沈む寺(#毎週ショートショートnote)
受験、就職、あまりうまくいかなかった。
なんとか結婚こそできたが、3年で離婚、なんとかもがいて今年50歳になった。
「人生50年、化天のうちをくらぶれば・・・」
織田信長が詠んだらしい。本当の意味は人間の50年は天界の一日に相当するという意味らしいが、そんなことはどうでもいい。人生100年時代の折り返しに来たわけだ。
山奥の秘湯旅が、ささやかながら自分へのご褒美だ。
山道を歩くとさびれた寺があった。
「沈む寺」、縁起でもない寺の名前だな。まあ、このまま年を重ね、孤独死するのが関の山かなあ。そんな時は、こんなさびれた寺の墓にでもはいるのか。まあ、それもまた、良しかな。
ふと入り口の掲示板が目についた。
「つまずいたのは誰かのせいかもしれない
けど立ち上がらないのはだれのせいでもないわ 峰不二子」
そう、こんな境遇はおれのせいではないけど、まだまだあきらめるのは早い。もう一回頑張ってみるか。
扁額をよく見ると「不沈寺」、全く逆だった。