埼玉県公立高校入試の数学対策(主に学校選択問題)
1.基本情報(選択問題)
埼玉県の公立高校入試では、数学と英語の2教科のみ「学校選択問題」という難易度の高い問題で構成される試験を採用する高校がある。どの高校が該当するのかは年によって変わることもあるので自分で調べて欲しいが、基本的に、別学伝統校や、いわゆる巷での偏差値が60中盤以降の高校は、まず間違いなく学校選択問題で受験することになるじゃろう。一部の問題は通常の問題(学力検査問題)と同じ場合もあるが、例えば同じ図形を使った問題でも問われる内容(証明すべき事項)が異なったりするので、基本的には違う試験問題と考えてもらってよい。よって、学校選択問題で受ける生徒さんが、学力検査問題の過去問を解く必要はほぼないと言ってよい。
神の国では前提条件として、学校選択問題で受験する子羊さん達を対象にしておる。さて、数学の学校選択問題はどのくらい難しいのかのう。感覚的にいうと、基礎力を見る前提で作成される「学力検査問題」が8割解ける子でも、選択問題は3割に満たない可能性すら十分にある。極端な話そのくらい出題の難易度はちがうのじゃ。11月までの北辰テストは学力検査問題+αのレベルなので、この試験で7割取れていた生徒さんが、本番の学校選択問題の数学で同じように7割を取るには相当な上積み(対策)をしないと難しい。恐らく学校選択問題を採用する高校でも下位の学校(失礼を承知で、例えば最近学校選択問題を採用した大宮北高校普通科など)では、半分の点数を取れれば数学としては十分に合格ラインのはずじゃ。
では、特に中3受験年度の後半戦で、この数学の学校選択問題にどう向き合うべきかについて知恵を授けよう。
2.取れる問題を取り切る(落とさない)
当たり前の事じゃないかと笑うかのう?そう思った、そこの子羊さんと親羊さん。ゲートを超えて柵の外へお帰り頂いて結構じゃ。ただし、シナリオ通りにオオカミさんや猟師さんの獲物にならんことを祈るがな。
この「取れる問題を取る」というのは、裏返すと「取れない問題に取り組まない(時間を割かない)」ということでもある。選択問題の一部は、浦高や大宮理数科にトップ圏内で合格するような、羽の生えた子羊さんですら解けない問題が混じっておる。しかもややこしいことに、大問5の最後の問題だけでなく、場合によっては大問1,2、3,4にも、こうした凡人が解いてはいけないワナが仕込まれている。
したがって、大問1の後半で「あれ?」となって一つの小問題(5点)にひっかかって、気が付いたら時間の経過とともに頭がパニックになり、より配点の高い確実に取るべき大問4や5の最初の問題(1)などに割く時間がなくなって(さらに15点を失って)終了という事が起こりうる。大変残念なことで、もし確実に解ける問題から順番に解いていれば、普通に10点、20点得点が上がるわけじゃな。
どの問題が多少時間をかけても解くべきで、どの問題を捨てるべきかは子羊さんのレベルによっても変わるが、御三家を狙う普通の優秀な生徒さんであれば、80点台を目標にして例えば大問4や5の最後の問題は解かなくても良いくらいの心持で試験対策をして構わん。
解くと危険な問題の例じゃが、筆頭は大問5の最終問題。面積や比などの場合があり、回答欄には数字だけを記入するにも関わらず、そこにたどり着くまでのロジックは難解かつ長いので時間が全く足りない(北辰テストの数学でも経験済みじゃな)。もうひとつ危ないのが空間図形(の切り取り問題)。これも凡人には解けないと思って飛ばした方が身のためじゃ。平面図形の回転などは、解ける場合もあるので、次に紹介するグレーゾーンの類となる。
グレーゾーンは関数に関する大問(4かのう)の最終問題。だいたい分数で答えだけで記入する問題じゃが、普通の子羊さんでもがんばれば解けることがある。それから、大問1の一部や大問2で出されることのある「規則性」の最終問題。これもガイドに従って答えれば解ける場合があるが、そもそも規則性(等差数列等)は公立中学ではきちんと勉強しない(むしろ私立中学の範囲として知られていて、小学校5,6年のおぼっちゃま・おじょうちゃまがサクサク解いておる)ので、多くの生徒さんには難しい。もし、規則性で差をつけようと思ったら、中学入試の問題集をブックオフで買ってきたり、数楽のサイトやWEBで、数日間徹底して規則性について問題を解くことをお勧めする。ここは他の受験生も手を付けない分野なので、保険として取れるようにしておくと強いな。下記のリンクから「規則性」の箇所にある問題を全部解いてみるのじゃ。前後で明らかに実力が付いたことを実感するじゃろう。
https://mathtext.info/chuu1.html
そして、もう一つの側面は大問1や各大問の最初の問題などで絶対にケアレスミスをしない。取れる問題を落とすと、学校選択問題の数学では本当に命取りになるでな。何度も北辰テストの12月以降の過去問や、埼玉県の過去問を解いて、自分なりにミスをしない方法、確認する方法を体に叩きこむのじゃ。
3.大問1を取り切る
