グラウンド2

高木康子さんインタビュー②「いま生きとるんが天国ちゃうかな、確かに」

高木康子さんは、1958(昭和33年)3月3日、大阪・南河内生まれの60歳。28年前に大分県に移住。現在は竹田市で機織りをしたり、染色をしたり、布の服を作ったりしています。インタビュー記事①には、移住ののち、教室を始めた頃のお話を収録しました。「小さな頃から結構お金は与えられた」と話す康子さん。聞き手である三浦は、その本当の意味が分からずにただ、うなずいているばかりでした。しかし…話の内容はどんどん、聞き手が思いもしなかった方向へと、深まっていきます…

○父ちゃんは「ザル」ていうし、笑

ーー「お金に執着がない」っちゅうことはさ
  お金がなくなったときも、ちょうどいい
  タイミングで入ってきたりとかするん?

康子さん(以下・康):
  いや、そんなこともないわー。ちょうど
  いいタイミングで入ってきたりとかな、
  そういうのあんまり信じてないし。笑

ーーなんかさー、全部使い切ったなっていう
  ときに、ちょうど巡ってくる人とかおる
  らしいやん。
  そういう意味ではないんやな。

康:ああ、そういう意味ではない。たぶんね
  あんまり執着がないんやと思うんやわ、
  もともとな。

ーー(お連れ合いの)逸夫先生もそうなん?

康:(きっぱりと)父ちゃんは違う。うちの
  家(康子さんの実家)の場合は、お金が
  ないのに「ある」て言い続けたんや。

ーーでもさー、その方が豊かよな。

康:んー。
  だからなんかまあ金には汚くないわな、
  全然。なくなったとしてもあまり気にも
  せえへんわなぁー。なんなんやろーな、
  よう分からへん。「もっと気にせえ」て
  感じなんやろーな。父ちゃんはわたしの
  ことをザルていうし、笑。

ーーザル?

康:フフフフフフ!!

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↑後日写真取材に伺った日に「ポン」と手渡された康子さんの特製おにぎり。海苔がぐるぐる巻かれていて、しっかりとした塩気があってとても美味しいんです


○「お金もらってなかったんよ」

ーーそやけど高木先生(康子さんのこと)は
  作家として一生懸命働いてきたのになぁ

康:そやなぁー。まあでもそのー、あんまり
  関係ないわな、そこは。
  (以前)離婚したことがあるんやけど…
  その相手の男性というのがな。結婚した
  にも関わらず、部屋代を取ったんやな。
  例えばこう、3DKとするやん。
  ここがわたしの部屋とするやん?
  …その家賃、取られたんよ。

ーーえ!どうして?

康:「結婚したからというて、僕はあなたを
  養いませんよ」と。自立やな、経済的な
  自立。
  だからお金もらってなかったんよ。
  縁ないんよ、割とお金には。

ーーえ、いつ(前の)結婚しちょったん

康:結婚はねー22歳ぐらいんとき。

ーーで、いつ別れたん

康:30歳ぐらいんときかな。

康子さんは淡々と、離婚した経験があることや、以前の結婚生活について語りはじめていました。

○表現する人が好きやってん、彼は

ーー以前の結婚生活って結構長かったんやな

康:長かったんよ。彼は高校の、化学の教師
  やったんよ。でもアーティストていうか
  何か表現する人が好きやってん、彼は。
  小説家にも、なりたかってん。それに、
  絵描きにもなりたかったんやなぁ。絵も
  描いてあった。ほんで、わたしが写真を
  やってたもんやから、写真にもハマって
  しまって…

  でもなんていうのかな、彼には…家庭の
  事情があって、ものすごく暗い部分が、
  あったんやな、夜みたいな。
  で、それがもう癒すなんかでけへんわな
  相手のことを。家庭ていうものを嫌な人
  やったから、家でご飯とか、怒るんよ。
  もう食べるもんは、ペーパーになっても
  いいってぐらいの、海苔とか。
  だから、どっかよそでご飯を食べるのが
  当たり前みたいな生活やった。

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↑作品が並べられた教室の窓辺から、外を眺める

ーー食べることに意欲がないっちゅうか…、
  執着がなかったん?

康:そう。
  でもな、ものを作ることだけが好き。
  道具やったりとか。

ーーものを作ってる高木先生(康子さん)が
  好きやったん?

康:そうなんよ。
  「家でリラックスしておる」なんか考え
  られへん。すごい緊張感のある…。
  ご飯を作ったりとかしいひんかったけど
  でも、時々作ることもあるんやな。
  「たまには菜っ葉食べやなあかんな」と
  思って、台所でほうれん草湯がいとって
  …湯がき終わって。で洗濯もしとって、
  旦那のパンツを干したんや。その瞬間に
  もう、この今の生活が嫌になったんや。
  そのまま、家を出たんや。

以前、離婚を経験していたということは、聞き手も少しだけ知っていました。だけどその結婚生活がそんなに長く、暗いものだったとは。このあと話はまた、深い深い方向へと、進んでいきます。※インタビュー③へと続きます

連載のタイトルとなった「いま生きとるんが天国ちゃうかな、確かに」という言葉は、8回続きの連載終盤に登場しますので、よかったら探してみてください。
(※連載は1日置きの更新を予定しています)

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