水の精霊、水の街。お前は河童だと言われて育ち、歳老いて歌うセイレーン。小詩集
アングル「泉」wikiより
❤精霊の誕生の時
水の精霊には
魂がないという
無邪気に光り
闇のなかでささやき歌う
性別もないという
だのに人間に愛されたとき
相手にあわせ
女性とも男性ともなり
魂をもつという
しかし本来は水
恋人の心ない言葉に水にかえってしまい
愛の裏切りには呪いをかける
それが定めだから
どうしょうもない
呪われた人間は
眠れば死ぬ
眠ることができず
不毛な仕事に追われ続ける
水の精霊とともに
魂を失わないためには
ただ愛をつらぬくしかない
ああオンデーヌ
魂のない光りとささやきのまま
あなたを見ていればよかったのに
愛のちぎりを交わしたがために
あやうい命のさだめを知ってしまう
それを愚かと
笑うものこそ
魂がないだけの愚か者
彼らこそ濁った粘液のにこごり
たよりなげな命を抱きしめるため
水の精霊は愛を捧げる
水に魅いられたもののみが流す涙
あやうげに澄みわたる瞬間の性愛
限りある命に魂をふきこむため
いだきあう二人
宇宙を流れる水の奔流のごとく
朝のひかりのなかに
咲くこの花はほととぎす
泣いて血を吐くほととぎす
覗きからくりの名セリフ
若者たちの情熱の時代はとおく
汚れちまった悲しみの
打ち捨てられた時代の路傍
道ばたにこそあれ
祝福の恋の花
旧暦の十月新月を前に
お約束の十月さくらが
ちゃんと咲きはじめた
断酒会の帰りの宵闇に
ぼくのお約束は例会で
また再会することだけ
花も実もつけなくとも
ぼくはぼくの約束だけ
大切にいだき歩くだけ
🐾与謝蕪村に
生涯帰郷かなわなかった与謝蕪村にささぐ。
故郷にかえらぬひとに冬のはな
大阪市にささぐ。
故郷をすてればそのまま枯れ尾花
写真、都島区役所の十月桜。
大阪市をなくさないで
住民票からも大阪市は消える
人生の舞台であった大阪市はいらないの?
そんな感傷を愚かだと笑う人たちがいる
大阪市を守れ
こんな言葉が政治的発言とチェックされるの
なぜ政治が郷土のまとまりを分解するの
政治に感傷はいらないならば
すでにこの街は廃墟だと宣告しよう
水はすでに記憶を消し去り
重い闇となって歴史の終わりによどむ