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HAMLET 2 #002 救出

■イギリス レンデルシャムの森

●雨が降り始める。ジム、雨に打たれて、意識を取り戻す。

「……ぅ、うぅ……」

●雷が鳴る。嵐が近づく。コックピットハッチを閉じるジム。頭が痛そう。

「ぁぁ……メ、メアリー達は…」

●コクピット内モニター。2つの救命ポッドからのバイタルサイン、正常。

「とにかく、医者を、呼ばないと……うっ、クッ!」

-嵐の音。場面転換。

■リズの館

●紅茶を飲んで寛いでいるリズ。画面外のセバスチャンが声をかける。

「奥様、緊急通報、ジム様です!」
「なんですって!」

●リズ、バーチャルコンソールを開く。
サウンドオンリー表示で、ジムの声が。

「…ば…祖母ちゃん……聞こえる?……」
「ジェイミー!あなた、今、どこに!」
「信号を送るよ…お願い、助けて……負傷者3名、うち重傷者1名……」
「向かいます!」
「ジェイミー!しっかりしなさい!……聞こえる?ジェイミー!?」

●セバスチャンが、慌てて飛び出していく。
-場面転換。

■再びレンデルシャムの森

●大嵐の森の中、グリフォンの周囲に、セバスチャンら4人の男性の姿。
濡れるのも構わず、救助を続けている。
●コクピットを開け、中のジムを気遣うセバスチャン。

「ジム様、大丈夫ですか?」
「う、うん……」

●周囲はフランシスらの救助に騒がしい。

「おーい、そっちのポッドは、どうだ!?」
「このまま運んだほうがいい!ウインチを回してくれ!」
「ドクターに連絡しとくよ!人命優先だ!」
「この機体は、どうすればいい!?」
「まずは牽引だ!……クラーク、トラクターで引っ張ってくれ!」

●セバスチャン、ジムに優しく声をかける。

「安心してください。3人とも直ぐに搬送します。
ここは、不時着の跡を消して整地します」
「相変わらず、仕事速いね。いつもいつも、世話になって……」
「そのほうが、奥様が喜ばれますから」(優しい笑顔)
「……ありがとう」
「ともかく、今は休んでください、ジム様」

●救急車が去っていく音。グリフォンが引き上げられ、トレーラーに乗せられていく様子。

「オーライ、オーライ……ストーーップ!」
「ロードローラーを持ってくるよ!」
-場面転換。

■ドクターの屋敷

●ベッドに寝かされていたのを、リズに詰問されるジム。
「ジェイミー、いったい、今まで何処に居たの?
あの子たちは誰?どういう関係?」
「ちゃ、ちゃんと説明するよ!……それより、二人の様態は?」
「お姉さんのほうを、今、ドクが治療してくれてる。意識はしっかりしているそうよ。妹さんは安定していて、今は、ぐっすり眠っているわ」
「そうか……よかった」
「それで、あの二人とは、どういう関係??……あなた、まさか」
「そ、そんな目で見ないでくれよ!俺は……俺は、親父の轍は踏まないよ」
「あなたの言葉を信じたいけれど」
「信用してもらえないのは、自業自得だものね。
…でも、誓って、あの二人とは、そういう関係じゃないんだ」
「じゃあ、どういう関係か、話して御覧なさい」
「時間、かかるよ」
「時間は、たっぷり有るわ。あなたが行方をくらましていた間よりは、短いでしょうけど」
「言い訳は、しないよ……どこから話すべきか、それが問題だけど」

●リズと話すジムの姿を、シルエットで表現。リズ、大いに驚く。
●時間経過を、日没や夜明けで表現。
-場面転換。

■クラークたちのたまり場

●タブロイド紙の画面表示。シャトルの爆発とグリフォンの墜落を、22世紀の UFO事件として騒ぎ立てた紙面

●タブロイド紙が騒ぎ立てた事件のことを、クラークたちが読んでいる。

「なんじゃこりゃ??…これが、私らがジムを助けた時のことを書いた記事なのか?」
「そうらしいね。空で大爆発が起きて、周囲に未知の金属が散らばり、なんと、怪物が目撃されたそうだ」
「行方不明の年寄りが、その怪物に食われたんだと。なんでも、靴が片方だけ落ちていたらしい」
「怪物だぁ??…私は、何も見なかったぞ」
「おおかた、お前の姿を怪物だと勘違いされたんだろう」
「言えてる。お前の腹の肉は、まさに怪物級だ」
「何を言っているんだ。私は5キロも減量に成功したんだ」
「自称、5キロな」
「ぐぬぬ」
-場面転換。

