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いつかどこかの研究所 午後の検査

 無機質な扉を開けると大きくて丸い目が僕を見上げる。僕の被検体、三一〇番ちゃんだ。
「あ、A先生!今日は何するんですか?」
 明るくて社交的、性格だけならまさに理想の被検体だ。
「今日はね〜検査だよ〜」
 そう告げると三一〇番ちゃんはがっくりと肩を落とす。
「検査ですかー」
「嫌だよね〜。でも必要なことなんだ。ごめんね」
 子どもは特に検査を嫌がる傾向がある。この反応は正常の範囲内だ。うん、今日も異常なし♪
「ううん、頑張ります!」
「その意気だよ」
 気丈に振る舞う三一〇番ちゃんを検査に連れ回す。
 血液検査。異常なし。
 レントゲン撮影。異常なし。
 知能検査。下の上。
 体力検査。平均並み。
 精神鑑定。意志薄弱。
 全ての検査を終えて、三一〇番ちゃんが駆け寄ってくる。
「先生!どうでしたか?」
 笑顔で見上げてくる彼女の頭に手を乗せてやる。
「うんうん、大丈夫だよ〜」
「良かったぁ」
 そう言って肩をなでおろす三一〇番を見下ろす。
 あーあ、やっぱりこの子、失敗かなー。
 狼との合成手術を受けた人は社交性が著しく低下するっていうデータがあるから社交性が高い子を選んだのに、社交性以外がめちゃくちゃなんだもんな。意志が弱いと手術後に暴走するし、今のままじゃ失敗作じゃん。
 成功させて先輩に褒めてもらわないといけないのにさ。
 今からでも他との合成手術にチェンジしようかな……。
「先生……?」
 三一〇番ちゃんが心配そうな声を上げる。
「うん?なーに?」
「大丈夫ですか……?」
 ちょっと無言になってたからかな。
「大丈夫だよ〜。ちょっと考え事してただけだから、心配しなくていいよ〜」
 さ、お部屋戻ろ〜、と三一〇番ちゃんの背中を押して歩き出す。
 まぁ、社交性は高いし他の被検体との仲もいいし、生かしておけば何かには使えるでしょ。

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