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HAMLET 2 #011 限界

■ベースに戻るグリフォン

●敵を攻撃しつつ、ナカモトの城へ。接近すると、地下へのゲートが開く。
●レーダー誘導で、オートでベースへ入っていくグリフォン。
●コクピットから出、ガンナーシートのフランシスをエスコートするジム。
●メアリーと抱き合うフランシス。すぐ近くで、微笑ましく見守るジム。

「お姉ちゃん!」
「メアリー!」
「無事で良かった……」
「メアリー、あなた、歩けるの?」
「うん。このスーツがあれば、平気なんだ」
「そう、ナカモトさんのおかげね」

●グリフォン、コンバットモードへ自動変形。ドックへ固定される。
※ゲームならば、ここで換装するバックパックを選択。
●選択したバックパックが、換装されようとしている。

■A-MAX FACTORIESの核攻撃

●AIの警告が、ベース内に響く。

「警告!衝撃に備えてください!」

●大きな爆発音と、強い地震。
●女性二人に、タックルされるような形で体重を浴びせられるジム。

「きゃっ!!」
「あぁぁっ!?」
「うっ!!……くぁっ……」
「ご、ゴメン、ジム」
「大丈夫、ジムさん」
「うぅ……現在の状況は?」
「解析中……解析中……(警告音)
解析結果から、最適と思われる推論を申し上げます。
今、地上に出ることは、お勧めできません」
「どういうこと??」
「外には、みんながいるのに!」
「もう少し、具体的に話してくれ!」
「先ほどまでの、モニターカメラの映像です」

●城のモニターカメラ、戦術核の炸裂を捉えて、爆風を受けて途切れる。

「こ、これって…」
「!!……」
「これじゃあ、地上は……」

●絶句するメアリーとフランシス。ジムが怒りをあらわに。AIが状況説明。

「やりやがった……AMFの奴ら、とうとう、やりやがった……」
「地上のセンサーシステム、応答なし。
レーダー設備、応答なし。生命反応、検出不能。
状況から、電離層に、広範囲で異常が発生している模様です」
「予想される被害状況は?」
「計算不能。未知の変数が多すぎます」
「これから、どうすればいいの?」

●メアリーが、ストレートにAIに問いかける。

「しばらく、このベースに留まることをお勧めします。
備蓄リストによれば、3人が半年程度籠れるだけの物品は、揃っています」
「おじさまは、核戦争にも備えていたのね」
「このベースも、武器も、食料も電源も、ご自身で使うためのものでした。
あなた方のために、最近になって女性用の品も、あえて集めたようです。
この状況は、あくまで偶発的なものです。
ここに居た、あなた方は幸運です」

●AIの答えに、フランシスは嘆く。

「この状況が、幸運だなんて、馬鹿げてる」
「お姉ちゃん……」
「とにかく、今はここに留まろう。みんな、必要なものを集めてくれ」

■孤独を感じるメアリー

●3人が揃った、無言の食卓
●メアリーの視点で、沈痛な面持ちのジムとフランシスを追う。
●テーブルの上のレーションブロックに、誰も手を付けようとしない。
●仕方なく、自分のぶんのレーションを持ち、部屋に戻るメアリー。
●一人きりの部屋。薄明りの中、レーションブロックを食べるメアリー。

※以下、メアリーのモノローグ。

それからは、灰色の日々が続いたの。何日も何日も。
ジムもお姉ちゃんも、いつも暗い顔をしていた。
あたしも、どう声をかけていいか、わからなかった。
だんだん、みんな部屋に籠るようになった。
日にちも時間も、感覚がなくなっていってしまったの。

だぶん、このあたりで生きているのは、あたしたち3人だけ。
優しかった、おばあちゃまも、もう居ない。
心強いナカモトさんも、もう居ない。
セバスチャンさんも、クラークさんたちも、きっと、もう……。
寂しくても、涙が出てこない時もあったの。

■憔悴するフランシス

●フランシスのシャワーシーン。
●鏡に、ドクターの姿が映って見える。
●ハッ、と振り返り、当たり前のように誰もいないのにショックを受ける。
●涙が溢れ、泣いている感覚も無いまま、零れ落ちる。
●流れ落ちる涙を、シャワーで誤魔化そうと浴びるフランシス。
●シャワーが、自動的に止まる。AIが説明する。

「生活用水が貴重な為、シャワーの出水は、制限されています」

●イラついて、ガン、と壁を殴るフランシス。その拳の、血が滲むイメージ
●よくよく自分の手を見ると、ベットリと、血塗られているように見える。
●血塗られたフランシスの手。血塗られたフランシスの体。
●ゾンビのように腐り、血で汚れた、フランシスの体の幻が、鏡に映る。
●声にならない叫び。
●ショックを受け、顔を覆い、その場に、へたり込むフランシス。嗚咽。

※以下、フランシスのモノローグ。

私には、死神が取り憑いていた。
そう。私は、HAMLETに居たときから、ずっと死神と一緒だった。
死神は、これ見よがしに、私を追い詰めた。
鏡を見れば鏡に現れ、夢を見れば夢に現れ……。
私の傍には、いつも、ずっと死神がいた。
いつしか私は、死神と一心同体になった。

■母の夢に苛まれるジム

●亡き母の夢を見るジム。
●暗闇の中、母を探す、子供のころのジム。
●暗闇の中、ジムを呼ぶ母の声だけが響く。

「……ジェイミー……ジェイミー」
「お母さんっ!……お母さんっ!……何処に居るの??」
「ここよ……ジェイミー……ジェイミー」

●母の姿を追う、子供のころのジム。
●母の手を、やっとのことで掴むジム。
●母の手が、腕が、顔が、姿が、サッ、と砂のように崩れていく。

「母さんっ!!」
「ゆ、夢、か……」

●夢から覚め、飛び起きるジム。

※以下、ジムのモノローグ。

限界だった。
すぐに、心が保たなくなった。
一人きりでは、ない。
メアリーも、フランシスさんも居る。
だけど、いつも孤独だった。
みんな、孤独だった。
みんな、限界だった。

そして、その日、それは起きた。

■ベースの炊事場

●痩せて廃人のようになったフランシス
●渇きに耐えられず、水道の水を直接、口で飲もうとしている。
●そこに、洗濯をしようと、やってきたジムが鉢合わせする。

「??……フランシスさん??」
「!!……」

●フランシス激しく拒絶。憔悴した姿を見られたくない一心で声を荒げる。

「やめて!……来ないで!……見ないで!
……近づかないでって、言ってるでしょう!!」
「で、でも、フランシスさん!」
「来ないで!お願いだから、見ないでヨォ!
……私の事なんて、放っといて!関わらないでったら!」

●憔悴したフランシスのアップ。
●姉の声に気づいて、炊事場に顔を出したメアリー、隠れて様子を伺う。
●フランシスの変わりように、動揺を隠せないジム。

「よりによって、一番見られたくない男(ひと)に……」(呟き)
「あ、あのっ……」
「だから、来るなって、言ってるじゃないっ!……あぁっ!!」

●自室に籠ろうとするフランシス
●ジムを振り払おうとした勢いで、自室の入口で、よろめき、倒れる。
●それを慌てて支えるジム。メアリーも駆け寄る。

「フランシスさんっ!!」
「お姉ちゃん!!」

--暗転

#011  限界、了。

AIに悪夢を描かせました。せめて挿絵だけは愛らしく

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。


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