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小説企画~四週目~

19時台をすぎてしまった!!!

誰も待っていないこの企画、今週も負けずに更新です!


本文


 さっきまで小学生達が駆けていた住宅街の細い歩道に、パンの耳の切れが落ちている。拾うのが正義なのだろうが、得体のしれないそれを素手で拾うのはとても危険だ。それに、これはきっと…。そうして地面を見つめているとどこからか一羽のカラスが飛んできた。地面に落ちている耳を加えて、こちらを一瞥し、緩やかに空を駆け上がっていく。羽の光沢がきれいだ。燃やすとよく燃える、と聞いたことがある。今飛んで行ったカラスも、よく燃えるだろうな。ちょっとホットサンドの匂いがするかもしれない。
この街は我ながら完璧だ。パズルがかちっとはまったように、無駄がない、道に吸い殻一つ落ちていない。朝の道で目を光らせるカラスもいない。影のある少年はいるが、自力で脱出口を見つけようとしている。起承転結の集合である人生を必死に生きているんだなぁ。などと臭いことを考えながらアパートの階段を上る。カンカンカンという安っぽい音が響くが、間違いなくここは楼閣である。街に溶け込んでこそ、神と言えるのではないか。僕は神だ。僕がそう自覚しているのだから、誰にも否定できまい。
畳の上に、ちゃぶ台と、畳んだ敷布団とがある、シンプルな部屋だ。シンプルこそ、何よりも美しい、だからあえて質素に、できるだけ物を置いていない。スーツも、ネクタイも、旅行鞄も、すべて捨てた。いや、そんな環境破壊的なことをしてはいけない。全部丁寧に、他人に対価をいただいて譲りました。今頃、どこかでまた、世界を飛び回っていることでしょう。
水道をひねり、コップが八割埋まるくらいの水を注ぐ。それを豊かといえる心の余裕…。
しみじみとした感慨に包まれながら、敷布団に背中を預けた。
清々しい朝。湿り気のある風が吹きこんでいた。部屋の隅、天然の換気扇から。
いつものように公園へ行くと、少年が柵の上に腰かけて街を眺めていた。ポシェットを肩から提げている。「
「学校は?」
僕は少年の横に腰かけるや否や尋ねた。少年は笑って言う。
「しばらく、行かないことにしました」
「大丈夫なのか?」
「わからない。そんなこと」
「そうだな」
どうにかして、出口を探している、そういう人間を否定したり、その歩みを止めるようなことを言ってはいけない。僕の役割はあくまでも、見守ることなのだ。
「また、あのひと来ますかね」
「どうだろうな」
女神のことを少年も待ちわびている。僕らはしばらく並んで、彼女の訪れを待つことにした。


ではまた来週

今回から読んでくださった方がいらっしゃいましたら、絶対的に最初から読んでくれた方がいいです。

おねがいします!!!

また来週の更新まで頑張るぞ!

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