『普及版 世界の紙を巡る旅』ができるまで ①
2021年に出版して、あっという間に完売してしまった著書『世界の紙を巡る旅』。
その後いろんな方から「もう販売しないんですか?」「どこで買えますか?」と尋ねてもらう度に「もう買えないんです、同じ仕様では作れなくてどうしたらいいものかと悩んでいますが、制作中です!」と言い続けて早3年。いや、ほんとに早かった。
初版を豪華に作りすぎた
そもそも、初版の『世界の紙を巡る旅』はクラウドファンディングでたくさんの方の支援をいただいた上に、協賛してくれた紙の問屋さんが紙を提供してくださったり、印刷会社の方の多大な協力があって完成した2000冊でした。
その上、表紙カバーの紙の裁断とシルクスクリーン印刷は私が行い、刷り上がったカバーと帯は出版社・烽火書房の嶋田さんがせっせと巻いてくれて、それぞれほぼ無賃労働でやっていました。
初版の華やかな造りは私たちも大好きで、お気に入りで、あの仕様の本が欲しい!と言ってくださる気持ちもとってもわかります。ですが、現実的には再制作・再販することがなかなか難しかったのです。
とはいえ、本の形にはしたい
初版が完売してから、同じ形で作ることができないなら、どんな形の本にするのがいいだろう?とたくさん考えました。
烽火書房の嶋田さんとも何度も打ち合わせをして、3名の作り手の方と対談をしたり、それ以外にも2万字超の追加原稿を書いたりしました。新たにできた文章を組み込んで、判型を変えて、今後完売しても再販しやすい造りで進めていました。
ある程度の形ができたところで、これは果たして初版よりも良い本になっているのか?追加の文章はタイトルにそぐわない蛇足なのでは?としっくり来なくなり、制作を中断しました。それが2022年末のこと。
本を携えて訪れる人
本の制作を中断したのと同時期に、第一子を出産して生活が一変しました。全てが子ども中心の時間になり、kami/としての新たな活動はなかなかしづらくなりました。
それでも、時おりお店を開けたりイベントに出店したりすると、初版の『世界の〜』を携えて県外から来てくださるお客さまがいらっしゃいました。
常連さんの中には「今も販売を楽しみにしていますよ」と何度も伝えてくださる方もいて、これはちゃんと向き合って本として売らなければ!と励まされました。
そしてこの夏、烽火書房・嶋田さんと制作を再開しました。相変わらず初版の豪勢さと、普及版は手軽な仕様で、というイメージが立ちはだかって、なかなか納得できる本になりませんでした。
手漉き紙を未来に残したくて
kami/(かみひとえ)は、手仕事の紙を未来に残すために「紙いちまいでできること」の可能性を信じて活動しています。小さくても、少しでも、自分の手で何かを作ったり、人の手で作られたものを伝えたりしたいと思っています。
普及版を制作するにあたり、手軽に手に取ってもらえるように簡素な造本にしようと決まっていました。ですが、手漉き紙を使うという部分をどうしても諦められず最後の最後に「やっぱり、表紙カバーは手漉きにできませんか?この本に合うと思う紙の候補があります、紙の制作スケジュールはわたしが調整しますので!」と我が儘を言ってしまいました。
そうしてできたのが、世界を旅している時に見つけた紙の欠片を漉き込んだ、特注の大州和紙です。天神産紙工場で生産される和紙の一つ、障子紙の原料をベースとして、わたしが細かく切った紙片を持ち込み漉きあげてもらいました。
(こちらの和紙を特注する流れや制作の様子が気になる方もいらっしゃると思うので、別の記事で詳しく紹介します!)
そんなこんなでやっと完成した『普及版 世界の紙を巡る旅』は11月25日より一般販売がスタートします。どうぞお近くの書店やお店で手にとっていただけると嬉しいです。
お近くにお取扱店がない方は、kami/のオンラインショップでも販売しております。