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小詩集、インコとハムスター
![](https://assets.st-note.com/img/1673294807840-D99EhmCOTG.jpg)
とても狭い裏庭に
手作りの小屋を作り
父がセキセイインコを飼いだした
つがいのインコはやがて
卵を産み巣籠もりをはじめた
しかし父は
最初の卵は空だから
取り除いてやらないといけない
とおしえられ
卵をとりだして
石に叩きつけ割り出した
なるほど空だった
いっこづつ割っていった
最後のいっこから
胎児がでてきた
石の上に投げ出されたそれは
心臓を動かしていた
父はふんとため息をついて去る
私はそれが蟻にたかられ
見えなくなるまでじっとしていた
それからあとのインコの
記憶がない
屋外で冬を越せずに死んだ
のだったろうか
![](https://assets.st-note.com/img/1673294849527-Md5suBRZ1s.jpg)
断酒に何度も
失敗しながら
もがいていた
十年間を共に
短い生涯を
生きてくれた
ハムスター達
ハムスターの寿命は2年
生き急がず
死に急がず
眠ったままおだやかに
命を終えます
ただいちど糖尿病のハムスターが
苦しんで泣きながら果てました
アルチュウで糖尿病の私といて
ハムスターは幸せだったのか
わかりません
ゴールデンハムスターの故郷はシリア
はてしなく紛争が続いている
帰る自然のないハムスター
母なる幻の国へ
ユーラシア大陸を縦断する
とんでもないハムスターの戯曲を書き
ハムスターを飼うのをやめました
故郷喪失者としてのハムスター
その旅の物語のかなしみに
アルチュウという喪失を沈め
私は断酒の端緒をつかみます
ありがとう
ちいさないきものたち
![](https://assets.st-note.com/img/1673294877147-48bFFu96zI.jpg)
ゴールデンハムスターは故郷喪失者
自然界では絶滅し
飼育下でしか生きられない
私たちも同じだと思う
動物行動学のローレンツは
人間を自己家畜化動物とした
我らが内なる故郷が廃墟ならば
美しい廃墟であれ
![](https://assets.st-note.com/img/1673294908747-Svmf6lUi7o.jpg?width=1200)
指に出来たイボひとつで
不安にさいなまれる弱虫です実は
短い生涯をおおむね寝て
ハムスターは微笑を浮かべ死にます
なんでそんなに死はおだやかなの
人間に守られ天敵もないのに
なんでそんなに早く死んでゆくの
僕たちは長い老いにおびえ
死ぬのが悲しいけれど
ハムスターの2年も僕たちの数十年も
消え去ればおなじなんだね
やがて地球も消滅する
無数の悲惨を記憶にとどめるすべもなく
ならばすべての生き物に刹那の安らぎを
祈ります