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【読書日記】5/10 「白萩」の与謝野晶子と「白百合」の山川登美子。「山川登美子歌集」
山川登美子歌集
今野寿美編 岩波文庫
与謝野晶子の歌と恋のライバル、山川登美子。
若狭の裕福な士族の家に生まれた登美子は、与謝野鉄幹に才を見出され、晶子とともに「明星」で歌人として名を馳せ、師である鉄幹に恋をしますが、家の方針で結婚。
しかし、夫は結核で若くして亡くなり、登美子も感染し29歳の若さで亡くなります。
明星に集った女性歌人たち。
登美子は「白百合」、晶子は「白萩」と称されたといいます
ちなみに他の女性歌人は「白藤」「白桃」「白梅」「白菫」だそうで・・・もちろん彼女たちの歌の魅力あってこそではありますが、さぞかし世間の耳目を集めたでしょうね。
「明星」主催の与謝野鉄幹。弟子であり後に妻となった晶子の名声に押されて腐っていた(そして、晶子にパリ留学させてもらった)という話も聞きますが、彼がいなければ晶子も登美子の才も世に出なかった。
女性関係などいけ好かない面もありますが、鉄幹のプロデュース力は一流だったのだろうなと思います。
歴史には不思議とこのように「会うべくして出会った」「同じ時空に集った」関係というのが存在します。その天の配剤のような歴史模様はいつも私を魅了します。
登美子さんの歌は、素人の私がどうこういうのはおこがましいのですが、晶子さんの熱情がほとばしるような歌とはまた違って、恋情が静かに満ち満ちてあふれだすような趣です。
白百合は純白でうつむいた清楚な姿をしていますが、甘くて艶なる香り高い花でもあります。登美子さんが好きで歌に詠み込んだ花。まさにその風情だと思います。
合同詩歌集「恋衣」より山川登美子作品「白百合」より 10首選んでみました
髪ながき少女とうまれしろ百合に額は伏せつつ君をこそ思へ
この塚のぬしを語るな名を問ふなただすみれぐさひとむら植ゑませ
とことはに覚むなと蝶のささやきし花野の夢のなつかしきかな
手づくりのいちごよ君にふくませむわがさす紅の色に似たれば
指の環を土になげうちほゝゑみし涙の面のうつくしきかな
それとなく紅き花みな友にゆづりそむきて泣きて忘れ草つむ(晶子の君と住の江に遊びて)
見じ聞かじさてはたのまじあこがれじ秋ふく風に秋たつ虹に
幸はいま靄にうかびぬ夢はまたしづかに降りて君と会ひにけり
地にわが影空に愁の雲のかげ鳩よいづこへ秋の日往ぬる
あなかしこなみだのおくにひそませしいのちはつよき声にいらへぬ
自分が遠い昔に忘れてしまった「春」の時代を思い出します。
十代の頃、読みたかった歌です。