事実 隣の丘に住む猿から、お前の一族は蟹の襲来があってもいつもなにもせず、やれお前が戦え、やれお前が戦えと人に辛い思いばかりさせている。その点どう考えるのか。と問われた。 解釈 隣の丘に住む猿は、自分たちは割を食っていると思っており、なんとか現状を変えたいと望んでいる。 一緒に戦って欲しいと思っている。 推奨される行動 隣の丘に住む猿の心に寄り添い、しんどさを共有し時には共に蟹と戦い、傷を共有する。
夜の8時半、帰りに買った小さなブーケをわざとらしく背中に隠して、君に手渡す 少し眺めてから丁寧に整えて、いつもの小ぶりな花瓶にさす 「面倒だから買ってこないでよ」と君は笑う 「また買ってくるよ」と僕は言う
どこかに向かって歩いているようで、ぐるぐると歩いているだけなのかもしれない。 ぐるぐると歩いているようで、どこかに近づいているのかもしれない。 速度も熱も不確かで不正確。 遠くまだ見えない光の中に。あるいは、もう過ぎ去った綺麗な色彩の日に。
【話の通じるおとこ】 周囲の人々は、薄暗くて湿ったカビ臭い空気の中で、汗と安酒でくたくたになった髪をかきあげながら、肩を抱き合い冗談を言い合っている。 彼らは何日もシャワーを浴びていないのだろう。 体はベタつき、擦り切れてよれた襟のシャツ、くたびれたワンピース、色がくすみ白くなったレザージャケットを着ている。 そして、そこにまた今日の汚れを重ねている。 みんなの目がギラギラと輝いている。アルコールと音楽に日々溺れているのだろう。見た目の若々しさは失っているものの、体からは活気
普段から友人とシェアをしている軽自動車を少し離れた広い道路に停め、僕は長い壁沿いを歩いた。 この長い壁の内側には広大な土地が広がっているのだろう。 指定の場所に到着したのは、指定された時間の10分前だった。時計としても使っている携帯電話の画面を確認し、額と首筋に吹き出た汗をハンカチで拭った。携帯電話の画面にひびが入っている。 目の前に鉄製の重厚な門扉があり、門柱には木製の表札がかかっている。 表札には漢字で「不知火」と書かれている。 僕はあの人が不知火という名前であるこ
「ラグビーは頭を使うスポーツや。」 「考えなあかん。」「今、グラウンドで何をすべきか考えろ。」「もっと考えろ。もっと頭を使え。」 僕が幾度となく、指導者、先輩たちから言われ、優れた先人たちの著書などから学んだ言葉だ。 しかし、白状すると現役時代に「考えろ」の本質的な意味を理解し、行動することは出来なかった。 僕は妄信的に設定された練習メニューや自身の思い込みでの練習を繰り返していた。 それでは当然に監督やコーチの期待を超えるプレイは出来ず、試合に出られる機会も勝ち取れるは
「その冗談はおもろないわ。」と誠一は、クスクス笑いながら言った。 空は、誠一に失望している様子だ。 「私、もっと気持ちが通じ合う人と時間を過ごしたいのよ。よかったのははじめの3週間ね。それ以降はマラソンの授業と同じで嫌な気分なのよ。」 誠一は、全く予想だにしない空からの発言に内心少し苛立ちながらも、何とか空の気分が良くなるように愛想ふりまいた。 「なんでや。今の今まで好きや好きや言うてたやないか。僕も君のことが実際に好きやし、付き合ってからもどんどん更に好きになってんのに