「岩倉アリア」岩倉周とアリアの関係性についての感想・考察【ネタバレ含む】
「岩倉アリア」クリアしました。サイドストーリーを全て見た後にもいろいろと謎が残りましたが、登場人物の感情やそれに至る背景など、無理なく受け止められる解釈をあれこれ考えるのがおもしろかったです。
特に、岩倉周のアリアに対する異常ともいえる執着は大きな謎でした。
アリアと壱子の関係性について考察されている方が多いですが、サイドストーリー「AMANE 1932」「AMANE 1944」「AMANE 1949」を中心に、周とアリアの関係性について考察してみました。明確に述べられていないことも多いため、想像により補完している部分もあります。
ネタバレを多数含むため、未クリアの方は見ないことをおすすめします。
↓↓↓以下、ネタバレ↓↓↓
結論
周は、実は本当にアリアの父親なのではないかと思っています。
本編中でアリアが否定しますが、アリアは周が本当の父親であることに気づいていません。周のみがそのことを知っています。
作中でアリアが周のことを「お父様」と読んでいるのは、この物語に仕組まれた壮大な仕掛けのように思えます。
さらに、もしそうだとしたら、そして壱子がアリアから生まれた子なのだとしたら、周は壱子の祖父にあたる可能性が出てきます。
周は感情や行動に本当に謎が多いですが、そうなるに至った背景を、周を主軸に時系列に沿って整理・解釈していきます。
恒朋への憎悪
大御木天根はその美貌から「神の子」として天遣会で崇められる存在でした。しかし、成長に伴ってその美貌は失われてゆき、遂には祖師である祖父から「神の子」の立場から降ろされてしまいます。祖父は天根に、天遣会の勢力拡大のため旧華族に接触するよう指示し、天根は「戸田周」として久永家へ使用人として送られます。
かつては崇拝対象として天遣会の中心にあり、何不自由ない暮らしを送っていたのに、美しさが失われたことで体よく天遣会中枢から追放され、打ちひしがれていた周を、久永恒朋は優しく迎え入れます。周は恒朋から受ける家族的温かさに初めて触れ、次第に恒朋を慕うようになりますが、恒朋が周を寵愛したのは家族的愛情からではありませんでした。やがて恒朋は周を性的に搾取するようになり、恒朋を慕う気持ちを裏切られたと感じた周は、恒朋を激しく憎むようになります。
恒朋への復讐
ある日、恒朋が妻を連れて周の前に現れます。恒朋と妻はなかなか子ができず苦労していることを、周は使用人をしながら知っていました。恒朋への復讐のため、周は恒朋の妻と関係を持ちます。それと同時に周は、周が久永家へやってきた本来の目的である天遣会への入信を子宝に恵まれない夫妻に勧めます。そしてついに、恒朋の妻は周との関係により娘を出産します。
それが「ゑる」です。
恒朋の妻は周との関係を恒朋には決して明かしませんでした。「岩倉ゑる」は恒朋と妻の間にできた子ということで、恒朋には認知されます。また、子宝に恵まれたのは天遣会のおかげと考えた恒朋は、天遣会に深く傾倒するようになっていきます。
恒朋は旧華族の血筋でしたが庶子だったため、本家筋の「岩倉」姓を名乗ることはできませんでした。しかし、本家で世継ぎが現れない中、「ゑる」が誕生したことで、家系を継承する権利を手に入れることになります。そこで恒朋は「久永」姓ではなく、「岩倉」姓を名乗るようになります。
周は恒朋への復讐心から恒朋の愛する妻と関係を持つに至りましたが、その結果うまれた「ゑる」によって、恒朋は由緒ある旧華族という世界に接近することになってしまいました。恒朋への復讐の次なる段階として、恒朋に舞い込んだ幸運を無きものにするため、周は岩倉家の乗っ取りを計画します。そのために周は、恒朋への本心をひた隠し、恒朋の右腕となることを決意します。
神の子
1938年、ゑるが5歳のときに、恒朋一家は裏霞ヶ関から西ヶ原の屋敷へと引っ越します。天遣会に傾倒していた恒朋は、屋敷を天遣会に関する趣向を凝らした造りに改修しました。
