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おじいちゃん、ありがとう。僕は生きてます。
おじいちゃんの形見であるコインアルバム。
一度気になって価値を調べに買い付け店に査定に行ったが、ほとんど錆び付いており価値もなく、銀行で両替してもらったほうが手数料もかからないのでお得と言われるくらいだった。
スーツケース一個分の私物で群馬県に出稼ぎに来ていた中に、捨てることはできないものとして入っていた。
今週金曜日が給料日で節約期間もあと5日。
だいたい1日1000円程度で過ごしてきたが、改めて現金を数えてみると、残り3000円、1日あたり使える金額600円。
作業に慣れていないバキバキの身体にしっかりエネルギーを補充する食堂のご飯、朝200円、昼400円、夜400円。
夜カップヌードルを食べるお金も残っていない。
日勤仕事終わりで足腰を頻繁に使ったバキバキの身体で2km先にある古銭買取店に出向いた。
880円に変わった。
ブックオフで洋服が1000円で売れた。
無事に給料日までのご飯代を手に入れた。
帰りの2kmはおじいちゃんとの思い出に浸りながら寮までゆっくり歩いた。
おじいちゃん家に行く時、夜ご飯は毎度焼肉に連れて行ってくれることが多く、子供の頃いつも楽しみにしていた。
大阪の下町の商店街を抜けた先にある、焼肉屋 よっちゃん。
20席程しかない小さな焼肉屋さん、よく笑う女将さん、帰り際少しニコッとしてくれる大将、アルバイトでコロコロ変わる20代前後のお姉さん、そしていつも予約する奥の座敷席。
一番の思い出は韓国風冷麺。
コシのある麺をしっかりハサミで切って、まずウサギに切ってくれているリンゴを食べ、麺をずるずるすする合間に、固めのチャーシュー、半切り卵、キムチをバランス良く食べる。
焼肉の味も格別に美味しいのだが、この〆の韓国風冷麺を頼まなかった日はないくらい大好きだった。
普段見ないコインアルバムの硬貨を一枚一枚見ていた昨夜、韓国の小銭もたくさん混じっていたことに気付いた。
そういえばよっちゃんも韓国風焼肉だった。
よく中南海というタバコも吸っていた。
あの時はそんな話もしなかったけど、よく韓国や中国、海外にも行っていたのかな、と。
帰りの商店街のおもちゃ屋さん、本屋さんで好きなものをよく買ってくれて、太っ腹なおじいちゃんに母親が遠慮がちになっていたくらいだった。
いつもドスンと背中で語ってくれていたおじいちゃんとの思い出がコインを通してピカピカと磨かれて語りかけてきてくれた。