大問1は「速く」「確実に」問題を解く必要がある。沢山類似問題を解いて、できないパターンの問題を潰して、ここで確実に点を取れるようにしたい。仮に大問1が全問正解だと50点近くになる。これだけで、学校選択問題全体としては平均点を超えているはずで、御三家や偏差値60後半の学校でなければ、これだけで数学の合格ラインともいえるわけじゃ。この大問1に、以降の大問で取れる問題を上積みすれば、御三家で取るべき数学の最低7割も現実的になってくる。それだけ大問1を落としてはならんということじゃ。
北辰や入試の過去問に加えて、お勧めしたいのが塾技のWEBサイト。塾技という本自体もベストセラーで、少し例題は古いが取り組んでおいて損はない(いわゆるテクニック的なまとめ方がされているので、RPGで技を覚える感覚で強くなって行ける)。この本の補足としてひっそり運営されているWEBのうち、大問1のような小問をまとめた問題集のリンクを授けておこう。これは埼玉県の出題に通じる類題として、良いドリルになるはずじゃ。
4.作図問題
まずコンパスと定規を忘れるな。
その上で、基本動作(垂線、垂直二等分線、角の二等分線)は確実に。これは図形が斜めっていても、ひっくり返っていても思いつけないといかん。底辺が綺麗に試験用紙の底辺と平行な問題を期待して図形を眺めていたらいかんぞ。その上で、45度、30度、さらに90度との組み合わせ(加減)で表せる角度の作図をマスターする。ここまでが基本じゃ。
WEBサイトを「高校入試、作図」等で調べると基本的な動作の解説が出てくるので、作図も数日かけて基礎から難問まで集中的に復習して欲しい。その上で、埼玉県の学校選択問題を解く場合には、さらなる実力アップが必須となる。
それは、図形の性質や合同、平行などを使って、正解(作図)から逆算する思考じゃ。解答用紙にある線や三角形を前に、コンパスを適当に当てて、あーでもない、こーでもない、とやっていたらまず解けない。時間の無駄になり、その場合作図は「解いてはいけない問題」として先に進む方が良い。
こんな感じの線になるんじゃないかという線を薄く図面に書く。そうすると、平行四辺形が見えてきて対辺や対角を使って作図が(置き換え)、、、とか、あるいは平行四辺形の対角線は互いを中点で二等分するから(図形の定義や性質)、、、というような図形が持つ性質をかませて、作図の方針を立てる作業が見えてくる。さらに作図には補助線が必要になったりする難問もあり、図形の総合問題的(幾何学のデパートや!)的な出題が可能なので奥が深い。
まず、いろいろな過去問を解いてみて、解説をしっかり読み、自分の技を増やして欲しい。その上で「やばそう」な問題に当たったら、思いきって後回し(切り捨て)の勇気も必要じゃ。
5.小問の回答(結果)を次の小問に使え
わかりやすいのが証明問題の大問5じゃ。小問(1)で2つの三角形の合同を示せたとする。次に(2)を読むときに(1)を完全に忘れているじゃろ?しかし、(1)で合同が証明されたことにより、新しい(2)に対する仮定が生まれているのじゃ。例えば、辺ABと辺GHが等しいのは大問の仮定として書いてあるが、(1)で合同証明をしたことで、残りの2辺も等しいという仮定が増えていることを意識する事。(2)や稀に一つ飛ばしの(3)で、この(1)でみつけた結果を活かして問題を解くシナリオが非常に多い。
じゃから、大問の一番目の問題を解いたら、その結果から新たに使える武器を意識しながら次を解くのじゃ。RPGゲームで例えると、やっつけた敵が持っていた攻撃力の高い武器をむざむざ置いて次の戦いに行くことはせんじゃろ?しっかり武器は頂いて、強くなった状態で次の敵(問題)を倒しにいくのじゃ。
6.その他
数学の全ての範囲を文字だけで網羅することはできんので、その他、埼玉県の公立入試の傾向から、取り組んでおくと良い分野のキーワードを示しておこうかのう。
・等積変形(関数の中にも図形として隠れている技じゃな)
・折り返し問題(長方形を折り返した図形、、、的なやつじゃ。もとの線や角と、折った後の線や角が同じだったり、折り目が二等分線というところを使う問題じゃ。川を挟んで最短距離的な問題もある。WEBにもたくさんあるので調べて解いてみると良い)ちなみに、この折り返しは埼玉県のお家芸と言われていた時期があって、出やすいとされている。
・規則性(別建てで説明したな。これも埼玉県で頻出の特徴的な分野じゃ)
・証明問題(教科書通りの文法で書けるように。合同であれ相似であれ、証明問題は確実に得点して欲しい)
数学は社会や理科と違って地平線が全く見えないかもしれんが、やみくもに取り組まず、埼玉県ではどういう問題が出題されるのか、身をもって理解していくことじゃ。そのために、早めに過去問に取り組み始めて欲しい。さらにそのためには、中3の数学を一通り終わらせておく必要がある。大変な時期が続くが頑張れ。何の脈絡もないが、実は数学は面白い。
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