高木康子さんインタビュー②「いま生きとるんが天国ちゃうかな、確かに」
○父ちゃんは「ザル」ていうし、笑
ーー「お金に執着がない」っちゅうことはさ
お金がなくなったときも、ちょうどいい
タイミングで入ってきたりとかするん?
康子さん(以下・康):
いや、そんなこともないわー。ちょうど
いいタイミングで入ってきたりとかな、
そういうのあんまり信じてないし。笑
ーーなんかさー、全部使い切ったなっていう
ときに、ちょうど巡ってくる人とかおる
らしいやん。
そういう意味ではないんやな。
康:ああ、そういう意味ではない。たぶんね
あんまり執着がないんやと思うんやわ、
もともとな。
ーー(お連れ合いの)逸夫先生もそうなん?
康:(きっぱりと)父ちゃんは違う。うちの
家(康子さんの実家)の場合は、お金が
ないのに「ある」て言い続けたんや。
ーーでもさー、その方が豊かよな。
康:んー。
だからなんかまあ金には汚くないわな、
全然。なくなったとしてもあまり気にも
せえへんわなぁー。なんなんやろーな、
よう分からへん。「もっと気にせえ」て
感じなんやろーな。父ちゃんはわたしの
ことをザルていうし、笑。
ーーザル?
康:フフフフフフ!!
○「お金もらってなかったんよ」
ーーそやけど高木先生(康子さんのこと)は
作家として一生懸命働いてきたのになぁ
康:そやなぁー。まあでもそのー、あんまり
関係ないわな、そこは。
(以前)離婚したことがあるんやけど…
その相手の男性というのがな。結婚した
にも関わらず、部屋代を取ったんやな。
例えばこう、3DKとするやん。
ここがわたしの部屋とするやん?
…その家賃、取られたんよ。
ーーえ!どうして?
康:「結婚したからというて、僕はあなたを
養いませんよ」と。自立やな、経済的な
自立。
だからお金もらってなかったんよ。
縁ないんよ、割とお金には。
ーーえ、いつ(前の)結婚しちょったん
康:結婚はねー22歳ぐらいんとき。
ーーで、いつ別れたん
康:30歳ぐらいんときかな。
○表現する人が好きやってん、彼は
ーー以前の結婚生活って結構長かったんやな
康:長かったんよ。彼は高校の、化学の教師
やったんよ。でもアーティストていうか
何か表現する人が好きやってん、彼は。
小説家にも、なりたかってん。それに、
絵描きにもなりたかったんやなぁ。絵も
描いてあった。ほんで、わたしが写真を
やってたもんやから、写真にもハマって
しまって…
でもなんていうのかな、彼には…家庭の
事情があって、ものすごく暗い部分が、
あったんやな、夜みたいな。
で、それがもう癒すなんかでけへんわな
相手のことを。家庭ていうものを嫌な人
やったから、家でご飯とか、怒るんよ。
もう食べるもんは、ペーパーになっても
いいってぐらいの、海苔とか。
だから、どっかよそでご飯を食べるのが
当たり前みたいな生活やった。
ーー食べることに意欲がないっちゅうか…、
執着がなかったん?
康:そう。
でもな、ものを作ることだけが好き。
道具やったりとか。
ーーものを作ってる高木先生(康子さん)が
好きやったん?
康:そうなんよ。
「家でリラックスしておる」なんか考え
られへん。すごい緊張感のある…。
ご飯を作ったりとかしいひんかったけど
でも、時々作ることもあるんやな。
「たまには菜っ葉食べやなあかんな」と
思って、台所でほうれん草湯がいとって
…湯がき終わって。で洗濯もしとって、
旦那のパンツを干したんや。その瞬間に
もう、この今の生活が嫌になったんや。
そのまま、家を出たんや。
連載のタイトルとなった「いま生きとるんが天国ちゃうかな、確かに」という言葉は、8回続きの連載終盤に登場しますので、よかったら探してみてください。
(※連載は1日置きの更新を予定しています)
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