【詩歌の栞】6/16 和菓子の日に「落ちこぼれ/茨木のり子」

今日、6月16日は和菓子の日。全国和菓子協会のHPからその由来をご紹介します。

6月16日は和菓子の日
西暦848年(承和15年・嘉祥元年)の夏、仁明天皇が御神託に基づいて、6月16日に16の数にちなんだ菓子、餅などを神前に供えて、疫病を除け健康招福を祈誓し、「嘉祥」と改元したという古例にちなみます。

全国和菓子協会HPより

その後、鎌倉時代、江戸時代と時代を超えて、また、宮中、武家、町人など身分や立場を超えて「嘉祥の日」のしきたりが受け継がれてきたといいます。
おめでたい謂れもありがたいですが、近くの和菓子屋さんで「和菓子の日」にちなんで催事があるのがうれしいところです。

そして、「和菓子の日」で思い出すのは この詩。
茨木のり子さんの「落ちこぼれ」

落ちこぼれ
落ちこぼれ
 和菓子の名につけたいようなやさしさ
落ちこぼれ
 いまは自嘲や出来そこないの謂
落ちこぼれないための
 ばかばかしくも切ない修行
落ちこぼれにこそ
 魅力も風合いも薫るのに
落ちこぼれの実
 いっぱい包容できるのが豊かな大地
それならお前が落ちこぼれろ
 はい 女としてはとっくに落ちこぼれ
落ちこぼれずに旨げに成って
 むざむざ食われてなるものか
落ちこぼれ
 結果ではなく
落ちこぼれ
 華々しい意志であれ

茨木のり子「落ちこぼれ」

「落ちこぼれ」を和菓子の名につけたいようなやさしさ、といい、落ちこぼれの実をいっぱい包容できるのが豊かな大地である、と。

まことにそうだ、と思いつつも、自分やこどもたちは「世間並」であることを望む性根を捨てきれません。豊かな大地となるには肝の太さと覚悟が足りないなあ、とため息がでるのです。

甘いものでも食べて・・・少しゆったり過ごしましょうか。