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やったよ「新すばらしきこのせかい」(記録 2021/08/01)

渋谷、救ってきました。

非常に面白いゲームだった。最高だった。すばらしきこのせかいが少しでも好きな人間は全員やってほしい。

以下ネタバレあるよ。

プレイしてなくて、かつネタバレが嫌なら早めに引き返して買ってプレイしてね。私は全然平気だからこういう時バスバス読んじゃうので「全員引き返せ」みたいな言い方は好きじゃない。



言ったからな! もう私に文句言うなよ!



すばらしきこのせかい最大の特色である「バッジを用いた戦闘」を発展させ3Dマップを縦横無尽に駆け巡る戦闘システムは非常にスピーディーで面白く、RPGゲームの新機軸としてよくできていた。

戦闘は非常にゲームスピードが速く、エフェクトも多いため一見して何をやっているのかわからないが、NORMAL以下ならバッジを調整すればかなりのゴリ押しも効くため複雑なシステムながらとっつきやすく派手で楽しい。

個人的にすばせかの難易度はアイテムドロップのためのシステムという面が大きいと思っているため、難しいならバスバス難易度下げていいと思うよ。

「とにかく名曲揃いのBGM」「和製コミックとグラフィティをイメージしクールに統一されたグラフィック」「ケレン味の強すぎるキャラクター」「奥深い難易度とドロップレートの相互関係」「深すぎるやりこみ要素と取り返しのつかない要素のなさを両立したチャプターシステム」「キャラクターごとの好物設定・シークレットレポートなどオタク的好奇心をくすぐる凝った世界観」など「すばらしきこのせかいから引き継いだ長所」もしっかり残っており、まさに前作プレイヤーが望んでいたとおりの続編と言える。

特に楽しいと思ったのはアドベンチャーパート。すばらしきこのせかいらしいトゥーンかつクールなデザインラインで3Dモデリングされた渋谷は(特に東京住みで渋谷にも定期的に行く私からすれば)歩いているだけで楽しく、様々な発見がある。サウンドサーフが手に入ってからは「名BGMに音ハメしながら渋谷をスタイリッシュに駆け抜ける」と、単なる移動パートがすばらしきこのせかいのサビを全部盛り込んだゲーム体験として機能しており、移動しているだけでゲームの世界と一体化したかのような没入感を味わえる。ペルソナ5もそうだけど触っているだけで楽しいゲームが一番いいよ。

ストーリーも「すばらしきこのせかいの続編」としてダイナミックかつ綺麗にまとまっており、「理不尽な死神ゲームに巻き込まれた主人公がゲームの裏に隠れた陰謀に触れ、やがてゲームを悪用する黒幕から渋谷を救うための戦いに挑む」ストーリーラインそのものは前作と完全に一致しながらも「パーティメンバーの多いチーム戦・他参加者との明確な争いによる濃い人間模様」「徴収されない参加料・ゲームを永久に続けることをよしとする運営など、前作を知っていれば違和感を覚える様々な要素」「前作との密接なクロスオーバー」などストーリーに引き込むフックが非常に多く、最後まで先の読めない新鮮な気持ちでプレイできた。

旧主人公組の総登場や渋谷・新宿のUG、RGをまたいだ協力体制による最終決戦などすばらしきこのせかいのファンディスクとしても非常に秀逸であり、すばらしきこのせかい好きならどこを遊んでいても楽しめる一本。

「誰にも自己決定権を委ねたくない」初期ネクのオルタナティブである「自己決定権を持つのを億劫がる」リンドウを主人公とし、対になる二人を捉えながらも「他者と関わることによる責任の支払い」「己を主張することの尊さ」「個を持ち、他と関わることによって本当に今を楽しめる」命題を一貫させることですばらしきこのせかい全体を通したメッセージ性や雰囲気を統一し、(3年後ネクが異様に完成した人物というのもあるが)「前作主人公と現主人公の共演」という危ない橋を渡りながらも一切バランスを崩さない構造は見事。

特にいいと思った手法は(ストーリー的な)ラスボスであるクボウがいっそ雑とも言えるデウス・エクス・マキナ的な処理であっさりと退場した部分。

一見処理に困ったキャラを適当にうっちゃったようにも見えるが、「リンドウが倒すべき敵をもっと強い人が勝手にやっつけておいてくれた」形は序盤のリンドウが望んでいた「自分が決めるなんて面倒くさい」「誰かのせいにしたいので誰かがやっておいてほしい」「強い人が手伝ってくれればどうにかなる」への意趣返しとして綺麗にハマっている。

