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HAMLET 2 #012 情念 (Season Finale)

■メディカルルーム

●メディカルベッドに横たわるフランシス
●髪はボサボサ、唇は渇き、頬はこけ、枯れ木のようなフランシス。

■メディカルルームの外

●ジムと話すメアリー

「あたし、お姉ちゃんに、ついてる。
お姉ちゃんが気が付いたら、声かけるね。
目覚めた時、ジムがいると、お姉ちゃん、混乱すると思うんだ」
「あ、ああ、わかった……」
「AIの言うとおり、ちゃんと手当するから、心配しないで」
「うん。よろしく、メアリー」

●去り際のジムを呼び止めるメアリー

「あっ……ねぇ、ジム?」
「ん?」
「お願いがあるの……ちょっとだけ、ぎゅっ、てして」
「えっ……あ……」

●ジムに抱き着くメアリー。暫く、ジムの体温を感じて。

「メアリー……」
「よかった。ジム、ちゃんと暖かい……。
お姉ちゃん、あんまり暖かくなくて、心配だったの」
「ゴメン、メアリーにも心配かけちゃったんだね」
「あたし、どうしていいか、わからなくて。今まで何も出来なかった」
「ごめん。ごめんよ、メアリー……」
「ジム、暖かい……。すごく、ほっとする……嬉しい」
「メアリーも、あったかいよ。熱いくらい。俺、元気もらってる」
「あたし、いつでも元気のもとに、なってあげる」
「ありがとう、メアリー……」

●ひとしきり抱き合う二人。

--場面転換

■無線室

●各国各所から、ゾンビとの戦闘被害や、救出を求める無線が入ってくる。(ノイズまみれの惨劇)
●それぞれ違う国の言語で、混乱が全世界に広がっていることを知らせる。

「……警察……実弾……ゾンビがゲートを破……」
「軍……ゾンビ……押し返……」
「人がたくさん倒れて……血濡……」
「そこらじゅうで砲……(破壊音)……」
「(爆発音)……ああ、神様……」

--場面転換

■メディカルルーム

●メディカルベッドに横たわるフランシスを見舞うジム。
●少しは身ぎれいになったが、それでも消耗しているフランシス。
●漫然と視線が定まらない彼女が、部屋にジムが入ってきたのに気づく。

「ぁ……ジム……さん」

●フランシス、半身を起こす。ジムが、慌てて体を支える。

「フランシスさん、あんまり無理しないで」
「いいの。このほうが話しやすいわ。あなたも座って」

●メディカルベットに並んで座る二人。フランシスが話し始める。

「ねぇ……見てよ。
無様でしょう。汚らしいでしょう。惨めったらしいでしょう、私……」
「そんな……そんなことないですよ」
「いいの。自分の状況は、よくわかってる……死にきれなかったのよ。
私、死神だから」
「死ななくて、良かったじゃないですか。
なんでそんなに死にたがるんです??」
「フフ……わかってるでしょう??
こんな世界にしたのは、私。世界を滅ぼすのは、私。
世界に恨まれるのも、蔑ろにされるのも、ぜんぶ、私。
……死んだら、楽になれるのにね」
「そんな言い方……」
「だから、ね。ジムさん……私を、殺してほしいの」
「えっ」
「あなたになら、出来るわ。メアリーじゃ、ダメ。あの娘、しくじるから。
でも、あなたになら、きっと!!」
「……」(逡巡)
「ね、お願い。私の命を奪って。あなたに、死なせてほしいの、私を……」
「……」(逡巡)
「今も、世界中で人が死んでる。私の研究のせいで、大勢の人が死んでる!
……もう、耐えられないの。だから、お願い!」(懇願)
「……わかりました」

●安堵したフランシス。ジムに向かって首筋をさらけ出し、顎を上げる。
●そっと目を閉じる。まつ毛が揺れる。顎のラインと細い首筋。青白い肌。
●その首に、手をかけるジム。意を決したように、首をしめようとする。

「そんなこと、できるわけないじゃないですか!!」
「!!」

●ジム、だしぬけに、フランシスを抱きしめる。

「ぁ……なんで……」(困惑)
「また、独りで抱え込んで……すぐ、自分のせいだって、思い込んで……」

●フランシスを抱きしめる力が、強くなる。

「……く、くるしぃよ……い、痛いったら……」(抵抗)
「死にたがってる人には、ちょうどいいでしょう?」
「……ぅ」(抵抗をやめる)
「死神は、貴女じゃない。俺ですよ。俺は、また、他に誰も救えなかった。
俺はまた貴女たちしか救えなかった。他の人は、みな死んでしまった……」
「……」

