スピンウイングのつがえ方とハネの向き
1960年代終わりまで使われていたのは、「鳥羽根」でした。それが「プラバネ」と呼ばれる、文房具の下敷きのような硬いプラスチックでできたハネに代わるのは1970年代に入ってからです。理由は当然、雨に強いことと、圧倒的に風に流されないことでした。しかし当時はまだクッションプランジャーも金属レストも出てきていません。
プラバネによって的中精度は向上するものの、スパインのあった矢を入手するのもなかなか困難で、木製ワンピースボウのダクロンストリング使用ではレストでのトラブルは普通でした。よほどシューティング技術が優れ、スパインがあっていなければ、ハネはレスト部分にヒットします。硬いハネがレストかウインドウに当たれば、そのまま矢は跳ね返され弾道は大きく逸れる結果になります。的面でも矢同士が接触するとハネが取れたり、ハネそのものが割れてしまいます。
しかしそれでもプラバネのアドバンテージは不可欠であり絶大でした。そんな中、1970年代中頃に「ソフトベイン」と呼ばれる外観はプラバネのような腰を持ちながら、柔らかいビニールのハネが登場します。ハネの耐久性と接着力向上が目的でした。それだけではありません。「ハードベイン」が「ソフトベイン」に変わることで、レストでのトラブルを的面に反映しにくくなったのです。
それと同じ頃、クッションプランジャーが登場し、矢飛びをチューニングし、多少スパインのあっていない矢も飛ばすことができるようになりました。しかしそれでも、レストやウインドウにハネがヒットすることがあります。そんな時でも、ソフトベインはショックを緩和して、大きく弾道をそらすことはなくなり、多くのアーチャーに恩恵を与えました。
そして、いろいろな形や大きさ、素材、模様の異なる多くのハネが登場し、現在に至っています。現在主流となった「フィルムベイン」もそのひとつです。
ところで、なぜ矢をストリングにつがえる時、コックフェザー(雄羽根)を弓とは逆側に向けてつがえるのでしょうか?
理由は、3枚バネの場合、このつがえ方が最もハネがレストやプランジャーチップにヒット(接触)しにくいからです。
しかし、リカーブボウの場合、上図のような状態で矢がレストを通過することはありません。リカーブボウは指によって片側からストリングが解除されるために、アーチャーズパラドックスという矢の蛇行運動が発生します。そのため矢のハネ部分は、レスト通過時にはレストから離れた空間を飛ぶことになります。この空間あるいは矢とレストとの距離を「アロークリアランス」と呼びます。
この時、適切なスパイン(矢の硬さ)が選択されていれば、矢はレストのツメを折りたたむことはあっても、他の部分にヒットすることなく通過していきます。
ところが近年、カーボンアローになることで、矢の蛇行幅が狭く、ストロークも短くなることで、アロークリアランスが狭くなりました。そのため矢はレストギリギリの所を通過し、射ち方が悪ければハネがヒットするということになります。
ではアロークリアランスは、どれくらい矢とレストが離れていればいいのでしょうか。射ち方やチューニング、スパインの選択にもよりますが、ヒットしない距離を考えると、「ハネの高さ」くらいは離れていれば安心です。
そこで、ハネの高さなら見えなくても簡単に確認する方法があります。対称形のノックなら、そのまま逆につがえて射ってみればいいのです。それでハネが傷むようなら、クリアランスが狭いのです。
ところが「スピンウイング」の場合は、少し事情が違います。スピンウイングがリリースと同時に飛び散ったり、ハネに傷が付いているアーチャーを見かけます。そんな時、ほとんどの場合、右上にくるヘンフェザーではないでしょうか。
スピンウイングはその形状から、空気を抱え込み、非常に大きな回転力を持ちます。そのため、普通の3枚バネならそのままレストを通過していくのが、スピンウイングではノックがストリングを離れた時から回転を発生させます。そのため、レストを通過する時には、ほんの少しの回転であっても、右上のハネがレスト側に回り込んで膨らみ、アロークリアランスが確保できないことがあります。
そのため、スピンウイングは、3枚バネのようなつがえ方が通用しない時があるのです。そんな時は最初から逆につがえてみてください。それでハネが傷まないなら、すべての矢をそのようにつがえて問題はありません。スピンウイングはそのようなハネなのです。
初心者やレストでのトラブルのないアーチャーは、初心者教室で習った昔からのつがえ方をするべきです。しかし、ハネに傷を見つけた時には、自分に合ったつがえ方を模索する必要があります。特に回転の大きいスピンウイングでは、注意が必要です。
また、つがえ方以外でアロークリアランスを確保するには、ストリングハイトの変更も有効です。