■再び、ドクターの屋敷(夜)

●必死に手すりに掴まり、歩こうとしているメアリー。しかし、手すりにしがみ付いているようにしか見えない。心配して駆け寄るリズ。
メアリーに寄り添う。

「……ハァッ……ハァッ……ウッ……くっ……」
「メアリー、あんまり無理しちゃ、いけません!また骨折しますよ!」
「止めないで、おばあちゃま。
あたし、自分の足で立ちたい……自分の足で歩きたいの」
「メアリー、お願いだから無理しないでちょうだい!
わたしを悲しませないで」
「だって……だって、せっかく地球に着いたのに……あたし……あたし……ぅぅ」(嗚咽)
●メアリーとリズ、二人泣き出す。

●ドクターの診察を受けながら、質問に答えているフランシス。体は回復している。

「うん。フランシスくん、君のほうは、もう出歩いてもいいだろう」
「ありがとうございます。先生のおかげです」
「それで、二人は何故、ずっとワシのところに居るのかね?」
「ご迷惑でしょうか」
「いや、リズに頼まれた以上、いくらでも治療はするんだがね。こんな老いぼれを頼らんでも、他所に行ったほうが、よほど良い治療を受けられる。
君も、妹さんも」
「治療を受ける権利が、ありません」
「旅行者でも、受け入れる医療機関は、あるはずだが」
「私たちは、旅行者では、ありません」
「…というと」
「私たちには、戸籍も身分もありません。
ここには存在しない、関与を受けられない人間です」
「何??…じゃあ、君たち二人は、何処から来なさった??」

●フランシス、無言で窓辺に立ち、外の満月を指さす。驚くドクター。
-場面転換。

■メアリーの病室

●ベッドで横になるメアリーの傍らに座るフランシス

「そうなんだ……あたし、月人だから、歩けないんだね」
「そうと決まった訳じゃないわ。必ず治療法はある。私も探してる」
「でも、子供の時に、地球の重力に慣れてないから、体が保たないんでしょう」
「ええ。でも症状は、宇宙飛行士が地球に帰ってきた直後に似ている。
だから、骨を強くしたり、運動を司る部分の脳に刺激を与えれば、きっと私と同じように歩ける」
「その治療、痛い??」
「必死に歩こうとして、あんな骨折するより、ぜんぜん痛くないわ」
「よかった……あんなに痛いの、もう、やだもん」
「メアリーは、強い。だから、絶対、歩けるようになる」
「だって、歩きたいんだもん。外に出たいんだもん。
ジムと、お姉ちゃんと一緒に、お出かけしたいんだもん……」
「メアリー……」
「お姉ちゃん、あたし、ずっとこのままじゃ、やだ……」
「大丈夫、大丈夫よ……」
「なんで、なんでさ、生きるって、こんなに辛いことばかりなの?
このままじゃ、地球に来た意味ないよ。HAMLETでも辛かったし、せっかく、ジムに地球に連れてきて貰ったのに、これじゃあ……ぅぅ」
「私が、変わってあげられたら、よかったのに……ぐすっ」

●二人、泣き始める。

「こんなんじゃ、地球に降りるんじゃなかった。二人で、HAMLETで死んでいたほうが、よかったんじゃない?……」
「ダメよ、ダメ!……そんなこと、考えちゃ、ダメ!」
「あたしがお姉ちゃんを撃ったからだ。あの時、あたしが、あの時、お姉ちゃんを銃で撃ったから、罰が当たったんだ……」
「そうじゃない、そうじゃないよ、メアリー……」

●泣きじゃくりながら、二人の夜が更けていく。

-フェードアウト

#002  救出、了。

■新規登場人物紹介
●リズ
ジムのおばあちゃん。前作でも、存在だけは触れられていた。

●セバスチャン
リズの執事。仕事は早く、指示は的確。先回りして動ける凄い人。

●クラーク、ドクターら男性陣
リズの知古。皆、いわゆる年寄りなのだが、意外と元気である。セバスチャンの指示を受け、車の修理や板金加工、屋敷の修繕などを請け負っている。
ドクターは、昔は名うての医師だったらしい。

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。

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