【読書日記】3/21 短歌と俳句、どちらも大人気ですね。「短歌と俳句の五十番勝負/穂村弘 堀本裕樹」
短歌と俳句の五十番勝負
穂村弘 堀本裕樹 新潮文庫
短歌の穂村弘さんと俳句の堀本裕樹さんが、出された50のお題に対してそれぞれ俳句と短歌、エッセイを添える形式の本です。
どんな人がどんなお題を出しているかということ、そのお題へのアプローチの仕方、
そして詠まれた短歌と俳句そのもの。
いくつもの段階での楽しみ方ができる本です
どの対決も味わい深いものでしたが、私が好きなのは以下の5つです。
12 「謀反」 出題者:北村薫(作家)
どろどろのバナナの皮を抱きしめて猿が謀反の夢を見ている 穂村弘
炎天の校区飛び出す謀反かな 堀本裕樹
36 「楕円」 出題者:竹内亜弥(女子7人制ラグビー日本代表)
猫パンチされてほっぺた腫れあがる楕円軌道の惑星の夜 穂村弘
切り口の楕円うつくし胡瓜漬 堀本裕樹
44 「瀬戸内海」 出題者:田丸雅智(ショートショート作家)
触れた者みな海賊になるという瀬戸内海のお化けかぼちゃよ 穂村弘
蝶生まれて瀬戸内海の綺羅となる 堀本裕樹
45 「おいてけぼり」 出題者:小松孝知(運送業)
妹の寝顔の上の蟻を吹くおいてけぼりのアリスの姉は 穂村弘
化石てふ置いてきぼりや青時雨 堀本裕樹
50 「ぴょんぴょん」 出題者:馬場あき子(歌人)
ぴょんぴょんとサメたちの背を跳んでゆくウサギよ明日の夢をみている 穂村弘
ぴょんぴょんと熊楠跳ねん秋の山 堀本裕樹
私が特に好きなのは「おいてけぼり」です。
穂村さんの歌の「アリスの姉」。しっかり者の長女は独り目覚めて気ままな妹を見守らなければならない対比。
堀本さんの「化石」も命の輪廻の輪から取り残されて気の遠くなるような年月を地中にいた寂しさと瑞々しい青時雨。
どちらも、誰か(何か)と比べるから「おいてけぼり」を感じてしまう、しいん、と胸の奥がちりちりと痛む孤独感。どちらの切り口も魅力的です。
それぞれのお題で、おこがましくも自分ならどんな作品を作るかな、と考えるのも楽しいです。