花弁が欠けても薔薇
あるところに美しい女がいた。
そうあれと生まれ、その願い通りに美しくに育った。
しかし、誰もそれを喜ばなかった。
女には左足がなかったからだ。
女の周囲の人間は女が美しすぎたが故に、左足が欠けていることが許されざる汚点に思えたのだ。
いっそ、醜くあったなら。
身勝手な言葉が女を蝕むべく襲いかかった。
しかし、女は。
女はそのようなことは歯牙にもかけなかった。
どうして、花が、人間の都合を考えるだろうか?
花は美しく咲き誇るのだ。
たとえそれを誰も望まなくても。
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