●フランシスは、ジムが、自分と同じ苦しみを感じていたことに気づく。

「せっかく、HAMLETで仲間に助けられ、たくさんの犠牲を払って、故郷に戻ったのに……。その頃には、母さんは、既に死んでいた。
俺が月で戦っている間に、母さんは死んでいた。
それなのに、助けた貴女は、いつも死にたがって、無茶をして、抱え込んでばかりだ」

●フランシスは、ジムの言葉に泣きそうになっている。

「殺されたいのは、俺のほうだ。俺、早く、母さんの傍に行きたい……。
フランシスさんこそ、俺を殺せるでしょう?毒薬でも、作ってくださいよ」

●フランシスは、ずっと、自分の事しか考えていなかったことに気づく。

「貴女が死神なら、俺は、きっと悪魔ですよ。人類を滅ぼす悪魔だ。
貴女が悪いんじゃない。俺が、貴女たちを連れて来たから、人類が滅びるんだ」
「そう……そうなのね……あなたも、苦しかったんだ……」
「だから、俺は貴女を殺さない。逆に、一分一秒でも、俺より長く生かす」
「えっ」
「死ぬのは、俺のほうが先です。フランシスさんには、俺が、安心して母親のもとに旅立つのを、絶対に、見届けてもらうんだ……」
「苦しかったんだね……あなたも、私と一緒で、苦しかったんだね……」

●同じ苦しみを分かる相手がいる嬉しさに、フランシスは震える。

「俺たちは、同罪なんですよ。同類なんですよ。似た者同士なんだ」
「うん……わかる……わかるよ、ジムくん……」(親愛の情が沸く)

●されるがままに抱きしめられ、フランシスにオキシトシンが溢れ出す。
●脈が早まり、血流が増し、頬が上気し、髪が艶を取り戻し、唇が濡れる。
●自分も相手にすがろうとして、フランシスの腕が、一瞬、躊躇う。
●死よりも欲しかったものに気づくフランシス。自分もジムを抱きしめる。
●妹に遠慮していた自分に気づいて、より恥ずかしさが増していく感じ。
●自ら導くように、ジムを胸に抱くフランシス。
●胸に顔をうずめ、フランシスの顔を見上げるジム。

「近くに居ても、気づかないことって、あるのね」
「……なんか、母さんに抱かれている気がする……」
「……クスッ。今だけ、お母さんになってあげる」
「……ぅん……」


●ポン、ポンと、ジムの呼吸に合わせて背中を軽く叩くフランシス。
●二人の呼吸が合い、鼓動がシンクロし、時間と共に溶けていく感じ。
●やがて、安心しきった顔になるフランシス。

「ねぇ……私、生きる。ジムくんと一緒に生きるよ。
……もう、死にたいなんて言わない。
……だから、私のこと、許してね、ジムくん」
「……」
「ねぇ……ジムくん。私のこと、好きにしていいよ。
……だから、ね、もう私を許して」
「……」

●ジム、フランシスの胸で、いつの間にか眠っている。

「ぁ……なんだ、寝ちゃったんだ……」(安心と寂しさ)

●ジムを寝かしつけるフランシス。
●母性を刺激されて、なんか艶っぽいフランシスの笑顔。

「あは……ジムくんの寝顔……可愛い」

--時間経過のフェードアウト・フェードイン等。

●ジムとフランシスの、二人で支えあうように眠っている姿。

--場面転換

■無線室

●ノイズまみれの、スイスからの呼びかけが入る。ループ放送。

「こち……ジュ……ブの……世界……です……。
……のシェルターから……発信してい……応答……。
生存…………呼びかけ……応……こちらは……暫定……政府……」

原文:
「こちらは、ジュネーブの暫定世界政府です。
こちらのシェルターから、全世界へ発信しています。
生存者を探しています。生存者に呼びかけています。応答願います。
こちらは、ジュネーブの暫定世界政府です」

--フェードアウト。

#012  情念、了。シーズン1(英国編)、終了。

「母を追いかける夢」をAIに描かせてみた。

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。


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