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HAMLET 2 #022 隠していた瘢痕(はんこん)

■メアリーの部屋

●メアリーが、メデューサを笑顔にさせようと、悪戦苦闘する

「ほら、ずっとそんな顔をしていると、幸せが逃げて行っちゃうよ!」

●メデューサの口に箸を加えさせ、口角を上げようとするメアリー

「あいを、ふうっ!?」(何をするっ!?)
「メデューサは、とっても綺麗なんだから、ちゃんと笑顔を作れるようにならないと、もったいないよぅ」
「えあお、あお、いああい!!」(笑顔など、いらない!!)
「それじゃあ、女の子としてダメだったら!!」
「いうんわ、おんあおこじゃ、あい!!」(自分は、女の子じゃ、ない!!)
「あ~、もうっ、暴れないでよ~」

●箸を、吐き捨てるようにして、メアリーに聞くメデューサ

「では聞くが、笑顔になれば、ジム・ビリントンと親しくなれるのか??」
「えっ、そ、それは……」
「じゃあ、お前は、どうやって、ジム・ビリントンと親しくなった??」
「え、えぇと……」

●前作で、ジムを元気づけようと、キスしたシーンのカットイン
●無言で、頬を赤くするメアリー

「……」
「笑顔のせいでは、ないようだな。
……では、どう親しくなったか、教えてくれ。お前のやり方に、学びたい」
「そんなの、学んだって、無意味だったら」
「どうしてだ??」
「今、あたし、ジムとは、仲良しじゃ、ないもん……」
「笑顔が必要なのは、自分より、お前のほうだな」
「……」(悲しい)

■グリフォンのコクピット

●寝ていたジム、くしゃみで飛び起き、コクピットハッチに頭をぶつける。

「!!……ハクション!!」(ドンッ!!)
「……ウッ!!……くぅ~っ……痛たたっ!!」

■フランシスが、部屋の外からメデューサを呼ぶ声

●効果音的に、画面オフで。

「メデューサ、ちょっと来て~!」

■コンテナのテラス

●フランシスがメデューサの髪を整えている。手並みに感心するメデューサ

「手慣れたものだな」
「昔はね、よく妹の髪を切ったりしたのよ。あの子は嫌がったけど」
「それでも、よい思い出だな」
「そうね」
「自分にも、良い思い出になる。他人に整えてもらうのは、初めてだ」
「あら……そんなふうに言われたら、緊張しちゃうじゃない!」

●髪を避けたのでメデューサの頸椎のケーブルコネクタが、あらわになる。
●フランシスの意識がコネクタに気を取られる
●切れた髪が、パイロットスーツの中に落ちる。

「あ、ごめんなさい。髪の毛がスーツの中に入っちゃったわ。
取ってあげる」
「頼む」
「ファスナー、降ろすわね」

●ファスナーが降りた為、メデューサの背中の成熟瘢痕が、あらわになる
●肩から下、恐らくは臀部近くまで続いていそうな、成熟瘢痕。
●傷が出来てから時間が経っているのか、肌は白いが、異形である。
●その瘢痕を見て、言葉を失うフランシス。

「……」

--場面転換。

■食堂に集まっている4人

●4人で摂る食事
●ジムの目の周りにアザが出来て、メアリーが笑う。
●メデューサは笑顔とは何かを知り、フランシスは心配する。

「え~っ、なにこれ!ジムの顔、タヌキみたい!?……あははははっ♪」
「なるほど。笑顔とは、こういうものか」
「狭いコクピットで寝るのは、良くないわ。今夜からは」
「今夜からは、お前の部屋で寝ろ。
自分が、ケガをしないよう、見張っている」
「はぁ?」(意味が分からないフランシス)
「お前は、大事なパイロットだ。
皆に危険が迫った時、お前に何かあっては、困る」

●メアリーは、メデューサの意見に賛成の様子

「そうだよね。
前にメデューサさんが襲ってきた時、ジムが起きなくて、大変だったもん」
「その時の詫びもしたい。だから、自分が、ジム・ビリントンを守る」
「……」
「それでいいな、フランシス?……異論は、認めない」
「……異論は、認めないのね」(呆れ)

