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kosuketsubota
呪いの臭み(#毎週ショートショートnote)
不幸なことが起きる時には必ずこの匂いがした。
金木犀の香りをソフトしたような優しい匂い。
祖父が交通事故で亡くなった時、父の不倫が発覚し、母がこの家を出ていった時。
この匂いは呪いの臭みだ。
大学を卒業し、社会人になってから毎日が忙しくてそんなことはすっかり忘れていた。
恋することすら忘れ、一心不乱に働いた。会社に認められ、大きなプロジェクトを任されるようになった。気づくと30歳を迎える年頃になった。
「あ~これからどうなるのかな?」
プロジェクト成功のささやかなお祝いで、大好きなケーキ屋さんでケーキを買って、家路についていた。その時、あの匂いがした。
「ゴツン!!」
交差点の角を曲がるとき、人とぶつかり、せっかくのケーキを落としてしまった。やっぱり、この匂い・・・でも小さな不幸でよかった。
「ごめんなさい。あれ桃子さん?中学校一緒だった健太だよ」
「久しぶり・・・」
小学校の頃、片想いだった健太クン。
それから健太クンとのお付き合いがはじまった。
これも不幸なのかな?出会いは別れの始めっていうからね。
それまではいっぱい幸せでいよう。