ゑるは神聖なまでに美しい少女として成長し、次第に「神の子」として天遣会の崇拝対象となっていきます。その様子を、使用人である周は常に見ていました。自らの娘が美しさで崇拝を集めるのを、かつての自分の姿と重ね合わせ、その崇拝が美貌の劣化とともに終わりを迎えるところを見届けたいと思うようになっていきます。
戦争がはじまり、周も群馬の工場に勤労動員されました。あらゆる手段で兵役を回避していた周でしたが、1944年、ついに前線配置を命じられる気配を悟ります。「ゑる」の結末を見届けるため、兵役を回避するために周は自ら左目をえぐります。視力に難ありということで兵役を免れた周は屋敷に戻ることになります。
戸田周から岩倉周へ
妻を亡くし、自らの健康にも不安を抱えた恒朋はすっかり弱っていました。恒朋は、長年使用人として自分に仕えてきた周のことを深く信頼し、自身の右腕と思うようになっていました。恒朋は自身が経営していた「恒光貿易」の経営を周に託します。そして、恒朋はこの世を去ります。
両親を亡くし、一人残された「ゑる」を周は養育します。今や「ゑる」の美しさが集める崇拝は絶大なものになっており、周自身もその美しさに畏れを感じていました。周は「ゑる」に「岩倉アリア」を名乗るよう、また、崇拝にふさわしい象徴として振舞うよう、徐々に教育していきます。
岩倉家の乗っ取りと、「岩倉アリア」の美しさの最期を見届けるという目的の総仕上げとして、周は岩倉アリアとの結婚を構想します。岩倉家に婿養子に入ることで、自分が岩倉家の実効的な支配者となることができます。長年岩倉家に仕えてきており、恒朋から会社経営も任されたことから、周囲の目からは全く違和感がないはずです。
また、かつて「神の子」だった自分を冷たく追い出した祖父に対し、次の「神の子」と自分が婚姻関係を結ぶという、あてつけの思惑もあったかもしれません。アリアが結婚可能である16歳になる1949年9月に向け、「1949 ARIA」と刻印した結婚指輪を用意します。
狂った計画
1949年、アリアの妊娠が発覚します。周に心当たりはありませんでしたが、アリアの出産する意思は固いものでした。
周は美しいアリアの成り行きを見届けたいのであって、アリアと結婚し、その処女性を守るためにこそ、憎悪の対象である恒朋に長年仕えてきました。それが、アリアが「誰か」と出会ったことで崩れてしまいました。
母になるアリアを見たくなかった周の手によって、生まれた子は持ち去られ、教会に遺棄されます。そしてアリアには、子は死亡したと告げました。
このとき自ら子を手にかけなかったのは、当時の周には、自分から見て孫にあたるその子をどうしても殺せなかったからです。自分もろとも車に轢かれ、地面にたたきつけられて子どもが死んでしまえばいいと思いながら周は車道を走って教会を目指しますが、無事に教会にたどり着いてしまいます。
おわりに
周のアリアに対する執着はこの物語全体の大きな謎の一つですが、恒朋と周の出会いがきっかけとなり、実は周がアリアの本当の父親だった、という解釈が、今のところ1番納得感があると思っています。
周の感情や行動には謎が多く、それだけにクリア後も人物像に惹かれるキャラクターでした。
シナリオライターの午後ねむるさんはインタビュー記事で、登場人物の感情と、そこから導き出される行動によって自ずから生じる世界として物語を編んだということをおっしゃっていました。「岩倉アリア」を周、アリア、壱子の3世代にわたる物語と解釈して見直してみると、3人の随所の会話や物語全体がまた違って見えてきそうです。
いろいろな解釈を試しながら、キャラクターの振る舞いをより深く理解できる解釈を探るところに「岩倉アリア」のおもしろさがあると思います。
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