ネクの「渋谷は雑然としていて嫌いだ、世界は俺一人でいい」に対しての「すなわちそこはすばらしきせかい」のように、すばらしきこのせかいは「序盤の主人公が望んだ世界」を「一旦歪んだ形で実現させ」、「それを否定する」ことで成長を生む手法を取るのが上手い。「僕が決めよう」へのカウンターを含めてすばらしきこのせかいらしいカタルシスを生む名采配だと思う。

あとこれは個人の性癖だけどネクとかビイトみたいな前作キャラがレジェンドとして登場する手法めちゃくちゃ好きなんだよね。特にビイトが出た辺りの「ネクは最強だった」「ネクじゃなくて期待外れだった」みたいなネクの持ち上げ方・その上でしっかり強キャラの風格を見せるビイトを見てると興奮してくるので性癖に合致した。

他に気に入ったキャラは(前作からバリ推しのゼタ様を除けば)ナギセン。ああいうメガネのオタクが好みというのもあるが、一見他者拒絶の陰キャのように見えて実は他人をよく観察した上で「合う人」「合わない人」を区別しており、その上で他人に怯えたり依存するのでなくヨソとウチのラインをしっかり引いて手を差し伸べられる人には差し伸べる、地に足のついた善人なのが好感を持てる。

フレットに対する態度の軟化が異常にパッキリしている・レガストを「コミュニケーションの教科書」と言い切る・そもそも一人称がおかしい辺りからしてネクほど他者との関係性が完成した人間としてデザインされていないだろうが、その辺りも理解した上で自分にできる範囲で他人と関わりコミュニティを形成・維持しようとする姿勢に好感が持てた。エセ占いが得意な辺りからも日頃からコールドリーディング的手法で人を見ているのが伝わってくる。

ストーリーもシステムも最高なだけに「前作をプレイしていないが面白いRPGを遊びたい層」に勧められないのが少し残念。アニメのあらすじくらいはゲーム内で閲覧できてよかったんじゃないかなと思う。

システム的な瑕疵も何点かあって、既読文章スキップはもうちょい速くていいんじゃないか、なんならクリア後チャプターは何かのボタンで選択肢orイベント終了まで飛ばさせてくれていいんじゃないかと思った。どうせ何十回も周回するゲームなんだし。

あとこれはマジで最悪だからできればアップデートで改善してほしいんだけど、ダイブが「何度か連戦をやらされ、戦闘中は逃げられない」「一回クリアするとチャプターが終わるまで二度とプレイできない」「チャプターをやり直すとダイブに行くまでに何度かイベントを踏まされる」のでリスタートにとことん向かない仕様な割に「クリアタイムによって報酬がどんどん良くなる」せいで「ある一定ラインを超えたらハードウェア側でリセットするor放置して敵に殺してもらう」のが最適解になってしまうのは本当に問題だと思った。

ダイブから逃げられるようになるだけで解決するから、せめて「ダイブ中は逃げるボタンが頭からやり直すボタンに変わる」みたいな仕様を付けてほしかった。

ストーリー面で言うと、これはすばらしきこのせかい全体で気になる点なんだけど、クリアしてから登場人物を全員洗い出して生存・死亡でチェックをつけると「顔が綺麗な奴から順に生き残ったなあ……」ってなってちょっと冷めるよね。今後のメディア展開からすると仕方ないんだけどさ。

逆に言えばこれくらい細かい点をつつかないと欠点が出ないほどいいゲームだった。前作プレイヤーはマストプレイだし、これをプレイするためにすばせかファイナルミックスやアニメを履修する価値はある名作。独立した一個のゲームだったら本気でゲーム史に名を刻むレベルの名作だったのに(これに関してはゲーム一本であんなに重厚なストーリーを完結させたペルソナ5がすごすぎる)。

そういえば今回の死神のモチーフって花札だよね。ゼタ様、ススキチ、シイバで猪鹿蝶だし、ショウカ=スワロウさんは桜に幕+柳にツバメだし、ラスボスは桐に鳳凰だし。

ツグミは見た目からして松に鶴、アヤノがイーリスカンタスでアヤメに八ツ橋、カイエが小野道風にカエルかなと思う。

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