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釜揚げ師走(#毎週ショートショートnote)

年齢を重ねるとあっという間に時が過ぎ去る。

結婚、子育て、仕事に追われ、何も考える余裕がなかった。
内助の功として家族を支えてくれた妻も去年、旅立った。

それ以降、時が過ぎるのがめっきり遅くなった。去年の12月などは釜揚げされたうどんのように伸びて長く感じられた。それもそうだ、息子夫婦は孫を連れて海外旅行。今年はお受験で忙しいらしい。

今年も釜揚げされたような師走を過ごし、新年を迎えるのかと考えていた。

「あなた、そろそろこちらにどうかしら」

妻の声が聞こえた。

「長い間、お疲れ様、これから二人でのんびり過ごしましょう。多分、二人なら伸びて中額なんて感じないから」

「そうだね、そろそろお前のところに行こうかな」

からだが軽くなった。これから妻と一緒に過ごせる。良かった・・・

とある葬儀場で・・・

「お義父さん、急だったけど、笑顔に見えるね」
「なぜか、おふくろの写真握りしめて、逝ったからね。これで寂しくないかな」

「おじいちゃん、さよなら」

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