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いつかどこかの研究所 朝の問診
俺の担当、四九五番。いつも不安そうな顔をしている大人しい女児だ。実験が上手くいけば、虫とのキメラとして戦場に立つことになるだろう。
可哀想だと思ったとしても、ここはそういう場所だ。
「あ……B先生。おはようございます」
椅子に座って絵を描いていたらしい四九五番はこちらを見て小さな声で挨拶をする。
外見の変化はなし、今朝は猫の絵。
「おはよう。体調はどうだ」
「えっと、大丈夫、です」
体調は良好、と。
「朝食は摂れるか」
持ってきていたトレーを机に置く。パン、スープ、ミルクがいつもの朝食だ。今日も変わらない。
四九五番はそれをじっと見つめたまま動かない。
「食欲ないか?」
ないとしたら少々問題だな。精密検査をしないといけない。
しかし四九五番は首を横に振って、遠慮がちに口を開いた。
「あります……でも、今日は、何のお薬、ですか?」
俺は顎を撫でる。ふむ……面倒な疑問だな。これから食べるのを拒否されては困る。
朝食に含まれる薬への質問をされた。
「今日は何も入れてない。本当だ」
目線を合わせて、少し笑ってやる。まぁ、俺の笑顔なんてたかが知れているが。
「そう、ですか……。いただき、ます」
四九五番は不安そうな顔をしてはいるが、手を合わせてから食べ始めた。
「どうして薬が気になったんだ?」
四九五番は少し体を強ばらせる。
「先生のことは、信じてます、けど……最近のご飯、おいしくないから……」
確かに最近は食事に混ぜる薬を変更していたが……バレていたのか。
食事に混ぜる薬の見直しが必要。
「そうか……不安にして悪かったな。次からは違和感があったらすぐ教えてくれ」
その方が楽だから。四九五番は頷いた。
その後は四九五番が食べ終わるのを待っていくつか質疑応答を行い、部屋を後にした。
朝の定時報告にAが来る頃だろう。