7つの詩(のようなもの)
放課後の探しもの
誰もいない
放課後の教室は、
喧騒の中ではぐれた迷子のようだ。
野球部の掛け声、
吹奏楽部のトランペットが奏でるマーチ。
音の中で居るべき場所を
失っている。
彼は、
そんな放課後の教室にいる。
もう一度
あの人と会える場所。
彼の探しものは、まだ見つからない。
理屈のない微笑み
この世界には
あらゆる理屈が溢れている。
ゆえに、
起こりうる、
信じられない現実を目の前にして
貴方は
この世界を疑うだろう。
そんな時、彼のことを思い出してほしい。
彼の微笑みには理屈がないことを。
この世界を少しでも多く、
理解するには、
彼の微笑みが必要だ。
さよならの踊り方
彼はいつも、
決められた振り付けを完璧にこなす。
特に「さよならのダンス」
は素晴らしい。
滑稽な表情で可笑しく踊る姿は、
まるで涙なんか必要ない
みたいに「さよなら」を
悲しみから遠ざける。
そんな彼が、
時々アドリブでステップを踏む。
軽快に弾むそのリズムは、
彼が隠そうとしたメッセージなのか。
ヒールの音が
響くたび、何だか泣きたくなるのはなぜなんだろう。
すぐそばの宇宙
彼を見つけるのは簡単だった。
いつだって
宇宙の隣に彼はいたのだ。
宇宙は幾億もの星を持っていて、
彼は
その星々をいつも眺めていた。
その輝きに憧れ、
時には背比べをしてみたが
星の数も輝きも敵わない。
そして、彼はある日から、
比べることをやめた。
土の上に
立っていることに気付いたからだ。
その身体の重さに、彼は深く納得した。
気付けば宇宙は広がり続け、
彼を飲み込み、
彼はついに宇宙の一部になって大きな輝きを見せた。
そして彼は言ったのだ。
「とても怖かった、
でも踏ん張り続けて時を待った。」と。
透明な森
彼が目を覚ました時、
そこは森の中だった。
次第に森の空気は薄くなり、
葉は色を失くして、
透き通っていく。
彼はその葉を一枚
手のひらにのせてみて、
初めて、その肌の色を認識した。
この森では何もかもが
透明で、
色をもつのは彼だけだ。
それを確認するように、彼は森の奥へと進んでいく。
瞳に浮かぶ舟
彼の瞳の中には
舟が浮かんでいる。
時に荒波に飲まれ、
時に凪の中で静かに揺れる。
繰り返される舟の運命を
まだ誰も知らない。私たちは
ただそれを見つめているだけだ。
水面に
ゆらゆらと浮かぶ小さな舟を。
春の色を知っている
春は眩しい。
たくさんの光を浴びて
いくつもの命が動き出す。
その全てを
観察することを欲した彼は思い出した。
あの日咲いた、
一輪の
花の香りとその意味を。
きっと、
思うことは気付くことだ。
彼は、春の色を知るだろう。