳴り声、あたしの部屋まで聞こえてきたよ」
「うん……フランシスさんには、だいぶ絞られたよ」
●ジム、困り顔。
「お姉ちゃんがジムを怒るなんて、よっほどだよ。
それだけ、癇に障ったんだね」
「フランシスさん、怒らせると怖いんだよなぁ……」
「うふふふっ♪」
●洗濯物を畳んでいるフランシスが、クシャミをするシーン、カットイン。
「くしゅん!!……」
--時間経過のフェードアウト・フェードイン等。
■食堂。メアリーだけ巨木の実を食べている。
●メアリーは、がっついていて、行儀が悪い。
●テーブルに、沢山の巨木の実が並べられている。熟れたのも未熟なのも。
●フランシスが、メアリーを諫める。他の2人は、その実に興味を持つ。
「ちょっと、メアリー!……いくらなんでも、お行儀が悪いわよ!」
「だってぇ……これを食べてると、つい……」
「それ、そんなに美味しいの??」
「うんっ!ジムも食べてみる??」
「自分も食べてみたい」
「じゃあ、私も……」
●みんなで巨木の実を食べる
「いっただきまーすっ!!」
……もぐもぐ。
……!!!……
「な、なにこれ、木の実の味なんかじゃ、ない!」
「ホントだ、ちゃんとした料理の味がする!」
「そうか??……自分には、塩と油と、砂糖の味しか、しないのだが」
「えぇ~っ!それはメデューサさんがオカシイよぉ」
●改めて、巨木の実を味わう一同。
「うん。イギリスで食べたサンドイッチの味がするわ」
「俺には、祖母ちゃんの作ったミートパイの味に感じるんだけど」
「言われてみれば、前に皆と食べた、焼いた肉の味がしてきた」
「あたしには、お父さんが焼いてくれたピザの味がするんだけど……」
●みな、巨木の実のことを怪しみだす。
「ちょっと待って!
……みんなで同じものを食べて、なんでこんなに味の評価が違うの?」
「そういえば、これって木の実だものな。果物やスイーツの味に近いなら分かるけど、サンドイッチや肉のように感じるのは、おかしい」
「でも、美味しければ、どうでもいいじゃない」
「だんだん、ベリーの味がしてきた。そこらへんにある、野生のベリーだ」
「私には、プディングの味が……」
「俺には、クッキーの味がしてきた」
「ん~……なんで、こんなことになるんだろう??」
●フランシスが、状況の共通点から、仮説を導く。
「これは……過去の記憶に、左右されているのかもしれない……」
「どういうこと、フランシスさん?」
「この木の実は、食べた人の食事の記憶を、呼び起こすのかもしれない。
特定の味があるんじゃなくて、食事の記憶から味の再現をしている。
そんな気がする」
「言われてみれば、昔好きだった食べ物や、気になっていた食べ物の味だ」
「自分には、あまり食べ物の記憶がない。
だから、皆のような味を感じないのだな」
「美味しければ、仕組みなんて、どうでもいいよ。
だって、美味しいものを食べていれば、幸せじゃない?」
●そういいながら、相変わらずガツガツ食べるメアリー。ジムが弄る。
「メアリー、そんなに食べると、太るぞ!」
「余計なお世話ですよ~だ!」
●実を食べ続ける3人。
●気が付くと、テーブルの木の実は、全部なくなっている。
「あ~、美味しかった!」
「あっという間に、食べ尽くしちゃったね」
「自分は、食事が楽しいと思ったのは、これが初めてだ」
「不思議な木の実だわ。まるで、人間に食べられる為にあるみたい」
「多彩な食事の記憶があるのは、人間くらいですからね」
「考えてみると、変な話よ。
人間が居なくなって久しいこの地に、こんな実ができるなんて」
「そうですね……まるで、俺たちに見つけてほしかったみたいだ」
●メアリーが、皆で巨木の場所に行こうと提案する。
「ねえ、みんなで巨木のところに行かない??
もぎたては、もっと美味しいよ!」
「そうね……その木がどんなものか、私も気になるわ」
「まるでピクニックだね。楽しそうだ」
「アサルトモードのグリフォンなら、二人は腕に掴まればいいだろう」
「よし、早速、明日の朝に行ってみよう!!」
-フェードアウト
#027 不思議な木の実、了。
※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。