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兵庫県知事選の気持ち悪さ。選挙と憑依。思想なきカルトの巧妙さ。伝統的憑き物病理と大衆煽動。


見出し写真はナショナルジオグラフィックより。


人間とは不合理なる獣。

さて、2024年もまもなく終わります。
なんか変な年でした。

元旦から、能登半島大震災がおこりました。災害は日時指定ではやってきません。正月に地震が起こることは、起こってしまったのだから、しかたない。
しかし、この震災の薄気味悪さは、被災者支援、被災地復興、など幾度も経験してきた日本人が、なぜか急速に無能になったように感じられたことです。
この、日本社会の劣化の引きずるような不安のなか、情報媒体の急速な変化に巻き込まれてゆく負のスパイラルのなか、年が変わろうとしています。

社会の基盤には、合理的、倫理的、判断力があるはずだ。ところが、今年はそこに不合理で暴力的な影がさしこんできた。

情報媒体が進化しようとも、人間はそんなに進化はしない。それを見せつけたのが、兵庫県知事選のグダグダです。下品な流言蜚語に陰謀論がくわわり、嘘つきの詐欺師が喝采を浴び、理性的言説は退化し、あちらもこちらも無能を競いあい、選挙前の地獄にまた振り出しにもどる。
私なりに半世紀どんな選挙や住民投票にも棄権せず、体験してきました。
こんなひどい異常な選挙は、始めてみました。私は兵庫県民ではない隣の住民ですから、他人事ではあるのですが、この間許しがたい嘘つきを非難したら、こっちが嘘つきだと罵声コメントを浴びる。

もう、政治的選択の底がぬけて、言論は幼稚なアホバカ合戦になる。

なんだこれは、と観察していて、兵庫県だから忠臣蔵の我が殿の仇を討たねば、の物語の再現かとも思いました。
しかし、封建的物語ならそれなりの合理性はあるはず。
もっと野蛮で暴力的な何か。

ああ、そうか、憑依の日本むつかし噺ではないか。

天王寺動物園にて

来年はヘビ年、憑依はしないでね。

日本人の憑依現象は、山川草木蛇狐狸犬猫野菜瓢箪桃南瓜、多様なアニミズム信仰に根ざしています。

マックス・ウェーバーが看破したように、近代資本主義がプロテスタントの信仰から生まれたように、日本近現代の社会構造にも信仰的心性があるはずだ。
それが、今年は、憑き物信仰だと、はっきり見えた。
ネット社会?いいや、本質は憑依現象ではないか。

憑依動物として、蛇は歴史的に古い。

水の象徴としてのヘビ。異類婚姻譚のセックスシンボルとしてのヘビ。最古の神域のひとつ、三輪の神はヘビ。

ヘビ神との交わりの朝、やまとととびももそ姫は、夫の正体が小さなヘビ(なぜ小さい?)と知り、驚愕のあまり箸でホトを貫きなくなる。
そうして、姫のために、最古の前方後円墳、箸墓古墳が築造された。
単純な類推で、前方後円墳は膣と子宮のアナロジーではないか。

ならば、膣にまぐわうヘビは剱、子宮は鏡、子宝は勾玉、というアナロジーも成り立つか。

そんな素人考古学は、おいといて。

やがて、イナリ信仰のシンボルとして、狐が憑依する狐憑きという言葉が、この精神病理を現すようになります。
こうした、地域の歴史や文化、風土、自然を背景とする、精神病理は、文化人類学では文化依存症候群と呼ばれています。
日本では、狐憑きのような憑依現象は明治時代まで見られました。
その後、精神医学の発達により、統合失調症という診断がなされるようになり、憑依動物は役割を終えます。

しかし、狐憑きの社会心理の構造はなくなったわけはない。それを利用して人をだます詐欺師が、跋扈しはじめる。
国家ぐるみの催眠商法というべき、出鱈目な戦争がありました。あれも、狐憑きの変容だったかもしれません。
ドイツやイタリアのカリスマ独裁者がいるファシズムではなく、日本人がとらわれた漠然とした中心なきファシズム。理屈でいえば、中心には天皇制があるのかもしれません。しかし、天皇は拳を振り上げて演説はしません。曖昧模糊としたドーナツのあなのような存在です。このあなが憑依する近代官僚制度。

日本の近現代は、空虚な憑依により動かされてきた。
社会的紐帯を刷り込むテクニックを駆使する詐欺師。思えば狐よりたちが悪い。
牛丼屋が、たれのしゃぶしゃぶの牛丼の宣伝に、生娘しゃぶ漬け、なんて口ばしる。
言葉が下品で陳腐になる。
下品で陳腐な言葉には、瞬発力があります。
時代時代に情報媒体は変わってきましたが、どのような媒体を用いても、憑依のメカニズムは作動します。

私が感じる気持ち悪さは、SNSだからではなく、憑依のメカニズムだからです。極めて程度の低いプロパガンダで民意を動かせる。合理的なメカニズムはない。登場するのは、演説の下手な落ちこぼれ権力者と、口からでたらめの催眠商法詐欺師。そして幼稚きわまりない陰謀論に大衆が堕ちてゆく。

なんだこの猿芝居は。
そうか、これは不細工な神楽なのか。

思想なき疑似イデオロギーに憑依された社会には、治療薬はあるのか。
バカにつける薬はない。

ヘビは知恵の象徴であり、脱皮する姿から成長のシンボルとされます。
成長するヘビになりましょう。

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