HAMLET 2 #019 女たちの戦い
■コンテナ近く。グリフォンと戦う揺り籠(機体色は赤)
●グリフォンと揺り籠の殴り合い(物理)が続く。
●やり場のない怒りをグリフォンにぶつけるメデューサ
●この時、メデューサの頸椎と揺り籠は、繋がっていない。
●非常用の手動操作システムで、揺り籠を操るメデューサ。
●戦っているのは、メアリー(パイロット)とフランシス(ガンナー)
「いい加減、ジム・ビリントンを出せ!!
自分は、奴を倒さねば気が済まぬのだ!!」
「貴方の気持ちで、ジムくんを、やらせはしない!!」
「そうよ!今は、あたしたちで、ジムを守るんだから!!」
「黙れ!!……素人が、勝てると思っているのか!?」
「素人でも、戦わなきゃいけない時があるの!」
「そうよ!!……今までは彼が私たちを守ってくれた!」
「だから、今は彼を守るのッ!!」(2人声を揃えて)
「な……ナメた真似を……!!」
■数時間前。夜の海岸、ライトで海に合図を送るメデューサ。
●ライトの合図で、漁船が彼女に近づいていく。
●ロシアの諜報員とコンタクトを取るメデューサ。
「ミデューサ、何故、私を呼んだ?」
「すでに鍵との接触は済んだ。だから、信号を読み取りに来たのだろう??
自分の役目は、済んだはずだ。自分は、お前たちの群れに戻りたい」
「これは単独行動だと言ったはずだ。これはアクシデントだと」
「つまり、もう群れには戻れないのか??」
「残念ながら、そうだ。お前との接触は、全員が禁じられている。
私がお前に会うのは、最後の情けだと思うがいい」
「情けか……お前との関係は、そんな言葉で終わるのか?」
「私情を交えては、ならない。最初に、そう言ったはずだ」
「そうか……お前も、所詮、ただの男だということか」
「なんとでも言うがいい。もう、お前は自由だ。
全てを忘れ、好きに生きるがいい」
●最後、自分では気づかぬまま、涙を流すメデューサ。
「全てを忘れるだと……自分には、最初から、何も無かったというのに……」
■再び、グリフォンと戦う揺り籠(機体色は赤)のシーン
●メデューサは涙声になっている。
●音声のみの伝達の為、メアリー達に顔は見えない。
●AIの言葉を受けて、戸惑うメアリー。
「男の為に戦って、なんになる!!
……ジム・ビリントンも、ただの男だ!!
どうせ、お前たちも奴に捨てられる!!
……奴の為に戦うなんて、無意味だ!!」
「ジムくんは、そんな人じゃない!!」
「そうよ!!……ジムに八つ当たりしないで!!」
「二人とも、冷静になってください。熱くなっては、敵の思う壺です」
「そ、そんなこと言われたって……」
●ここから、メデューサとフランシスの意地の張り合いになる。
「惨めな女のくせに!!無力な女のくせに!!
……邪魔をするんじゃない!!」
「別に、男に捨てられたって、いいじゃないの!!」
「な、なにっ……」
「男の為に努力して、男の為に頑張って、それで、どんなにバカを見たって、自分の命を削ったって、別に、いいじゃないの!!」
「えっ、お、お姉ちゃん……」
「それが……それが、どんなに愚かなことか、分からないのか!?」
「愚かでいいのよ!!それでも、自分を必要としてくれる人が居れば!!
私は、それで地球人を何億も犠牲にした!バカで愚かで、惨めな女よ!!」
●メデューサの脳裏に、HAMLETで死に急いだフランシスのシーンが浮かぶ。●マリアの記憶が、メデューサにフィードバックされていた時のもの。
「そうか、お前が、フランシス・レイクウッド……」
「それでも、そんな私を殺してもくれない人が居る!
そんな私を、1日でも長く生かすと言ってくれた人が居る!
