抹茶の町・西尾で感じた抹茶への愛とおもてなしの心
抹茶といえば…京都の宇治?
いえいえ、愛知の西尾も実は宇治に負けないほどの抹茶の一大産地なんです。抹茶の原料となる”碾茶(てんちゃ)”の生産量は全国でもトップクラス。西尾で作られるお茶のなんと97%が抹茶という、まさに「抹茶の町」
西尾抹茶は、全国で初めて抹茶に特化した「地域ブランド」としても認定され、西尾市民の誇りとも言えます。
5月はちょうど新茶の季節。ということで、抹茶愛あふれる西尾の町で、私が訪れた場所と抹茶にまつわるお話をご紹介します。
茶畑で知る西尾抹茶の秘密 | 稲荷山茶園公園
西尾抹茶の黒幕、美味しさの秘密とは?
「茶畑」と聞いて想像するのは、辺り一面に広がる緑の段々畑、ではないでしょうか。それをイメージしてこの稲荷山茶園公園を訪れると、あれ?っと拍子抜けするかもしれません。なぜなら、新茶の茶摘みを控えた4月から茶摘みシーズンまっさかりの5月下旬まで、この辺り一帯のお茶畑はこの写真のようになるからです。
見渡す限り真っ黒…。何も知らずに来た私は、だから西尾の抹茶は知名度が低いのでは…?と失礼ながらその映えなさにがっかり。しかし、この黒幕こそが、西尾抹茶の「美味しさの秘密」なのだと後に知ることに。
西尾観光協会の方にお話を伺ったところ、上質な抹茶の栽培には、この黒幕で茶葉を覆う「被覆(ひふく)栽培」が欠かせないのだとか。日光を遮ることで、薄く柔らかな新芽になり、同時に旨みとコクの成分が葉の内部で蓄えられる。これが、甘みや旨味が強く、渋み・苦みが少ない、まろやかな抹茶になる秘訣だそう。
新茶の季節は茶摘み体験も
西尾観光協会が主催する「一番茶 茶摘み体験」はこの稲荷山茶園で実施され、新茶を収穫する限られた時期だけ体験できます。参加者の方は、茶摘みの方法をレクチャーしてもらった後、いざ茶摘みにチャレンジ。
摘んだお茶の葉は自宅へ持ち帰ることができます。体験には、茶摘みの他、抹茶工場見学と抹茶&スイーツも含まれているそう。参加した方は、葉っぱの柔らかさや、西尾抹茶のまろやかさに驚いたと楽しそうにお話してくれました。
今年の茶摘み体験は、もう残すところあと数日ですが、お茶畑自体はその後も見ることができます。
伝統産業を伝える「学校茶摘み」
中学校の就業体験として1日茶摘みをする「学校茶摘み」は、西尾市で80年以上も続く伝統行事。この稲荷山茶園公園のある校区の小学校では、小学4~6年生も同様に体験するそうで、訪れた日にその様子を見学することができました。
農家さんの協力のもと行われるこの課外授業を通して、地場産業がどのように行われているのかを子どもの頃から学ぶため、自分たちの産業という意識がとても強いそう。西尾の人々の抹茶愛には、このような伝統と文化を大切に伝えている背景があるのだと感じました。
美しい景色を眺めながら、ほっと一服 | 西尾市歴史公園・旧近衛邸
抹茶について学んだら、まずは一服頂かねば。市内にお茶屋やカフェはたくさんありますが、景色も楽しめるのが、ここ西尾市歴史公園内にある「旧近衛邸」。京都の公家・近衛家の書院と茶室を移築したもので、西尾のお抹茶とお菓子を頂くことができます。
縁側で西尾城と庭園を目の前に、のんびりと一服。なんとも優雅で贅沢な時間を過ごすことができました。
お抹茶の銘柄は日替わり、お菓子は週替わりで、6~8月には冷茶も頂けるとのこと。季節の変化も楽しめて何度でも通ってしまいそうです。
スタッフの方はとても気さくで、お抹茶や西尾のこと、写真撮影のベストポジションまで教えてくださり、とても楽しい時間を過ごせました。
平日限定で、反射板を利用した「映え写真」を撮影できるとのことで、私も挑戦。渾身の1枚にチャレンジしてみては?
歴史公園自体は小さいですが、公園周辺も含めて緑が多く、お散歩にはとても気持ちのいい場所でした。
時代とともに変化する抹茶 | 西条園抹茶カフェ(西尾本店)
1888年創業「株式会社あいや」が展開する西条園抹茶カフェ。伝統的な抹茶だけではなく、様々な抹茶の楽しみ方を知ることができます。
私が頂いたのは、一度に色々な抹茶のバリエーションが楽しめる「極み抹茶パフェ」。濃厚な抹茶アイスや抹茶チョコ、抹茶わらび餅など、これでもかというほどの抹茶づくし。
カフェの隣にはショップも併設されており、茶葉や抹茶スイーツの他、器なども購入できます。
同じ敷地内には抹茶工場があり、工場見学も大人気(完全予約制)。土日や茶摘み体験でにぎわう時期は早くに予約が埋まってしまうようで、今回は残念ながら見学できませんでした。行かれる際は早めの予約がオススメです。
食べるお茶の葉 | 日本料理 魚寅
抹茶スイーツには馴染みがある、でも「お茶っ葉を食べる」のは記憶にある限り初体験。ここ魚寅は、抹茶の原料である碾茶を使った「西尾の碾茶めし」発祥のお店。
中でも一番人気は西尾の鰻と碾茶を地元産の鋳物の釜でたき上げる「茶めしうな釜」。ちなみに、西尾は鰻の産地としても有名です。
まずはそのまま、次はお出汁をかけてひつまぶし風に。お茶の効果か、思いの外あっさりとしていてペロリと完食。おこげも香ばしく非常に美味しかったです。
お店の方にお話を伺ったところ、お茶の葉が鰻の臭みを消すため食べやすくなるのだとか。このお茶と鰻の黄金バランスに至るまで試行錯誤を重ね、地産地消にもこだわった西尾ならではの逸品。鰻とお茶、両方の新しい楽しみ方を知ることができました。
抹茶と人に癒される町
今回、抹茶をテーマに西尾の町を散策し、知らなかった抹茶の楽しみ方を沢山知ることができました。また、突然伺ったにも関わらず、快くお話をしてくださる方ばかりなことにとても感動しました。そんな抹茶愛とおもてなしの心にあふれた西尾。愛知在住の私ですが、その魅力を再発見し、ますます西尾のことが好きになりました。
あなたも是非一度、訪れてみませんか?