●フランシス、諦めの呟き

■ジムとメデューサの部屋

●当然のように、メデューサとジムが二人きりで部屋に居る。

「それで、なんで、ずっと一緒に居るわけ?寝る時だけで、いいでしょ?」
「お前と二人きりに、なりたかった。それだけだ」
「ふ、二人きりになって、どうしろと??」
「そう、怯えるな。以前のような真似は、しない。
自分は、ただ、お前の気持ちが、知りたいだけだ」
「気持ち??」
「お前は、なぜ手を出さない?なぜ他の男と同じように、自分を扱わない?
自分には魅力が無いか?……自分では、マリアの代わりにも、ならないか?
自分は、代用品扱いには、慣れている。だから……」
「魅力が無い訳が、ないだろう!
それに、代わりだとか、そんなことは、関係ない!!」
「怒る理由が、分からない……」
「君に手を出したが最後、俺も、他の男と同じになっちゃうじゃないか」
「意味が、分からない。お前も、男だ」
「俺が手を出したら、全ての男は、君を同じように扱ったことになる。
一人の例外もなく」
「そうだ」
「だから俺は、君の人生で初めての、例外の男に、なりたい。
フランシスさんから、君の過去を聞いて、本気でそう思った。
これまで耐えていて良かったと、つくづく思ったよ」
「……」
「納得、いかないかな?」
「あんなもの、自分は、何も感じない。
自分は、ただ、男のアホ面を見せられているだけだ。
ただ、突っ込んで、かき回して、弄り回されるだけだ。
自分は、何も感じない」
「……」
「たいていの男は、そんな態度に激高するか、構わずに続けて、呆けてみせるだけだ。
……大したことでは、ない」
「じゅうぶんに、大したことだよ。それは、虐待だよ。
……だって、君は、それを忘れられて、ないじゃないか」
「……」

●ジムの言葉に、メデューサは自覚のないまま、涙を流す。

「もう、そんなこと、しちゃダメだ。
それは、男と女のスタートで、することじゃ、ない」
「でも、自分は、そうすることでしか、関係を作れて来なかった……」
「でも、俺とは、そうしなくても、関係を作れてるじゃないか」
「……」
「俺は、そんな、特別な男じゃない。
だから、他の男とでも、きっと大丈夫だ」

●メデューサの涙の量が、増えていく。

「自分は、弱くなった……お前と居ると、どんどん弱くなっていく……」
「君は、弱くない。ただ、ちょっと無理をし続けてきた。それだけだよ」
「……ジム・ビリントン。お前は最低だ。女を泣かす男は、最低だぞ」
「なら、最低で、いいよ……ただ、ちょっとだけ、恰好つけさせてよ」

●ジムにすがりつくようにして、泣き続けるメデューサ。
●その背中を、パイロットスーツ越しに、さするジム

「ジム・ビリントン。お前を信じて、見て欲しいものがある」

●ジムに背を向けて、自らファスナーを降ろすメデューサ。
●ジムの目の前に、背中の成熟瘢痕が、さらけ出される。

「こ、これは……」
「自分は、これを、生まれた時から背負っている。
お前には、これが、何に見える?」
「まるで……ひどい火傷の痕」
「そうか……やはり、そうか。だが、その記憶が、自分には、無い。
だから、自分は、過去が知りたかった。これが出来た時の記憶を」
「これが、君が過去に拘った、本当の理由……。
少し、触れても、いいかい?」
「ああ、構わない」

●瘢痕をなぞるように触れていくジム。
●それに合わせて、快楽の波に洗われるようなメデューサ

「……ぁ、ぁ……ジ、ジム・ビリントン……何をして、ぃ……るっ?」
「ただ、触れているだけだよ。嫌かい?……止めたほうが、いい?」
「ぃっ……いや、続けて……くれ……」

●メデューサの息遣いが、徐々に荒くなる

「メデューサ、俺の勘だけど、この疵の責任は、君には無いと思う。
君の代わりに、俺が聞いてくるよ」

●メデューサの瘢痕に、頬ずりをするような感じのジム。
●ジムの息が瘢痕にかかると、メデューサは少し体をピクつかせる。

「えっ……ぁ……ぁあ……りがと……ぅ……」

●絶頂を隠し、艶っぽい顔を、ジムに観られまいとするメデューサ。

--暗転。

#022  隠していた瘢痕、了。

ちなみに前作で、メアリーはこうして、ジムと仲良くなってました。(ドリームキャスト版)

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。


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