……その人の為に、命を張るのが、なんで愚かだって言うのよ!!」
「そ、それは……」
「そっか……お姉ちゃん……そうなんだ……そんなふうに思ってたんだ」
「何処の誰だか知らないけど、今は、彼を殺させる訳にも、自分が死ぬ訳にも、いかないの!!」
「そうか……お前は、幸せ者だな。自分とは、大違いだ」
●揺り籠が、まるでメデューサの恰好と同じように、ガクッと肩を落とす。
●同じく、グリフォンのコクピットの中で、メアリーも肩を落とす。
●AIが声をかける。
「敵わない……あたしじゃ、お姉ちゃんの気持ちには、敵わないよ」(呟き)
「メアリー、しっかりしてください!!」
「……」
●戦う気力を無くしたメアリー。仕方なく、フランシスに攻撃を命じるAI。
「フランシス、今を逃す訳にはいきません!
シート脇のボタンを押してください!」
「えっ、こ、これっ!?」(カチャリ)
ドドドドドッ!!……バババババアンッ!!
グウゥゥゥ……ガアァァン……ズサッ……
●非常スイッチが押され、実弾兵器が揺り籠を襲う。
●揺り籠の構造上、一番脆弱な腰部を実弾兵器が破壊する。
●その様子を見て、フランシスが狼狽える。AIが励ます。
「えっ!!……あっ、わ、私、なにか、いけない事しちゃった??」
「いいえ、お見事です。それでいいんですよ!」
●上半身と下半身に分断され、機体色が、赤→緑→青と変わっていく。
●大人しくなった揺り籠に、ジムが近づいていく。それに気づくメアリー。
「あっ、ジ、ジム!!」
「二人とも、ありがとう。なんとか回復できたよ。
それに、コイツを仕留めるなんて、お手柄だね!」
「それは、お姉ちゃんが、頑張ったから……」
「ううん。二人で頑張ったからでしょう、メアリー」
●AIも、二人の戦いを称える。
「そうですよ。二人とも、見事な戦いでした!」
●銃を構え、揺り籠のコクピットに近づくジム。
●外から合図を送ると、揺り籠のコクピットが開く。
●両手を上げ、抵抗しないことを知らせるメデューサ。
■グリフォンのカメラが、ズームしてメデューサの姿を捉える
●その姿を、マリアだと認めたメアリーとフランシス。
「えっ!!……マ、マリアなの??」
「ウソ!!……相手がマリアさんだったなんて……」
■抵抗する様子のないメデューサ。コクピットを出て地に立つ。
●そこに、グリフォンを出たフランシスとメアリーが駆け寄る。
「マリア!!……!!」
「マリアさんっ!!……あっ……」
●二人とも、メデューサがマリアでないことに気づく。
●苦々しい様子で、吐き捨てるメデューサ。
「その名で呼ぶな!!……自分は、メデューサ!
断じて、マリアなどでは無い!!」
●マリアとの声の違いに、愕然とするメアリーとフランシス。
●メアリーとフランシスに負けたのが、悔しくて溜まらないメデューサ
●メアリーとフランシスの顔を見て、幼さにショックを受ける。
「自分はこんな、ひ弱な女子供に負けたのか??
……自分は、こんな弱い生き物に負けたのか??」
●ジムが、そんなメデューサを諫める。
「彼女たちは、ひ弱なんかじゃない!弱い生き物でもない!」
「では、自分は、なんだ!!……なぜ負けたんだ!!納得がいかない!?
ジム・ビリントン、お前に負けたのなら、ともかく。
自分は、戦士だ!自分は、そんなに、弱い存在では、ないはずだ!!」
「それは、俺には、分からない。
部屋を用意してやる。そこで、自分で、ゆっくり考えるんだな。」
「これは恥だ!屈辱だ!いっそ、一思いに殺してくれ!!」
「それが出来たら、どんなに楽か」
「男の情けは、女の恥だ!自分には、そんな優しさなど、いらない!!」
「俺はもう、誰一人失いたくないんだ!たとえ、それが自分の敵でも!」
●苦々しい表情をするメデューサ。心配そうな顔のメアリーとフランシス。
--暗転。
#019 女たちの戦い、了。
※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。