いつかどこかの研究所 夜の定時報告
ノックの音に続いてドアが開く音がする。
ぼんやりした意識の中で俺はそれを認識した。
「こーんばーんは!ってあれ、先輩寝てる?」
うるさいな。この声は……Aか。
俺は呻き声を上げながら体を起こす。机に突っ伏して寝ていたからか、体が所々痛む。
「あ、おはようございます」
手探りで眼鏡を探してかける。はっきりと輪郭を結んだ視界の中でAが笑っている。
「何かあったか」
「定時報告でーす!」
そんな時間かと思い壁にかかっている時計を見る。確かに定時報告の時間ぴったりを指している。結構な時間寝入っていたようだ。
「あぁ……ありがとう」
「……!」
何故か顔を輝かせたAから報告書を受け取る。わざわざ紙とデータで残すなんて面倒なことをしてるよな。必要な処理だから省けないんだが。
ぱらぱらとめくって軽く内容を確認する。
「特記事項」
「特になしです」
今日も何事もなく異常な日常が終了した。
「先輩!今日も一日お疲れ様です!」
軽く頷く。
「お前もな。よく休め」
「はーい!先輩もちゃんと寝ないとダメですよー。ソファとかじゃなくて、ベッドで」
軽口を叩くA部屋から蹴り出し、備え付けられている簡易ベッドに横たわる。
「いつになったらここから出れるんだ……?」
諦観の混じったその声は誰にも聞かれることなく無機質な壁に吸い込まれていった。
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