深煎り入学式(#毎週ショートショートnote)
桜が満開の入学式。
3人のピッカピカの一年生が15人のお兄さん、お姉さんに迎え入れられた。
この古びた木造校舎での最後の入学式。
翌年からは隣町の小学校に統合される。
「●〇小学校に入学したことをうれしく思います」
ボクが代表で読み上げた。
児童の数より、倍の数の大人がいる入学式。
1年間だけだったが、夏には蝉の鳴き声を聞きながら、汗だくで受ける授業。
冬には隙間風で寒かったけど、ヤカンをのせた薪ストーブの周りに集まり、食べる弁当。
授業中、犬が校庭を走り回る光景が年に数回。
想い出はきりがない。
ボクはあの小学校に最後に入学した児童だった。
今でもよく思い出す。
セピア色だけどあの渋みがかった校舎の入学式を。
まさに今飲んでいる深煎り珈琲のような、、、
まさに深煎り入学式。
大人になるとわかる味。